第四紀=人類紀 バックナンバー       

地震対策としての「液状化調査及び対策工事」と「井戸掘削」の重要性について     ~能登半島地震の教訓~                                                                                                                                                                         

 

       2024年3月  代表 福永慈二

 

今回の能登半島地震では、震源から100キロ離れた震度5弱の石川県内灘町でも液状化が発生し、住宅や電柱が傾くなど、甚大な被害が出ており、25日現在、内灘町では全壊を含め1444棟が液状化による倒壊の憂き目にあっています。内灘町は海岸線に沿って砂丘が南北に延びていて、大量の砂が堆積しています。地震振動(第1波振動=P波)で水で飽和している砂地盤内の砂粒同士の結びつきが弱まり、液化し、ドロドロになる現象が液化現象(液状化現象)で、その結果、建物などの重いものは沈み、内部が空洞のマンホールのような軽いものは浮き上がり、地盤が傾斜している場合は地盤全体が低い方に横滑りします。今回、震源から160キロ離れた新潟西区でも液状化が発生し、大きな被害を起こしています。富山県内でも各地で液状化の被害が生まれています。

今回も、建物の耐震補強対策、液状化調査とその対策について、地震発生前から専門家がしきりに警告を発していましたが、結局のところ、自治体任せに終わり、高齢化に伴う対策への消極姿勢、予算不足が理由でほとんど対策は実施されませんでした。

ただ、注目すべきは、このように能登半島地震における液状化被害の実態が明らかにされ、東京都が、2月定例会で、液状化対策強化の方針を決めたことです。都は、2024年新年度から、戸建て住宅の液状化対策として、新築建設業者や戸建て注文者に対して、地盤調査や対策費にかかる費用の助成を始める、としています。ただ、将来のリスクに備えるというこうした事業は、助成制度を作っただけではなかなか実現するものではなく、都・区一体となり、行政が積極的に推進してくことが絶対に必要であることを、特に指摘しておきたいと思います。 

 それから、もう一つ、今回の能登半島地震で明らかになったことがあります。それは給水対策(飲み水・トイレ対策)の重要性です。211日付毎日新聞に、横田崇氏(愛知工業大地域防災研究センター長・教授)の「能登教訓に対策確認を」と題した次のような提案が紹介されています。

 『ライフラインの復旧や物資等の供給や支援についても、より大きな被害が広範囲に及ぶと想定される南海トラフ地震では、今回の地震で要する期間よりもより長期間になると想像される。飲料水や生活用水については、給水支援による対策だけでなく、例えば井戸や湧き水の利用や貯水タンクの整備など、被災時にも自立できる地域を目指した対策への変換が必要と考える。南海トラフ地震や直下地震に備えるためにも、能登半島地震を教訓として、各地域において、地震対策の実施状況を確認し、未実施の事項については速やかに対処し、地域づくりも含めて検討することが望まれる』と。

 また、都水道局・業務改革推進担当課長・長谷川進氏も、「今回の(能登現地への)派遣を踏まえて感じたのは、長期間の断水に対して個人のできること(注・水の備蓄など)には限界があり、地域の水道事業体が供給システムをどれだけ早く復旧できるかが重要」と指摘しています。ここから次のことが明らかになります。「個人的対策には限界がある」ことは確かであり、「水道事業体の供給システムの復旧」までの間に、やはりどうしても「地域共同の対策」が必要だ、ということです。災害用井戸を、個人のものとしてではなく、地域共同のものとして準備することがぜひとも必要です。

 

 今回の能登半島地震の深刻な教訓をよく学び、将来に向けて真剣に準備し、備えていくことが大事です。私たちも、改めて自らに課せられた社会的使命を再確認し、現在進行中の「液状化調査器機及びドレーン利用の液状化対策」「簡易井戸掘削機」の開発を早期に完了させ、来るべき災害危機に備えていきたいと思います。 


能登半島地震について                                                                                                                                                                 あらためて液状化P波原因説(殿上理論)の社会的          公的承認を訴える               

 2024年2月号  代表 福永慈二                           


 202411日午後410分、最大震度7、マグニチュード7.3の大地震が能登半島一帯を襲い、多くの家族・住民を恐怖のどん底に突き落としました。131日現在、石川県内の死者は238人、行方不明者は17人、避難者14千人以上に達しています。亡くなられた方には心から哀悼の意を捧げるとともに、被災された皆さんが一日も早く心身の健康と安心できる生活を取り戻されるよう、心から祈るものです。

今回の地震は半島直下の巨大な地殻変動によるもので、ずれた断層は150キロに及び、エネルギー規模は神戸地震よりも大きいという。輪島市では土地が南西方面に2メートル移動し、半島北部地域では4メートルもの海底隆起が起こり、沿岸部陸地は約4.4平方メートルも干上がった。震源付近の海辺では3~4メートルの津波が襲い、多くの家屋が流されました。観光名所「輪島朝市」は崩壊と火災で跡形も無くなり、多くの木造家屋が損壊、多数の圧死者が生まれました。

115日付読売新聞は次のように伝えています。『死者が200人を超した今回の地震では圧死が多数に上るとみられている。住み慣れた我が家が命を奪う過酷な現実が浮かぶ。石川県によると、県内の家屋被害(全壊・半壊・一 部破損)は、計12432(14日時点)。しかも、 被害が甚大な珠洲市や輪島市の被害棟数は把握できていない。… 地域の耐震化は遅れていた。1981年に導入された新耐震基準を満たした住居の割合(耐震化率)は、珠洲市51%(2018年度)、輪島市46%(22年度で、全国平均の約9割より大幅に低い。地域の高齢化率は50%前後。輪島市の担当者は「高齢世帯が多く、『後に住む人がいない』と消極的な家が多い」と話す。さらに、能登半島一帯で 続く群発地震によるダメージの蓄積が被害を広げた。市によると、昨年の地震後の応急危険度判定で「危険」「要注意」とされた住宅は計約1000棟に上ったが、「昨年の地震から間がなく、応急修理しかできていない住宅も少なくなかった」(担当者)という』と。

このような多数の家屋の損壊・圧死者が生まれた背景には、家屋の耐震化対策の遅れとともに、液状化対策の遅れや放置がありました。  特に能登半島を中心に、石川、富山、新潟の海辺近くには砂地盤が広く存在しており、液状化がおこる条件がそろっていました。

1964年の新潟地震の際にも広範な地域で液状化が起こり、家屋の崩壊を引き起こしています。だが、問題は、新潟地震から60年経った今もなお、この北陸地方のみならず、全国的に液状化についての調査・対策が全く進んでいないのが現状です。なお、報道を見ていても、残念ながら、液状化に関してP波原因説(殿上理論)を唱える専門家は皆無で、皆、液状化はS波によって引き起こされるとの立場に立っていました。以前からお話しているように、液状化に関する調査・対策の実験をS波理論で行おうとすると、実に巨大な実験装置が必要になり、容易には実験をすることができません。現実は、実際、そういうことになっています。しかし、P波原因説の立場に立てば、液状化の調査・対策の研究は比較的容易に行えます。そして、各地域の現地液状化調査が容易に行えれば、ドレーン材を使った対策などを容易に実施することができるのです。その意味からも、一日も早く液状化P波原因説が社会的公的に認められ、地震対策に応用され、解決にひと役買う日が来ることを、心から祈るものです。

 さて、能登半島では、かねてより群発地震が続いており、専門家は大きな地震発生の可能性を指摘していました。能登半島では、202012月から地震活動が活発になり、23年12月末までの震度1以上の地震は506回に達していました。これを「群発地震」といいます。2355日にマグニチュード65、最大震度6強の地震が発生しています。最近では減少傾向にあったとはいえ、先月だけで震度1以上の地震が8回起きていて、ほかの地域と比べると活発な状態は続いていました。

当然、地震専門家は警鐘を鳴らし、耐震強化などの対策を訴えていました。だが、耐震化や対策は思うように進みませんでした。何故か?その背後に、地震調査委員会による意識的な「情報操作」があり、石川県は、その「情報」を信じ、「安全」と思い込み、「油断」したのです。この問題について、110日付東京新聞は、国と地震調査委員会の許しがたい情報操作を厳しく批判しています。

『国の地震調査委員会の「全国地震動予測地図」では、2020年から30年間に震度6以上の揺れがおきる確率は県(石川県)の大部分で「0.1%~3%未満」とされていた。専門家は「低確率地域では逆に安全との誤解が生まれて油断を生じさせている」と指摘する。30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布から、石川県の地震リスクは小さいと言えます」― 県が企業誘致をPRするホームページ(HP) で は、予測地図の石川県部分を示し、安全性を強調する文言が並ぶ。県によると、 10年間で25社を誘致。…16年に熊本地震が起きた熊本県、18年に北海道地震 があった北海道なども同様に予測地図を企業PRに使い、地震後にHPから削除 した。石川県の担当者は取材に「太平洋側に比べると確率は低く、リスクは低い と思って示していた。国の出している情報なので信頼感もあったが、HPからの 削除も検討する」と話す。

地震調査委の事務局を務める文部科学省の担当者は、「予測地図は確率の高低は示しているが、低い地域に『安全宣言』を出しているわけではない」とし、「全国どこでも地震が起きる可能性があることも同時に伝えている」と説明した。

名古屋大の鷺谷威教授 (地殻変動学)は、予測地図について「確率で色分けしているのだから、全国どこでも地震が起きる可能性があると注釈を入れても、低確率地域の受け手が安全宣言と捉えるのはむしろ当然」 と指摘。「高い確度の予測は不可能なのに、南海トラフ沿いや首都圏など確率が高い地域にばかり注目が集まり、防災意識を偏らせる結果となっている」と話した』と。

国・地震調査委員会は、以前から「2020年から30年間に南海トラフ地震が発生する確率は80%」というとんでもない「高確率」を公表し、「首都圏と南海トラフ地震対策」を最優先させ、巨額の予算を投入し、他方、「低確率」の地方の地震対策についてはこれをまったく無視・軽視してきました。「低い地域に『安全宣言』を出しているわけではない」などという発言は無責任な言い訳でしかありません。地震対策が大手建設会社・東京を優遇し、中小建設会社・地方を差別するものであって良いはずがありません。

なお、110日付東京新聞は『解説』(執筆は小沢慧一記者科学ジャーナリスト賞受賞の『南海トラフ地震の真実』の著者)で、「南海トラフ地震が発生する確率は80%」が予算獲得のために持ち出された「根拠なき数字」であることを指摘し、次のように解説しています。 

『南海トラフ地震の発生確率が「えこひいき」されるあまり、他地域に油断が生じている。本紙が繰り返し指摘してきた問題が、能登半島地震でも浮かんだ。 …全国地震動予測地図は地震の発生確率を一律に評価し、行政がどこの災害対策を優先すべきかを判断する材料だ。ところが、確率が低い場所でばかり地震が相次ぎ、役割自体が揺らいでいる。 地震の発生確率が「一律」に評価されていない欠陥もはらむ。南海トラフ地震の確率「30年以内に70~80%」だけ、特別な計算式が使われた。他の地震と同様の計算式だと「20%程度」にまで下がる。特別な計算式の採用に「科学的に問題がある」と反対した地震学者たちの声は、委員会で「確率を下げると予算獲得に影響する」などの意見によってかき消された。

現在の地震学では正確な予測は不可能で、確率には政治的な要因も絡む。その実情が隠されたまま、南海トラフ沿いや首都圏の高い確率ばかりが注目され、低確率の地域に油断が生じ被害拡大に繋がったならば、それは「人災」である』と。

この東京新聞の主張は、私たちが耳を傾けるに値する正論です。  地震は、大自然・大宇宙のエネルギーの運動が引き起こす自然現象です。宇宙も太陽系も地球も運動しており、地球を取り巻く幾つかのプレート(地殻)もまた運動し、動き回っており、その過程で地震が引き起こされます。地震は大自然が生み出す必然の産物です。また、その発生は偶然で、多くの地震学者が全力を挙げて「地震発生予測」を成し遂げるべく探究努力していますが、残念ながら、未解決のままです。しかし、地震研究の科学者たちは必ずいつかこの問題を解決することでしょう。

いずれにせよ、地震災害は「天災」であって、決してあれこれの人間の責任ではありません。だが、対応の仕方によっては、この「天災」は「人災」に転化してしまいます。予期せぬ非常事態が社会や国のありかたを厳しく問うのです。

結局のところ、大災害・天災に対しては、人間はコミュニティ精神を発揮し、共同協力し、力を合わせて対処し、力を合わせて解決し、社会的に結束して立ち向かっていくほかありません。

私たちは、液状化P波原因説の社会的公的承認を得るという目的に向かって引き続き努力し、コミュニティ精神を発揮し、社会的使命感を燃やし、この道を前進していく覚悟です。



2024年を迎えて!                                   ~「液状化P波原因説」(殿上理論)について 

       2024年1月号 代表 福永慈二

新しい年を迎え、皆さんに新年のご挨拶を申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。

今年は、「液状化P波原因説」(殿上義久氏の新理論)が国際的評価を得る記念すべき年になるであろうことを確信し、またそうあって欲しいと心から期待するものです。

私たちは、殿上氏は〝現代の開拓者〟であると考えています。現代の「S波地震・液状化理論の世界」に新しい画期的な理論をもたらすものであり、地震対策のみならず、その他さまざまな分野に新しい画期的な方法論をもたらすであろうと確信するからです。(注;P波とは地震時に発生するだい1波で縦波のこと、S波は地震時に発生するだい2波で横波のこと)

歴史の新しい地平を切り開く事業はまさに「開拓」そのものです。「北海道十勝野開拓の祖・依田勉三物語」にも明らかなとおり、「開拓者」は何度も何度も失敗を重ね、困難に繰り返し直面します。それでも決して諦めることなく、そうした困難を乗り越え、新世界を切り開いていくのです。

2024年の新春にあたり、あらためて、殿上氏への激励、支援・協力を訴えます。どうか宜しくお願い致します。


「液状化P波原因説」(殿上理論)と「断層滑り実験」と地震予測!                

2023年11月9日付東京新聞が《断層「滑り」実験で地震予測》と題し、次のような記事を掲載しています。

 

【地震大国の日本は、過去に幾度となく大きな地震に襲われてきました。被害を軽減するため、地震を起こす断層の「滑り」を実験で再現し、将来の地震の予測に役立てる研究が進んでいます。 

Q 断層の滑り? 

A 地震とは、地中の岩盤が断層面という境目で滑って揺れ動く現象です。「断層運動」とも呼ばれます。 

Q どう再現するの? 

A 地震を起こす断層は地中深くにあるため直接見られません。 そこで岩石同士を擦り合わせて 滑りを模擬的に再現し、摩擦の性質を調べます。茨城県つくば市の防災科学技術研究所は、長さが7・5㍍と6㍍、幅がいずれも0.5㍍の二つの岩石を擦り合わせられる装置を開発しました。装置自体は高さ5・9㍍ 幅13.4m㍍で、世界最大規模です。 

Q 大型化の利点は? 

A 従来は長さが2㍍と1・5 ㍍の岩石を使っていましたが、接触面が小さいため断層全体が一気に滑る地震しか再現できませんでした。一方、実際の断層の滑りは 最初は小さく、次第に大きくなるなど、もっと複雑なものだと考えられています。新装置では岩石同士の接触面が3倍以上に増え、より実際に近い滑りを再現できるそうです。 

Q 性能は? 

A 積み重ねた岩石の上と横か 油圧ジャッキで最大1200㌧ の力を加えます。滑りの速さは毎秒0.01~1㍉と自由に設定でき、最大1㍍滑らせることが可能です。 

Q 何を期待できる 

A 東海から九州沖の海底に延びる舟底状の形で発生する南海トラフ巨大地震では、長い想定震源域の東西どちらか半分の断層が滑る「半割れ」が発生し、時間差でもう一方の側でも地震が起きることが懸念されていますが、詳しい仕組みは分かっていません。 新装置では連鎖する地震も再現でき るため、同研究所の山下太主任研究員は「半割れを含め、断層の複雑な壊れ方を調べていきたい」と話しています。】


この記事は現在行われている〈断層「滑り」実験で地震予測〉の現状を正確に伝えています。より正確な地震予測を可能にするためには、上記のような「断層滑り実験」が必要になるわけですが、その実験をする場合、上記の記事からも明らかなように、巨大な実験装置が必要となります。実験規模も予算も膨大なものとなります。南海トラフのようなプレートのもぐりこみによって引き起こされる断層の滑り現象に関する実験では、まだ、上記のような巨大実験装置が必要にならざるを得ないのです。

ただし、地震によって引き起こされる液状化による断層の滑り現象に関する実験は「P波理論」によれば、新たな実験方法が可能になります。

2018年9月6日に発生した北海道胆振地方の「厚真地震」においては広汎な山崩れが起こりましたが、その原因は、その後の北大の調査によって、地層内の液状化によって表土の火山灰が一気に流れ下った結果であることが確認されています。このことからも、断層の「滑り現象」は地層内部の液状化と不可分の関係にあることが分かっています。

現在、こうした地層内部の液状化による滑り現象に関する実験もまた、「S波理論」(液状化はS波=第2波の横揺れによって引き起こされるという理論)に基づいて行われており、その結果、南海トラフに関する実験のように、S波を起こすための巨大実験装置を必要としているのが実情です。しかし、殿上氏の「P波理論」によれば―まだ様々な検討・工夫が必要でしょうが―それほど大規模実験装置によらずとも「液状化断層滑り実験」が容易にできるようになります。P波は、それほど巨大な実験装置によらずとも発生させることが可能だからです。

「新しい理論」は新しい、画期的な「実験」を可能にし、地震予測を含め、幾つかの事業を飛躍的に発展させ、前進させるものです。新理論「P波理論」の応用が大いに期待され、待たれます。


2023年度ノーベル生理学・医学賞受賞者カタリン・カリコさんが歩んだ研究人生から学びつつ、画期的な「液状化P波原因説」の発見・提唱者である殿上義久氏をしっかりと支え、応援しよう!

      2023年10月号 代表 福永慈二

今年のノーベル生理学・医学賞受賞者は、コロナワクチンパンデミックで世界に知れ渡った、生物遺伝子の一部である「m(メッセンジャー)RNA」を利用したワクチン製造技術の発見者であるカタリン・カリコさん(米ペンシルベニア大特任教授・68歳)に決まりました。

2023年10月3日付毎日新聞は『不遇の日々 世紀の発見生む』との見出しで、次のように伝えています。


 カリコさんは1955年にハンガリーで生まれ、「科学者など見たこともない」という田舎町で育った。ハンガリーの名門大学で生化学の博士号を取得し、研究者として歩み始めた直後に最初の転機が訪れた。 

 経済の行き詰まりなどから海外の学会に出席することが認められず、研究資金も途絶えた。既に結婚して長女がいたカリコさんは、30歳で米国に研究拠点を移す決断をする。 

 車を売って闇市で両替した900英ポンドを長女のぬいぐるみに隠し、片道チケットで「鉄のカーテン」を越えた。当時は一定額を超える外貨の持ち出しが禁止されていた。米国の大学で研究職に就くと、研究者として生き残るために「地獄のように働いた」と振り返る。 

しかし、 mRNAを治療に役立てようとするカリコさんの発想は評価されず、降格も経験した。外部からの研究資金を得られず、研究費を同僚に依存する日々が続いた。 

「いつか成功すると信じて、共に前に進む同僚たちの存在」が不遇の時代を支えたという。その一人が、共同受賞が決まった米ペンシルベニア大教授のドリュー・ワイスマンさん(64)だった。

同大の研究棟のコピー機の前で知り合い意気投合した人は、共同研究を続けて20年以上になる。今回の受賞につながった2005年の共著論文は、 mRNA を体内に投与する際に起きる免疫反応を抑制するメカニズムを明らかにした。

カリコさんが「早すぎた」と言って笑うように、発表当時はほとんど注目されることはなかった。 

ところが、その成果はバイオベンチャーが主導するmRNA医薬の開発競争の号砲を鳴らす。13年にカリコさんを迎え入れたドイツのバイオ企業「ビオンテック」は、その先頭集団に立つ。 

同社が米製薬大手「ファイザー」と共同開発した新型コロナウイルスワクチンの治験で高い有効性が確認されると、カリコさんは米国の自宅で、好物のピーナツチョコを箱ごと抱えて1人ひそかにお祝いした。 

渡米時には、ワクチン開発が念頭にあったわけではないという。免疫学者のワイスマンさんとの出会いがなければ、世の発見は生まれていなかったかもしれない。カリコさんは「科学は積み重ねの上に成り立っています。私たちの研究はいつ、どこで役に立つかわかりません」と話す。…

幼少期にカリコさんと共に米国へ渡った長女のスーザン・フランシアさんは、ボート競技の米国代表としてオリンピック2連覇を果たした。スーザンさんは、「金メダリストの母親」から「世界を救う科学者」として有名になったカリコさんに ついて、米メディアで語っている。 

「ボート競技は、チームのほとんどが 後ろを向いているので、いつゴールが来るか見えません。母も同じでした。一つ 一つの積み重ねが、達成したいことに近づいていると信じることが大事でした。 今、振り返ると本当にその通りになったのです。やったね、お母さん」 【八田浩輔】 


以上のような、カタリン・カリコさんの受賞までの歩みを見る時、私たち砂地盤液化判定システム研究会と互いに支持・協力関係にある「液状化P波原因説」の発見・提唱者である殿上義久氏の存在を想起せざるを得ません。

カタリンさんの歩みの特徴は次の点にあります。

第1、研究環境に恵まれず、経済的困難に襲われ、しばしば研究中断の瀬戸際まで追い詰められたが、決してあきらめることなく、不屈の闘志を燃やしてあくまでも頑張り抜いたこと。

第2、孤独な戦いではあったが、ワイスマンさんはじめ良き協力者、同僚、家族、支援者に助けられ、共同研究が実現され、続けられたこと。

第3、「画期的な発見」も、最初は評価されず、なかなか日の目を見ることがなかったが、「コロナパンデミック」という偶然の出来事が勃発し、それによって「mRNA」の優れた特性が見直され、医療技術と結びつき、優れた医薬品として世に送り出されたこと、です

殿上さんの歩んでいる道も全く同じであり、特にその経済的困難との戦いは筆舌に尽くし難いものがあります。自らの労働によって資金を稼ぎ、自力で研究を継続させてきた努力、奮闘は並大抵のものではありません。「液状化P波原因説」は日本国内ではまったく評価されず、陰に追いやられてきましたが、現在、外国研究機関の評価が進み、近い将来、正式にその評価が公表・公開されるでしょう。彼の出身大学・東海大の何人かの学友たちが、彼を支えるべく、協力会づくりを開始してもいます。

歴史は偉大なもので、価値ある研究・発見を決して眠らせたままにはしておきません。必然的に発生する人間界の様々な事件・出来事(偶然事)との出会いを通じて、必ずその偉大なる力を世に知らしめるものです。

あらためて、心ある多くの研究者、マスコミ人に対し、ノーベル生理学・医学賞受賞者カタリン・カリコさんが歩んだ研究人生からも学びつつ、画期的な「液状化P波原因説」の発見・提唱者である殿上義久氏を強力に支え、応援し、世に送り出してくださるよう、こころから訴えるものです。


地震による地盤液状化の危険についてより深い認識を!

 ~関東大震災から100年目を迎えて~

    (前号より続く)


            2023年10月号 代表 福永慈二 


2023年8月20日付毎日新聞は、今年9月1日が「関東大震災・100年」にあたるため、『関東大震災100年の警告②--橋脚 液状化で水田に出現 』との見出しで、重要な歴史的事実を伝えています(報道記者は岡正勝氏)。更に、毎日新聞2023年8月28日付でも、連続して、『関東大震災100年の警告③--家も橋も壊す「液状化」』と題し、震災に伴って必ず発生する「液状化被害」の状況について、詳しく報じており、ここに全文を紹介し、警鐘を打ち鳴らすものです(報道記者は山口智氏)。

以下がその全文です。


家も橋も壊す「液状化」』

潮がが引くと、2本の鉄道橋の間の川面から、円形の土台がうっすらと現れた。神奈川県平塚市の相模川にかかる「旧馬入川橋梁」の橋脚の跡だ。100年前、ここに架かっていた鉄道と道路の二つの橋は関東大震災で崩落した。首都圏への交通や住民の生活に欠かせないものだったが、応急復旧に1~2カ月かかり、その間は渡し船で川を渡っていたと、平塚市博物館の記録にある。 

橋の崩落は、必ずしも地震の強い揺れだけが原因ではない。地元の複数の文書に、水や砂が地面から噴出したという証言が、いくつも残っていた。 

「余震の度に庭に地下水がしみ出た。メスの豚が行ったり来たり 走ったが、その足跡にすぐ水がたまった」(市博物館の報告書) 「(土地が)2㍍ぐらい下がって、水がジャブジャブ上がってきた」(西さがみ庶民史録5号)--。いずれも、液状化が起きたことを示すものだ。 

平塚市を含む一帯の平野部は、川で運ばれてきた細かい泥などが 厚く堆積した地盤があちこちにある。水分を多く含み軟弱なため、液状化を引き起こしたのだ。 

関東大震災当時は液状化という言葉すらなく、地震や火災などに比べ、被害があまり着目されてこなかった。しかしその後の調査で、被害は関東平野や甲府盆地(山梨県)の6都県で、計800カ所以上あることがわかった。それから100年。現代社会は、液状化の新たな脅威に直面している。

「家の戸が自動ドアになった」。千葉県浦安市の新浦安駅近くに住む辻純一郎さん(80)はこう話す。

2011年の東日本大震災。液状化で自宅全体が傾き、室内のドアが勝手に開いてしまうようになった。辻さんは玄関前にいた。ちょうど両足の間のアスファルトが割れ、近くの家の庭から、緑色のような水が噴き出していた。町内会長だった辻さんは、被害状況を確認するため、すぐに自転車で地域の見回りに出かけた。しかし噴き出した泥で道路が埋まり、自転車では進めなくなった。ズボンはいつの間にか泥だらけになった。「これが液状化か」。初めてそう実感したという。 

浦安市の液状化は、市内の4分の3を占める埋め立て地のほぼ全域で起きた。辻さんの自宅も埋め立て地で、1980年代に分譲された。都心に近いなどの利便性を考え、「液状化で死ぬことはない」と抵抗感なく購入したという。

自宅の建物自体は比較的被害が小さかったが、最も困ったのが、地域全体で上下水道が止まり、水道も風呂もトイレも使えなかったことだ。市全域で復旧したのは約 1カ月後だった。「ひとたび液状化が起きると、辺り一帯のインフラが使えなくなると実感した」。辻さんはそう振り返る。 

被災後、浦安市は最新の工法を使った液状化対策に乗り出した。工事には地区の全住民の合意が必要だが、1戸あたり100万~200万円に上る自己負担に難色を示す住民も多く、計画は難航。合意が得られたのはごく一部の地域にとどまり、着工は震災から6年後にずれこんだ。 

浦安市内では今も、多くの地域で液状化のリスクは残ったままだ。市の担当者は「民間の保険加入など、まずは自助努力を考えてほしい」と話す。 

東日本大震災の液状化による宅地被害は約2万7000件に上った。必ずしも臨海部の埋め立て地だけではなく、内陸部の住宅地で も起きた。背景には、戦後の核家族化や人口増加がある。臨海部で は、住宅地や工業用地のために埋め立てが進み、内陸部では田んぼなど地盤の緩い土地に盛り土して宅地が次々と整備された。

東京電機大の安田進名誉教授 (地盤工学)は「首都圏の発展のために行われた土地改変により、あちこちに液状化しやすい土地が造られた。特に、ハザードマップで考慮されていない人工的に造成した地盤液状化が目に付いた」 と語る。 

 安田さんが注目するのは、砂利を採掘した跡地だ。大規模な開発や造成の建設資材として砂利を採掘すると、採掘後の残砂を使って埋め戻す。締め固めが不十分な場合が多く、液状化しやすい地盤になる。開発は数年~数十年間に及ぶものもあるが、あくまで一時的なため、埋め戻すと周囲と見分けがつきにくく、地図上にも記録が残らないケースが多い。自治体が気づかず「液状化の危険性が少ない」と判断し、ハザードマップ反映されなくなる。 

安田さんは「関東大震災や太平洋戦争の後の復興で、各地で砂利が採掘された。目に見えないリスクのある土地が、各地に点在しているとみられる」と警鐘を鳴らす。

 関東大震災からの100年間で、建物自体の耐震・耐火性能は高まったものの、インフラへの依存もはるかに強まっている。次の首都直下地震では、地震の揺れと液状化が重なって多くのインフラが使えなくなり、首都機能や生活基盤に甚大な影響をもたらすこと が想定される。 

国の中央防災会議が1年にまと めた想定によると、道路、空港、港湾などの交通インフラや、電気やガス、水道といったライフラインなど、被害は多岐にわたる。断水は約5割の利用者、下水道は約1割の施設で被害が発生。復旧に は1カ月以上かかることも見込まれる。道路が寸断されると、火災の消火や救命救助活動に時間がかかったり、救援物資の輸送が滞ったりする。臨海部に集中するコンビナートは石油や危険物を備蓄ているため、被災すると火災や流 出、拡散など、新たな災害を招く可能性もある。 

関東学院大工学総合研究所の若松加寿江研究員(地盤工学)は、液状化被害を「青天のへきれきの災害」と表現する。土砂崩れや河川の氾濫などとは違い、災害をもたらす原因が、日常の風景からは予測できないからだ。「自分の住んでいる場所のリスクを知ることがまず大事。交通アクセスや日常生活の便利さだけでなく、その土地の特性にも関心をもってもらい たい」と強調する。                  【山口智】 

 

ここから学ぶべきは次の点です。

第1、100年前の関東大震災の頃は「液状化」という言葉すらなく、あちこちで液状化被害が発生していたが、あまり着目されることはなかった。しかし、2011年の東日本大震災は「液状化」が深刻な被害をもたらすことを教えた。しかし、原因箇所が直接目に触れないため、十分予測できないこともあり、対策は決定的に遅れている。

第2、「液状化」の被害は、勿論個人の住宅にも及ぶが(浦安が最も深刻であった)、最大の問題は、道路、空港、港湾などの交通インフラや、電気やガス、上下水道といったライフラインなど、被害は多岐にわたり、長期に渡って困難を強いられることである。石油コンビナートは火災・爆発の危険もある。建物の耐震度をいくら高めても、道路網が遮断されてしまえば逃げ場を失い、深刻な被害が発生することになる。インフラの崩壊を阻止し、ライフラインを守る責任は国・自治体にあるが、未だに対策はまったく進んでいない。

第3、「液浄化」は地盤の柔らかいところで起こるが、都心部の埋めて地、人工造成地、砂利採掘後の埋め戻し跡地もまた液状化リスクの高い地域である。だが、その多くはハザードマップに反映されていない。自分の住んでいる土地がどんな所か、まずこれを知って置くことが大切である。

以上です。

こうした問題の解決のためには、関係者の協力と連帯、共同研究、共同対策がぜひとも必要となります。これらを進めるために共に力を合わせ、なしうる所からなしうる共同行動を押し進めていきたいと思います。


地震による地盤液状化の危険ついてより深い認識を!

 ~関東大震災から100年目を迎えて~


      2023年9月号 代表 福永慈二


今から100年前の大正12年(1923年)9月1日の午前11時58分、相模湾北西部を震源とするM7.9と推定される関東大地震が発生しました。この地震により、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県でも震度6を観測したほか、全国的に広い範囲で震度5から震度1を観測し、10万棟を超える家屋を倒壊させました。また、発生が昼食時間と重なったことから火災が発生し、大規模な延焼火災に拡大しました。この地震によって全半潰・消失・流出・埋没の被害を受けた住家は総計37万棟にのぼり、死者・行方不明者は約10万5000人に及ぶなど、甚大な被害をもたらしました。

ここで、特に注意を喚起しておきたいことは、家屋の半壊・全倒壊に決定的な影響を与えた地盤液状化が、広範な地域で発生した事実です。この液状化については、殿上義久氏(東海大学海洋学部出身・現音響地質研究所所長)が新たな画期的理論「P派原因説」を発表し、国際的な注目を集めつつありますが、氏によれば「最初の決定的な液状化は、S派によってではなく、地震波の最初のパルス・P派によってひき起こされる」とのことです(氏の論文はこのHP記事の下の段に全文を紹介)。いずれ殿上氏の「P派原因説」に基づく液状化理論が広く検討され、地震対策に大きな影響を与えることなるでしょう。

関東大震災から100年目を迎えた今この機会に、液状化がどんなものであったのかを、詳しく見ていきたいと思います。

今年の「関東大震災・100年」にあたっては、8月20日付毎日新聞が、「橋脚 液状化で水田に出現 」との見出しで、次のような重要な歴史的事実を伝えています(報道記者は岡正勝氏)。

以下がその全文です。


『神奈川県茅ケ崎市に、鎌倉時代の橋りょう遺構「旧相模川橋脚」がある。橋は1198 (建久9)年、源頼朝の家臣稲毛重成が亡き妻の供養のために架けたとされ、時を経て一 度は姿を消した。だが、その橋脚は1923年の関東大震災と翌年の余震による液状化現象 で、水田から地表に再び姿を現した。地震による液状化の様子を伝える貴重な遺構だ。  小出川のほとりにある、かつての水田を人工的に造り替えた池の中には、折れた木の幹のようにも見える直径48~69㌢の橋脚が並ぶ。実はこの橋脚は、ヒノキ材の実物を再現したレプリカ。 2001年から6年にかけて、傷みが激しかった実物は保護材で覆われ、池の下の地中に埋められ保存された。それに伴い、精巧なレプリカが作られたという訳だ。

「水田より出ている橋杭は7本で、ほかに土が持ち上がった箇所が2カ所あり、竿でつついて確認した」。歴史学者の沼田頼輔は、大震災の余震から5日後の1924年1月20 日に現地を調査した際のことを、後にこう記した。 

地震の揺れで砂の地盤が液体状になる液状化現象では、重い構造物が沈み込む一方で比較的軽い構造物は浮き上がることがある。水田の地中に埋もれていた橋脚が地表に押し上げられたのはこのためだ。 

橋脚には地中から地表に押し上げられた際の砂などが付着していたほか、水田の周辺の地盤では水や砂が地中から地表に噴出する「噴砂」なども確認された。 

関東大震災で茅ヶ崎市は大きな被害を受けた。学校や駅を含めた大部分の建物が全半 壊。橋脚の近くにあった「馬入川鉄橋」も完全に崩壊した。郷土史家鶴田栄太郎は著書「茅ヶ崎の面影」で、地元の人たちが震災直後に「夢かと思ったり、天変地異でこの先どうなるのかと恐れたりした」と振り返っている。 

「震災の爪痕覚めやらぬ時期からの調査や民間を含めた保存の動きなどがなければ、橋 脚は朽ち果てていたかもしれない」。茅ケ崎市教育委員会社会教育課文化財保護担当の三戸智也さんはしみじみと語る。 

橋脚がある人工の池の近くに工場用地を所有する武藤工業 (現MUTOHホールディングス、世田谷区) は1965年、橋脚を保護するため、自ら費用を負担して、池の改修などを中心になって行った。また地元の青年団が同じころ、当時傷みが出ていた橋脚にボランティアで防腐剤を塗ったと言われる。 

橋脚は大震災から3 年後の26年に中世の遺構として国の「史跡」に指定され、2013 年には液状化現象としては全国で初めて国指定の「天然記念物」にもなった。液状化現象は、阪神大震災や東日本大震災でも発生し、家屋や道路などで多くの被害が出た。三戸さんは「橋脚は多くの人たちの努力で守られてきた。私たちも橋脚を守ることで、地震の恐ろしさや教訓を後世に伝えていきたい」と話す』と。


私たちは、神奈川県茅ケ崎市に鎌倉時代の橋りょう遺構「旧相模川橋脚」が保存されていることを、この記事で初めて知りました。現地の多くの識者の手によって、この遺構が大切に守り抜かれれてきたことに、改めて深甚なる敬意と感謝をささげると共に、今後一層、液状化問題の研究、解明を深めるべく、殿上氏の「P派原因説」の普及、宣伝に力を入れ、液状化対策の飛躍的向上を目指し、地震被害の軽減化に努めていきたいと思います。


2020年2月に発生した「逗子・崩落死亡事故」で、神奈川県警がマンション管理会社の社員を業務上過失の疑いで横浜地検横須賀支部に書類送検した、という事実について!


             2023年8月  代表 福永慈二


2023年6月23日付神奈川版『朝日新聞』は、この神奈川県警の書類送検問題について、『逗子・崩落死亡事故 マンション管理会社員を書類送検 -「責任の所在」どこに 』と題し、次のように報じています。以下がその全文です。


【必要な安全措置をとらなかった疑いがある。 逗子市池子2丁目で通行中の女子高校生(当時18)がマンション敷地の斜面から崩れ落ちてきた土砂に巻き込まれ亡くなった事故で、県警は23日、当時のマンション管理会社の社員(38)を業務上過失致死の疑いで横浜地検横須賀支部に書類送検した。社員の刑事責任は問えるのか、検察の判断が注目される。 

「娘の無念さ、悲しみ、現実を受け入れなければならない中、ただ苦しい日々が過ぎている」。父親は2月、事故の責任の所在を求め、県を提訴した際の記者会見で胸のうちを語った。 

事故は2020年2月5日朝に起きた。女子高校生は友人と約束したイベントに行くため駅に向かって歩いていた。すると突然、沿道の斜面が崩れた。「ただ 娘はそこを歩いていただけ。誰が巻き込まれてもおかしくなかった」  

遺族は、県に対する提訴に先立って21年2月、マンションの斜面を所有する住民側と管理会社側に損害賠償を求めて横浜地裁に提訴した。その訴訟で、崩落の前日、マンションの管理人が斜面上部の亀裂を見つけ、管理会社社員に報告したのに、通行止めなどの対策を怠ったと指摘した。 

父親は今年2月の会見でこうも語っていた。  

「誰が(斜面を)管理していたのか。なぜそんな状況にしていたのか。責任を明らかにすることで、こういうことが二度と起こらないようになれば」 

住民 歩道怖くて通れず 

 23日に現場付近を通行していた人たちからも、責任がはっきりしない現状に疑問や不安の声が漏れた。幼い頃からこの道を歩く近くの男性(22)は「妻が事故の直前に通った。崩れるとは誰も思わなかった」 責任の所在を求める民事裁判が続き、管理会社社員が書類送検されたことについて「土地の造成会社、マンションの建設会社、管理会社、県や市などの責任が問われず、個人が追及されるのはどうなのか」と話した。

 近くの女性(65)は事故後、崖に面する歩道は怖くて通れなくなった。「本当にかわいそうな事故でした」

 事故後に県は、雨が降らない状態で崩落が起きたのを受け、傾斜地の点検ポイントを公表。斜面に亀裂や浮石、落石があるのは崩落の前兆現象だとし、「植生が貧弱な場合は特に注意が必要」と呼びかけた。 

逗子市は21年3月、地盤品質判定士会と協定を結び、市民が土地の安全性について相談できる専用窓口を設置した。崖地の多い同市は、崩落などを事前に察知しようと、歩行者が異変を感じた時に通報できるメールアドレスを設け、市道沿いの土砂災害警戒区域の定期点検を続けている。 (中村英一郎、村上潤治) 】

  

問題点はどこにあるのでしょうか。 

第1。付近の住人が語っているように、「土地の造成会社、マンションの建設会社、管理会社、県や市などの責任が問われず、個人が追及されるのはどうか」ということであり、このように個人に全責任を負わせるような「起訴」は断じて認められません。責任は建設会社、管理会社にあり、公道とその環境保全の責任者たる県と市の4者にこそあります。まずはこの4者が一体となって原因を追求し、それぞれの任に応じた責任を果たすべきです。

第2。県は「斜面に亀裂や浮石、落石があるのは崩落の前兆現象」「植生が貧弱な場合は特に注意が必要」との注意事項を呼び掛けていますが、事故の本当の原因は何なのか、4者が共同して科学的調査を行い、その結果を公表し、そのうえで「傾斜地の点検ポイントを公表」すべきです。そうしてこそ「点検ポイント」が意識され、注意され、対策が生まれるのです。

第3。崖地の多い逗子市は確かに地盤品質判定士会と協定を結び、市民が土地の安全性について相談できる専用窓口を設置しました。実際、こうした窓口を通じて、斜面の地盤調査も行われていると聞いています。しかし、4者が共同して責任を取る体制がつくれない結果、そうした地盤調査も活用されず、「崩落阻止に向けた対策」は何一つ進んでいないのが実情です。

結局、こうした裁判が延々と続き、その間、崩落事故対策は一向に進まず、危険はそのまま放置されるのです。

公的機関たる県が主導性を発揮し、4者共同の対策会議を持ち、事故補償だけでなく、原因調査、崩落対策について、直ちに必要な手を打っていくことがぜひとも必要です。関係者の善処を心から願うものです。

深刻な世界の飲み水事情!

       2023年7月 代表 福永慈二 


先月号では、日本国内の水事情について報告しましたので、今回は世界の水事情について報告します。そこには、災害時の水問題を抱える日本とはまた大きく異なった事情も見られます。最近、 世界の飲み水事情について、ユニセフは次のような報告を行っています。


「2020年時点、世界では20億人が安全に管理された飲み水を使用できず、このうち1億2,200万人は、湖や河川、用水路などの未処理の地表水を使用しています。川や湖、池などの地表水を直接利用している1億2,200万人のうち、半数以上は、サハラ以南アフリカに住んでいます。」

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、適切な手指衛生をすべての人が行えるようにすることが緊急の課題として浮き彫りになりましたが、パンデミックの発生時点では、世界の10人に3人は自宅で石けんと水を使って手を洗うことができませんでした。

ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは、『パンデミック以前から、何百万人もの子どもたちや家族が、清潔な水や安全なトイレ、手を洗う場所もなく、苦しんでいました』と述べています。『こうした命を守るサービスの拡大に向けた、これまでの目覚ましい進展にも関わらず、深刻なニーズの高まりは私たちの対応能力を上回り続けています。今こそ、COVID-19のような感染症との闘いを含め、健康と幸福を支える最も基本的なニーズをすべての子どもと家族に提供するための取り組みを大きく加速させる時です』」と。

 

こうした世界の深刻な飲み水事情はそれぞれの国の国民の置かれた経済状況・暮らし向きの貧しさの反映であることはよく知られた事実です。こうした政治の問題は政治で解決するほかありませんが、事業者としてやるべきこと、やらねばならないこともまた少なくありません。

その第1は、きれいな水をくみ上げることのできる、操作しやすい、安全で丈夫な井戸掘り機と水汲み揚げ機の開発です。そうした器具はたとえトラブルが起こっても現地の自分たちの力で修繕することができるはずです。

その第2は、手押し・自然エネルギーを利用した、「維持費」のあまりかからない、きれいな水が得られる水くみ揚げ機であることです。いくら立派な器具であっても、汚れた水では意味がなく、またそれを動かし続けるのに膨大な費用がかかっては意味がありません。

その第3は、少人数で井戸掘りおよび水汲み揚げ機設置ができるような「井戸掘りおよび水汲み揚げシステム」であれば、費用的にも安価で水問題を解決することが可能となります。 

 こうした「井戸掘りおよび水汲み揚げシステム」の開発などは大手企業はあまり取り組んでいません。しかし、ぜひとも必要な開発であることには間違いありません。「現代の開拓者」を自負する企業として、私たちはこうしたシステムの開発に全力を挙げて取り組み、少しでも世の中に貢献できるよう、頑張り続けていきたいと思います。

地質調査・井戸掘り業、家屋建設等は野外での仕事が主となります。これからいよいよ本格的な猛暑日が続きます。こまめに水分を補給し、クーラーを利用して夜に睡眠が十分とれるよう工夫し、栄養をたっぷり採り、十二分に健康に留意し、日々頑張り抜きましょう。


災害(地震)は忘れたころにやってくる!油断は大敵なり!

     2023年6月  

今年に入って、能登地方の地震はじめ、震度4~6の地震が数多く発生しています。茨城、千葉地域でもしばしば発生し、首都圏全体の不安を掻き立てています。私たちは、「災害は忘れたころやって来る」という格言を今こそ、想起すべきでしょう。

10年前の東日本大震災の際、余震が収まった後、農村部でも都心部でも最大の問題となったのが飲料水・生活用水問題でした。水道インフラの復旧には何日も日にちを要し、緊急時・災害時の水対策として「井戸掘り」があちこちで注目を集めていました。

地震時、既成の井戸も多少の被害を受けましたが、比較的深く掘った井戸はまったく使えなくなることはありませんでした。ただ濁った水が出るなどの問題は確かにありました。しかし、井戸は案外地震に対しても強く、地震時の水確保の方便として、十分役に立つものと考えて良いと思います。なお、濁り水対策として、私たちは、新しい簡易井戸掘り機の開発にあたって、液状化対策も含めて、ドレーン材の活用を徹底的に検討し、実験を繰り返しています。

病院・高齢者福祉施設など、公共性の高い施設、避難所に指定されている施設には、きれいな水の確保が非常に重要になってきます。ドレーン材を使うことによってきれいな水が確保でき、更に太陽光発電、小型発電機、手押しポンプを利用すれば、地下水の汲み上げは比較的安価に、容易に行えます。

井戸掘りの場合、かつて都市部では深刻な地盤沈下問題を引き起こし、特に首都圏では厳しい地下水取水規制条例が施行されました。しかし、災害用に特化した井戸に関しては各自治体とも条例の適用外としており、東京都23区内においても、一部を除いて、ほぼ各区で防災井戸掘削の施工・計画化が進んでいます。

東日本大震災の時、都市部の先端技術を組み込んだ巨大マンションも断水に苦しめられ、後日、多くのマンションで非常用の井戸が掘られ、注目を集めました。しかし、残念ながら、最近、そうした動きが報道されることが少なくなっています。警戒すべき状況にあると言わざるを得ません。

あらためて、「災害(地震)は忘れたころにやってくる!油断は大敵なり!」を強く訴えるものです。

ダルビッシュ有投手(現MLB・パドレス所属)が「ダルビッシュ有水基金」を設立し、協力活動を展開!                                  

        2023年5月号 

2007年(平成19年)年3月、ダルビッシュ有投手(現MLB・パドレス所属)は、「日本水フォーラム」と協力して、水不足や水の汚染などに苦しむ発展途上国の人々に安全な水を提供することを目的に、「ダルビッシュ有水基金」を設立し、協力活動を展開していることが新聞紙上で報じられました。

ダルビッシュ投手は、公式試合で勝利投手となるごとに、同基金に10万円を寄付することを約束し、それをずっと続けているとのことです。 基金設立以降のダルビッシュ投手の勝ち星は日米通算で171勝となり、「水基金」賛同者の寄付とあわせると、基金収入は総額約2,500万円にのぼるとのことです(令和5年3月31日現在)。

「朝日新聞デジタル」の記者・笠井正基氏は、2023年3月11日付記事『ダルビッシュが誓った20歳の思い―途上国の井戸掘り支援して17年』で、次のように報じています。

『ダルビッシュ有投手は、プロ3年目、北海道日本ハムファイターズに在籍した2007年春から、水不足に苦しむ世界の人々に安全な飲み水を提供する活動を続けてきた。NPO法人「日本水フォーラム」とタッグを組んで設立した「ダルビッシュ有水基金」だ。今春で17年目をむかえた取り組みは、昨年までに11カ国で15のプロジェクトを行い、多くの人々を救ってきた。

1勝するごとに10万円を寄付。途上国での井戸掘りや、くみ上げポンプ、雨水をためるタンクの設置などに取り組んでいる。貧困にあえぐ国や地域で、汚染された水源を利用したり、衛生環境に悩んでいたりする人々に心を痛めていたのが、きっかけだった。

手元に残る07年3月のプスリリースによると、当時、20歳のダルビッシュは思いを伝えている。「野球を通じて社会、そして世界に何かできないか。そんなことを考えた時、できることをまず始めてみようと。この小さな想(おも)いがやがて多くの人たちを、そして自分自身をも勇気づけていってくれるようになればいいと思います」と。

彼は、イラン出身の父、日本人の母をもつ。プロジェクトはルーツとなるアジアを中心に、太平洋地域やアフリカで行われてきた。』 

私たちは今回のWBCに関する報道の中で、初めて彼の「水基金」設立の活動を知りましたが、さすが、一流のスポーツマンのやることは違う、とたいへん驚かされ、感心させられました。こうした途上国の貧困にあえぐ地域に対する支援・協力の志は、彼の生まれ育った環境、特にイランからの移住でずいぶん苦労されたであろうお父さんの影響が大きかったと思われますが、いずれにせよ、称賛に値する素晴らしい取り組みです。

 私達も、今、丈夫で、安くて、一人でも操作できる、安全な「簡易井戸掘り機」の開発に力を入れています。途上国の水問題、井戸掘り問題は未だに多くの困難な未解決問題を抱えています。私たちも自らの事業活動を通じて、各国・各地の深刻な水問題の解決に少しでも役に立つことが出来るよう、全力を挙げて開発に取り組み、「ダルビッシュ水基金」の発展に協力していきたいと思います。


国土地理院が公開・発表した『地殻変動分布図』を大いに活用し、日本国土の調査観測を深め、国民の安全・安心の確保を実現させよう!                    2023年4月号 

国土地理院は3月28日、日本全国の地殻変動を表した「変動分布図」を初公開しました。これにより、日本各地の火山活動や地盤沈下などによる変動の広がりが一目でわかり、 災害対策や自治体の測量作業の軽減などに生かすことが可能になりました。 

3月29日付毎日新聞(垂水友里香記者)によると、これは「宇宙航空研究開発機構(J AXA)の地球観測衛星「だいち2号」の2014~ 22年 の観測データを解析した」結果分かったことであり、「だいち2号は電波を地表に照射して地殻変動を計測するが、 同じ場所を複数回測ってデー タを比較し解析することで、東西、上下方向にプラスマイナス年間3センチ以内の精度で地殻変動が分かるようになっ た」とのことです。 

また同記者は、「この日の記者会見では、新潟県三条市で道路の雪を溶かすための地下水のくみ上げで、地盤が年間1センチ沈下している様子や、埋め立て地の大阪湾周辺で年間3センチを超える 沈下が起きていることなどが示された」と伝えています。

実際、国土地理院のホームページ上で紹介されている房総半島の地図では、「年2センチ地盤沈下」している二つの地域が示されています。

こうした地盤沈下を引き起こしている地域の地下地中では、何らかの変化・変動が起こっていることが明白であり、それ故にピンポイントの調査が出来ます。

今回の「変動分布図」(ネットで「国土地理院・地殻変動」検索)の公開は、われわれ地質業界関係者にとってだけでなく、日本の国民にとっても、実に喜ばしいことです。こうした観測衛星を使って大局的に日本国土の実相・現状を把握し、それを参考にしてさらに日本国土の細部調査を進めるならば、各地の地盤内部の問題点が正確に掌握され、直ちに必要な対策を講じていくことが可能になるからです。

私達も今後の液状化調査や井戸掘り事業において、こうした「変動分布図」を大いに活用し、住民の皆さんの安心・安全の確立に役立つ努力を重ねていく決意です。


3.11 東日本大震災12周年にあたって                          2023年3月

東日本大震災から12年が経ちましたが、今なお世界の至る所で地震が発生し、人々を不安に陥れています。

去る2月6日、トルコ・シリア大地震が発生し、死者は5万余を数えるに至っています。亡くなった犠牲者の方々の冥福を祈りつつ、あらためて地震災害問題について考えてみたいと思います。

トルコ・シリア地震の被害は三つの問題を提起しています。

第1は、地震という自然災害はいつか必ず起こる、という事実です。現代の科学は、まだその予知能力の問題を完全に解決し得ておらず、事前に避難するなどの対処には限界があります。それ故、「必ず起こりうる災害」と覚悟を決め、今なし得る最大の「危険回避」を追求しなければならない、ということです。

第2は、地震被害には人災(政治的災害)という側面がどこの国でも付きまとっているという事実です。今回のトルコ地震でも、手抜き工事や耐震補強政策の軽視など、多くの人災が取り沙汰されています。「後の祭り」という言葉がありますが、常日頃から、目を光らせ、行動を起こし、最大限度の事前対策を推し進める努力が求められます。

第3は、地震災害については、お互いに協力し合い、助け合うことと、「津波てんでんこ」という言葉があるように、その瞬間は「自分の身は自分で守る」という決断が必要です。

以上のことを踏まえ、日本の地震・津波問題に関する最近のニュースを振り返ってみたいと思います。

2月27日付毎日新聞は、自社の「地理情報システム」を駆使し、国や自治体が23年2月1日までに公表している浸水域と各施設の位置情報データを分析し、次のような結論を導いた、と報じています。即ち「39都道府県の沿岸部市町村の幼保施設は23257箇所、その14%の3276箇所が最大級の津波想定浸水域に含まれ、高齢者施設は18705箇所あり、その13%の2386箇所が最大級の津波想定浸水域に含まれる」と。特に、南海トラフ巨大地震のおそれのある徳島、高知、和歌山、広島、三重県は大きな被害予想が示されています。

記事によると、国の決めた「津波防災法」は避難計画の策定を義務付けているが、なかなか進んでいない、というのが実情のようです。徳島大学の中野晋特命教授(地域防災学)は「民間経営の多い幼保施設…高齢者施設を含め、国や自治体が移転費用を手厚く補助するなど本気で利用者を守ることを考えなければならない」と警告を発しています。為政者はこの警告に深く耳を傾けるべきです。


それにしても、私たちが慨嘆せざるを得ないのは、地震問題の研究・解決にとって、非常に価値ある画期的論文―殿上義久氏の「液状化P波原因説」が、日本の国内では完全に無視され続けているという嘆かわしい現状です。多くのノーベル賞受賞者が「日本の科学的水準の低下」を憂え、「外国頼みの評価」という現状を憂えていますが、ここに、日本社会―日本の科学界、教育界、政治経済界にとって深刻な問題があることを忘れてはなりません。                              

                 (以上)

国際的学術誌への学術論文投稿と推選制度(査読制度)について

                                          2023年2月 福永慈二

 

2023年1月25日付毎日新聞の『論点―学術論文の偽装』欄に、『推選制度の見直し必要』と題する同志社大学・佐藤翔准教授の見解が紹介されています。 

昨年7月6日付毎日新聞「記者の目」(鳥井真平記者)欄では、スクープ記事「福井大・千葉大教授らによる査読偽装問題」が取り上げられ、国際的学術誌への学術論文投稿と推選制度(査読制度)について、日本の深刻な現状が明らかにされています。同紙は今回再びこの問題を取り上げ、問題提起を行っています。この問題に鋭い目を向けておられる鳥井記者の炯眼に心から敬意を表したいと思います。

この「査読不正」問題の根底には、日本政府の「基礎研究軽視」「予算低減」「目先成果の評価重視」があります。鳥井記者のこの記事は、日本の多くのノーベル賞受賞者が指摘している「政府の基礎科学研究軽視」「日本科学界の基礎科学研究力の低下」に警鐘を鳴らすものであり、日本の未来社会に関わる重要な問題提起です。

私たちはかねてよりこの問題に重大な関心を寄せてきました。それは、地質業に携わる者として、殿上義久氏がロンドンの土木学会誌に投稿している『液状化P波原因説』について、これを高く評価し、その科学性、先進性、画期性に注目し、早くに国際的評価がえられるよう、切に願っているからです。

昨年6月には当社HP上に殿上氏の許可を得て『液状化P波原因説』を紹介しました(HP掲載の二つの論文)。殿上氏は、日本国内ではこうした画期的に新しい理論がまったく認められない現状を踏まえ(これは日本の多くのノーベル賞受賞者の経験しているところ)、ロンドンの土木学会誌「Geotechnique 誌」に投稿し、昨年春、同誌編集部より、「著者の創意工夫に敬意を表し、祝福します」との通信が寄せられています(殿上氏は査読をロンドンの査読者に依頼)。そこには英文表現に関する修正点も提示されており、現在、殿上氏はロンドンの土木学会誌編集部・査読者のアドバイスを参考に、論文の再提出を準備しているとのことです。いずれ近い将来同誌への掲載が実現するものと思います。


さて、以下が1月25日付毎日新聞に紹介された佐藤准教授の見解です。よく耳を傾け、日本の科学研究の在り方、その未来について熟考し、それぞれの場で何をなすべきか、何がなし得るか、真剣に探求しましょう。私たちは、社として掲げている『三つのモットー』(当HPの「企業情報」欄参照)の探求の中に正しい問題解決の道があると確信し、その更なる追求を目指すものです。


『推選制度の見直し必要』

          同志社大学准教授・佐藤翔


査読は論文の信頼性を担保するために欠かせない制度だ。その成 り立ちは数百年前にさかのぼる。 学術論文を発表する学術誌は17 世紀にはすでにあり、論文を掲載するか否かを編集委員が判断していた。19世紀半ばになると、より専門性が高い他の研究者に無償で意見を聴く査読を行い、掲載に値する内容か判断する学術誌が出始めた。 

第二次世界大戦後、各国が科学研究費を増強して論文数はさらに増え、査読を導入する学術誌は1960~70年代に爆発的に増えた。このころ「科学研究の中身をきちんと評価できるのは、同じ分野の専門家だけだ」という考え方が研究者に広がった。 

論文の内容と専門分野が近い査読者を探すことは、学術誌の編集者にとって最も大変な仕事だという。 査読への協力は研究者の義務とされるが、査読者1人を見つけるのに平均で2人以上に依頼を断られるという。論文1本の査読には平均で5時間もかかる一方、作業はボランティアで、お金や業績にはつながらないためだ。 

推薦制度は、編集者が査読者を探す手間を省き、査読そのものに かかる時間を短縮する目的もあ り、メリットは大きい。 推薦がな ければ適切な査読者を見つけられず、査読そのものが成り立たなくなる分野もあるかもしれない。 だが、福井大教授らは薦制度を悪用し、協力者を査読者として論文の疑問点をまとめる査読コメ ントを書く「査読ゴーストライティ ング」だった。両者の詳しい人間関係は不明だが、利益相反への顕著な違反行為だ。しかも著者が自らの論文を査読する「自作自演」 の形になっており、言語道断だ。 査読は「研究者は誠実に研究活動をするはず」という性善説に基づく制度なので、複数人が自覚的 に関与していた点でも悪質だ。査読制度をかいくぐろうとする「文化」が研究者の組織自体にあったとすれば、研究そのものの信頼性が疑われ、研究領域全体の腐敗を指摘されても仕方ない。 

近年の学術誌は、著者が査読者を推薦する制度を導入しているものもある。 

2020年に世界で発表された論文数は自然科学分野だけでも190万本に上る。未掲載も含める とさらに膨大だが、査読があることで内容がでたらめだったり根本的に間違っていたりする論文が世に出ない仕組みになっている。 

査読者の適格性も重視される。そもそも査読する能力がない人や、利益相反にあたる人は不適格になる。誰が査読者を務めるかは著者に伏せられ、査読者には査読 への関与を明かさない守秘義務がある。「有利な査読をしろ」などの圧力や「有利な査読をしてくれたらお金を渡す」といった利益誘導を防ぐためだ。 

福井大、千葉大教授らによる査読偽装は、査読者ではない人物が推薦していた。 推薦制度が便利なのは間違いないが、学術誌の運営側の怠慢で不適切な人選となってしまったのかもしれない。 

推薦制度があることで、著者にとって利害関係がある査読者が推薦され、今回のような査読偽装が起こるリスクがある。研究者が知り合いばかりの分野もあり、編集者が人間関係まで把握するのは難しい。 分野横断的に一律の対応をするのは困難だが、不正のリスクを考慮すれば、推薦制度は見直さ れるべきではないか。 

改善の道筋として、査読の効率を高める取り組みがある。 

査読の件数が増えるのは、ある学術誌で掲載を認められなかった論文を、別の学術誌に再投稿する研究者が多いことにも一因がある。その場合は一から査読をやり 直さないといけないため、大きな負担になってきた。 

しかし近年は、別の学術誌で受けた査読の内容を、再投稿した学術誌に持ち込む「ポータブル査読」 という仕組みも出てきた。 査読者や査読コメントを公開する「オープン査読」制度を採用し、良い査読をする研究者が誰なのか分かるようにして、査読者を探しやすく する試みもある。 

推薦制度がなくても、査読が破 綻しない状況を作り出すことは可能なはずだ。【聞き手・鳥井真平】 

                   (以上)





2023年を迎えて!


            代表社員 福永慈二


新年あけましておめでとうございます。昨年中は大変お世話になりました。

本年もよろしくお願いいたします。

昨年末の12月11日念願の鹿島実験場の開所式を挙行し、これにより結佐実験場と二つの実験場が揃い、本格的な研究と開発作業を開始する準備が整いした。

2023年度の私たちの目標はいよいよ小型万能掘削機、小型井戸掘り機の試作・開発を着実に推し進め、これを完成させるとともに、殿上義久氏の「液状化P波原因説」を国際国内両分野において広く普及させることです。全力を挙げて更に奮闘努力する決意でいます。ご支援ご協力をお願いいたします。


2022年を送るにあたって!


                          2022年12月号      代表社員 福永慈二


2022年も師走12月を迎え、いよいよ終わりに近づいて来ました。当社は、この1年間、新型コロナに苦しめながらも液化研究会の皆さんの協力の下、一歩一歩着実に歩みを進めて参りました。

以下がこの一年間に歩んで来た道筋です。

◎茨城県稲敷市役所地域振興部産業振興課に「ジオ式地盤サウン 

 ディング」の提案。

◎小型 「地盤用サンプラー」の実証試験を稲敷市結佐 (沖積低

 地)、 鹿嶋市武井(洪積台地)、舘山市伊戸(山地部)で実施。 

◎茨城県利根町の産業機械加工会社 に小型スパイラルドリルの

 製作、小型万能掘削機の試作開発への協力を要請 。

◎ジオ・フロントの松永善男氏考案の小型「地盤用サンプラ

  ー」 実用新案登録 (7月)。 

◎ジオ・ステージ・フォーの鹿島地質実験場(液化研の共同利用)

 の伐採整地作業。 

◎殿上義久氏「液状化P波原因説」の2つの論文、 矢嶋信幸氏の

 「揚げ船」論文(東海大海洋学部、 星野通平教授追悼論文集)の

  普及活動。 

◎12月11日・鹿島地質実験場開所式及び記念懇親会開催予定。

これらは全て「将来に向けた準備行動」「飛躍のための準備活動」であり、そういうものとなるはずの事柄です。そして、2023年新年より、いよいよ小型万能掘削機、小型井戸掘り機の試作・開発を着実に推し進め、これを完成させるとともに、殿上義久氏の「液状化P波原因説」を国際国内両分野において広く普及させるべく、全力を挙げて更に奮闘努力する決意でいます。

今年8月24日に90歳で大往生を遂げられた「経営の神様」・稲盛和夫氏(京セラの創業者・名誉会長)は生前、次のように語っています。「経営には岩をもうがつ強い意志といかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要である!」と。私たちは、稲盛氏の説くこの「経営の心得」を強く心に刻み、当社の「三つのモットー」をしっかりと心に抱き、新たな年・2023年を迎えたいと思います。

(1)常に社会的使命感に徹して仕事をする。

日本と世界の至る所で地震・豪雨等による大災害が発生し、多く 

の命が奪われている。わが企業は、地質調査の事業を通じて、こ

うした自然災害と闘い、人々を不安と恐怖から解放することを社

会的使命とする。

(2)常に科学的態度に徹して仕事をする。

大自然は厳しく、徹底的に真実・真理を検証する。故に、大自然 

を相手にするわれわれの仕事は、科学的態度に貫かれたものでな

くてはならず、絶対に「正確・安全・迅速」を厳守する。

(3)常に協力・共同の精神をもって仕事をする。  

人間は一人では何もできない。わが企業は、あらゆる地質関連の

業者・技術者と協力・共同し、その英知を結合・結集し、巨大な

エネルギーにまとめ上げ、より大きく広く社会的貢献を果たすこ

とを目指す。 


 今年一年間、多くの皆様よりご協力、ご支援を賜りました。本当にありがとうございました。あらためて感謝申し上げます。

どうか、来年もまた、よろしくお願い致します。 

皆さん、良いお年を!


新たに開発された「地盤用サンプラー」の紹介

                                       

            2022 年11月号  村山弘樹 


このサンプラーは、深所の土の正確な採取のために開発された小型の「地盤用サンプラー」であり、この程、実用新案登録*がなされました。この採取用具は、中小の地質調査業者の協力・共同化を目指す‶ジオグループ‴所属のジオ・フロント株式会社(東京都墨田区)の現場技術者である松永善男氏が考案したもので、彼は、永年の現場調査の実践からボーリング地質調査方法に関連する種々の改良や用具の考案*2、3を行っています。

 この「地盤用サンプラー」は、半自動「スクリューウエイト貫入試験(SWS)機」(旧名:スウェーデン式サウンディング試験機)用に開発されたもので、次のような主な特徴を有しています。

     サンプラーを装着するSWS機は、小型・軽量なので、一般的ボーリング機械に比べ、山地・傾斜地や狭い場所でも搬入設置が容易である。

     SWS機のロッド先端に装着した小型ドリル(トローウェルスクリュー)で所定の深度まで削孔し、次に、このサンプラーをロッド先端に取り付け、ボーリングバーの打撃貫入(人力)により、容易に目的の土試料を採取が可能となる。。

     採取予定深度まで良好な孔を形成するので、任意の深度(10m以内想定)の土の試料を10cm単位で連続して採取することが可能である。

 この「地盤用サンプラー」は、既に、沖積低地部、洪積台地上、山地地域などで実証試験がなされ、また、市街地の種々な場所で使用され、確実な試料採取法として、信頼をえています。

従来、SWS調査現場では、地質の硬軟を調べる専用機であるSWS機では、孔壁や孔底の地質を判定するのは難しく、また、固い地層に突き当たった場合、その地層(土)を判定できず、推測にたよっていました。現在、SWS調査が汎用されている地盤改良工事で、このサンプラーが使用されれば、正確な地盤改良方法に寄与することが可能となります。その他、地質図作成のための学術調査での試料採取等、多様な応用が期待される。

 

*1的確な試料採取のための「地盤用サンプラー」:実用新案登 

 録 3238450

*2液状化判定のための「試料採取用サンプラー」:実用新案登

 録 3183846

*3正確な水位測定のための「水位測定装置」:実用新案登録第

 3169256

 

以下に、「地盤用サンプラー」の実用新案登録の文書を掲載しますので参考にして下さい。

「小型井戸掘り専用 機」の開発進む! ~戸建て住宅用井戸の価値を見直しましょう~

     2022 年10月号  代表 福永慈二   


 昔は多くの戸建て住宅の庭に井戸がありました。しかし水道インフラの充実と共に、また、地下水源の過重利用による地盤沈下問題などの発生と共に、その姿が消えました。しかし、最近になり、災害対策や水道インフラの故障対策に向けた戸建て住宅用の井戸利用の見直しが、国内でも国外でも、急速に進んでいます。

 そうした要望・需要に応えるべく、我が社は幾つかの関連企業と共同で、「小型井戸掘り専用機」(一人運転用)の開発を進めており、年内中に何とか形にして皆さんにご披露できたら、と考えております。

 この戸建て住宅用の井戸については、多くの皆さんから「簡単にできるの?」「許可は必要?」「費用が高いのでは?」といった質問が寄せられています。

 そこで、今月号では、そうした疑問を念頭に、井戸掘り作業の流れ、手順、留意事項について説明をしてみたいと思います。


(1)許可について…日本では地中に入れる水を通すパイプが2.5㎝以 

   内であれば許可申請はいっさい不要であり、自由に掘ることができ

   る。

(2)掘る場所の決定…庭の一角でタタミ1畳分のスペースがあれば十

   分。あらかじめ地質調査を行い、水脈のある所、地中に水道管や障

   害物がない所を選定する(必要に応じて地下レーダー調査を行

   う)。

(3)井戸の深さ…関東地方の場合、たいてい10mも掘れば水脈に当るの

   で、深さについて特別な費用は不要である。

(4)井戸底の洗浄…不要。普通はベントナイトを使って洗浄するのであ

   るが、本機の場合はドレーン材を使ってケーシングの中に砂や泥が

   入るのを阻むようにしている。

(5)汲み上げ用パイプ(2.5㎝以内)を挿入し、ポンプを設置する

  (手押しと電動の併用とし、どちらも使えるようにしておく)。

(6)費用は電動ポンプ代含めておよそ50万円くらい(遠方の場合は多少

   の出張費加算)。


 以上です。これを読んだ方は「えっ、そんなに簡単に、安い費用でできるの!」と驚かれると思います。

 今後の気候変動の危機への備えとして、生活用水として、灌がい用水として、いざという時のために、井戸を準備しておくことが求められることが多くなっていくことでしょう。

 個人住宅用の井戸が、正確に、安全に、安価で掘ることが出来れば、安心・安全が確保され、また近隣の方々、地域の方々との共同・協力関係も進み、住みやすい生活環境が整えられると思います。




大地震・集中豪雨などが引き起こす災害対策の一環として「非常用水の確保」が大きな課題として意識されるようになり、あちこちで非常時のための防災用井戸の設置が進んでいます!

備えあれば憂いなし!9・1関東大震災99周年にあたって

                      2022 年9月号  

 

首都圏を関東大震災が襲ったのは、1923(大正12)年9月1日のことでした。この関東大震災では、190万人が被災、10万5,000人あまりが死亡あるいは行方不明になったと推定されています(犠牲者のほとんどは東京と神奈川が占めている)。建物被害は全壊が約10万9,000棟、全焼が約21万2,000棟。東京下町の火災被害が広く知られていますが、被害の中心は震源断層のあった神奈川県内で、振動による建物の倒壊のほか、液状化による地盤沈下、崖崩れ、津波による被害が至る所で発生しています。9・1関東大震災は、2011年3月11日の東日本大震災と共に、日本人にとって、忘れることのできない災害であり、記念の日です。

 こうした記念日にあたり、当社も参加している「砂地盤液化判定システム研究会」(液化研)は毎年、地質事業の面から、いくつかの報告、問題提起を行ってきました。

 昨年度は「液状化問題」の重要性を取り上げ、戸建て住宅のための「液状化可能性調査システム」に関する研究状況について報告しましたが、昨年10月8日、公益法人:地盤工学会主催の「地盤材料のボーリング・サンプリングと採取試料の品質評価法に関するシンポジウム」において、わが「砂地盤液化判定システム研究会」のメンバーである村山弘樹さん・石野拓宏さんの論文『ジオ式地盤サウンディング』が正式に採用・発表され、戸建て住宅用及び研究調査用の液状化判定システムとして、各方面から大いに注目されました。

 また、9月ではありませんが、今年3月には、「津波対策問題」を取り上げ、矢嶋信幸氏(東海大学海洋学部卒)の論文『天災を乗り切る《揚げ船》のしくみ~津波避難船計画~』を紹介しました。氏の論文は、大雨のたびに水害に悩まされた地域が、その際の移動手段や生活用具として軒下などに小舟が備え付けられている木製の板舟―これらを軒下に下げたので「上げ舟」と呼ばれた舟―を、自らが生き延びる手段としたという歴史的教訓・経験に学んで考案されたもので、今後の具体化・実践化が期待されています。

 更に、今年4月29日に、液化研が親しく交流している殿上義久(東海大学海洋学部卒・音響地質学研究所)氏が、『液状化P波原因説』に基づく二つの論文を「星野通平教授追悼論文集」に初めて公開発表し、当社HP・6月号にもその全文が紹介されました。この理論、液状化P波原因説は、室内実験と地震時の野外の自然現象等の諸事実に裏打ちされた画期的な基礎理論であり、この基礎理論は、理学・工学などあらゆる分野に応用されうるものであり、今後、液状化に関するあらゆる論議の原点、出発点となるものです。現在、ロンドンの土木学会誌Geotechnique 誌編集部において、その評価が進んでおり、いずれ国際的に注目されるものと確信しています。

 そこで、今年の9月は、近年各方面で注目を集めている「防災井戸」の問題を取り上げたいと思います。災害などで断水した際に備え、個人や民間所有の井戸を使えるよう自治体が協定を結ぶなどの取り組みが広がっており、水道よりも構造的に地震に強いため、生活用水の迅速な供給源として大変注目されているのです。

 2022年4月13日付『日本経済新聞』は、「地震と井戸」について、次のような記事を載せています。

『肥後銀行が敷地内に作った井戸(3月、熊本市)=共同  14日で「前震」から6年となる2016年4月の熊本地震では、熊本市全域で断水した。水道水の100%を地下水で賄っているが、「本震」を含めた2度の大きな揺れで水道管がひび割れして漏水するなどした。飲料水は支援物資を充てたが、トイレや洗濯に使う生活用水の不足が問題に。井戸を持つ企業や病院、個人らが自主的に井戸を開放した。市水保全課の永田努課長は、「水が当たり前の存在でないことに気付いた」と振り返る。

 地面と平行に埋設される水道管と異なり、垂直に掘って取水する井戸は地震が起きても破損しにくい。熊本市は17年、民間管理の井戸水を災害時に提供してもらう協定を締結。現在は95基が登録されており、市ホームページや携帯電話アプリで場所を把握できる。

 肥後銀行(熊本市)は地震後、県内10支店の敷地内に井戸をつくった。事業継続計画(BCP)の一環で、協定により災害時は誰でも利用可能。平時は小中学校の防災・環境教育の場として活用している。

 21年10月「水管橋」と呼ばれる送水管の一部が崩落した和歌山市。つり材が腐食で切れたことが原因とみられ、約6万戸が断水した際には「災害時協力井戸」として登録している民間井戸23基を開放した。

 登録は市内全地区の一部にとどまっており、市は今後拡大を目指す。一方、所有者からは「利用時に不特定多数の人の出入りが心配だ」との声が上がるという。市地域安全課の田尻和正課長は「井戸のほとんどは個人の所有。助け合うという意識が大切だ」と訴えた。〔共同〕』と。

 この記事からも明らかなように、地域に防災井戸を掘り、災害時に備えること。そして、この防災井戸を中心に近所・近隣の助け合い・共同化を進めること。その重要性が再認識されます。

 こうした現状に鑑み。私達「砂地盤液化判定システム研究会」に参加しているメンバー、研究者、技術者の間で、今、地盤調査機であるジオ式SWSの機能を利用・改良し、新たな「小型軽量の井戸掘り専用機」を開発する製作作業、実験が押し進められています。それは丈夫で、軽く、一人で操作ができ、しかも安価であり、非常に使い勝手の良いものになるはず、との確信をもっています。近い将来、皆さんに、その成果を報告いたします。ぜひご期待下さい。


                        

大地震・集中豪雨などが引き起こす災害対策の一環として「非常用水の確保」が大きな課題として意識されるようになり、あちこちで非常時のための防災用井戸の設置が進んでいます!

 

         2022 年8月号・代表 福永慈二


 大規模な天災・災害時には、ライフラインとしての、或いは農業・畜産業の命としての用水が遮断され、長期間にわたって水の確保ができず、被災者が大変不便な生活を余儀なくされたり、農作物や畜類の命を預かる農家・畜産家が深刻な不安と経営危機に晒されたりするなど、水道用水の不通が現実的な脅威として広く認識されるようになってきました。

 実際、2011年3月の東日本大地震の際も、地震・津波の危機が去った後、今度は深刻な「水不足」が発生し、多くの被災者を悩ませ、その後の「井戸掘削」の広がりに繋がっていきました。。

 2012年5月、日本地下水学会主催で、東大柏キャンパスにおいて、「シンポジューム―震災時の非常用水資源としての地下水利用の在り方」が開かれ、このシンポの中でも、2011年3月の東日本大地震の際、鹿島臨海工業地帯の一部を構成する茨城県神栖市(人口約9.5万)で、ボランティアが設けたサイト「井戸水給水マップ」に、なんと「2万件以上」ものアクセスがあったことが報告されています。

 実際、昨今、学校や公園、地域の避難場所などの公共施設に防災用井戸を設置するところが大変増えています。今後、多くの農家・畜産家もまた、防災用井戸・非常時の用水確保に向けて積極的に動いていくことでしょう。

 こうした流れと状況に鑑み。私達「砂地盤液化判定システム研究会」に参加しているメンバー、研究者・技術者の間でも、地盤調査機であるジオ式SWSの機能を利用し、改良し、新たな「小型軽量の井戸掘り専用機」を開発する作業、実験が進行中です。近い将来、皆さんに、その成果を報告できるものと確信しています。

 これらの問題に関心をお持ちの方、実際に防災用井戸の掘削を考えている方、ぜひご連絡下さい


殿上義久氏(東海大学海洋学部卒・音響地質学研究所)によって『液状化P波原因説』発表される!               

                                  2022 年6月号・代表 福永慈二


 2022年4月29日、殿上義久(音響地質学研究所)氏の『液状化P波原因説』に基づく二つの論文が「星野通平教授追悼論文集」(同編集委員会、イー・ジー・サービス出版)に掲載されました。

 一つは、『飽和砂の剪断に伴うP波の発見とP波による液状化の発見―液状化の本質的原因とは何か?~教育おもちゃエッキーによる定性実験とその考察(1)~』であり、もう一つは、『液状化地域と周辺部における大地震時の音と揺れに関する面接調査~地震計ではとらえきれない物事の探求~』です。

 現在、地盤工学会、日本地震学会などの学会を始め、国や地方公共団体等々、大地震に伴う砂地盤の液状化現象は、地震の主振動波である横波(S波)に起因して生ずるとされ、これが常識化しています。これに対し、殿上義久氏によると大地震時の砂地盤の液状化の原因は、横波のS波ではなく、縦波のP波であるというものであり、正に180度異なる見解です。

 ここで、P波とは、地震の震源域から発生した地震波が最初に到達する縦波=Primary WaveからP波と呼び、S波とは、二番目に到達する横波=Secondary Wave のS波のことです。

 殿上義久氏は、1980年代後半に『液状化P波原因説』の着想を得て、以来30有余年の長きに渡り自前の実験室を設け、砂地盤の液状化の基礎的実験を積み重ね、また、大地震後の現地に赴き、優れた観察力でP波の実際の挙動を聞き込み、記録し、これらの知見から液状化P波原因説の理論を確信し、さらに発展させて来たものです。氏の尊敬する恩師、東海大学海洋学部の名誉教授であり、優れた海洋地質学者である、故星野通平氏の一周忌に合わせ、『液状化P波原因説』を発表したものです。

 この理論、液状化P波原因説は、室内実験と地震時の野外の自然現象等の諸事実に裏打ちされた画期的な理論であり、この理論は、理学・工学などあらゆる分野に応用されうるものであり、今後、液状化に関する論議の原点、出発点となるでしょう。


「液化研」の共同利用施設「鹿島地質実験場」5月新規オープン !

 

            2022 年5月号   代表 福永慈二


 この5月、いよいよ「液化研」(砂地盤液化判定システム研究会)の共同利用施設である「鹿島地質実験場」が新規オープンすることになりました。この新たな施設開設にあたっては、ジオグループ各社及び多くの友人・知人の協力を頂き、大変助かりました。心から感謝申し上げる次第です。それにしても、共同協力の力は素晴らしく、樹木の根が蔓延り、違法投棄物が散乱していた荒地も一気に整理整地され、見事な実験場に生まれ変わりました。

今まで、私達「液化研」は、茨城県稲敷市結佐地区にある「結佐地盤実験場」で、実験場が沖積平地であるという地形的条件を生かした液状化調査の種々の実験、半自動SWS試験機を使用する砂試料採取の実証試験、液状化判定のための基礎的実験、埋土層の確認のための地下レーダー探査などを実施してきました。これらの共同実験で得た教訓の一つは「地質科学の理論はこれらの野外の実験と結びついて初めて技術的成果として社会に還元することが出来ること」でした。

今回、新たに開設した「鹿島地質実験場」は、茨城県鹿嶋市武井地区の標高40m程の鹿島台地(行方なめかた大地)上にあり、約330平方メートルほどの篠竹と茨の密集した敷地を伐採・整地し、実験場として整備したものです。整地には大変苦労させられましたが、この実験場は、当面、「液化研」各社の共同実験場として、地質調査用器具の開発、簡易井戸の作成方法、他の研究・実験に活用していく予定です。

なお、「液化研」の会員でない方でも、結佐の実験場と鹿島実験場を見学し、何らかの地質実験を希望される方を歓迎いたします。


『「大発見」の思考法 』(山中伸弥・益川敏英さんの対談)に学ぼう!

                       2022年4月号  代表 福永慈二


『「大発見」の思考法 』(文芸春秋 文春新書)―対談集―において、二人のノーベル賞受賞学者が述べていることを「10項目」にまとめてみました。様々な開発事業に取り組んでいる研究者・技術者にとって、非常に貴重な教えとなっています。機会あるごとに、ぜひ繰り返し学び、研究の導きとしていって下さい。


①お風呂は戦略的なことを考えるのに適している。外からの雑音が無いので自分だけの世界に没入し易く、インスピレーションが湧きやすい。しばしば入浴中に大きな発見がなされている。アルキメデスが比重の原理を入浴中に発見し、裸で風呂から飛び出した逸話が有名であるが、益川さんの「ひも理論」に関する発見も、山中さんの「ある遺伝子が何故癌を引き起こすのか」という後のiPS細胞発見につながっていく思いつきも、やはり入浴中に閃いたものだいう。


②益川さんの発見も山中さんの発見も、最初は周囲にも信じてもらえず、受け入れてもらえなかった。物事を疑ってみることは大切だが、「そんなことがあるわけない」という思い込みは危険であり、自由な発想を押さえつけることになる。


③様々な意見を出し合い、たたかわせるディスカッションや討論は「思考の攪拌」を生み出し、物事の新しい展開を生み出す。


④ じっと待っていてもロマンはやってこない。興味のあることはどんどんやってみること。その中で「何か」にぶつかり、そこから新たな展開が生まれ、ロマンが生まれていく。山中さんも、整形外科医として動脈硬化症研究のためのノックアウトマウス(目的の遺伝子の働きを失くしたマウス)を作っている中で遺伝子への理解が深まり、その延長線上で癌細胞研究が始まり、それが更に万能細胞(iPS細胞)の研究、発見へと進んでいった。偶然の出会いを必然の出会いに変えていくのは研究者本人の態度・姿勢次第である。一見無駄にみえるものの中にも、豊かな芽が隠されている。


⑤自然は奥が深い。それ故、実験してみることは非常に大きな意味がある。既成概念と違った結果、予想通りでない思いがけない結果が出て来て、それが新たな発見のヒントになる。大切なことはどんな結果にも強い関心をもち、感動をもって受け止めることである。


⑥現代の情勢変化は速く、スピーディーで、しかも大量である。如何に天才と言えど、一人で全てに対処することは不可能である。このことにはやく気付き、すべてを「組織的に」進めることである。


⑦世界を相手に一番を目指せ。それは順番を争えということではなく、「志を高く持て」ということである。そうしないと二番にも三番にもなれない。「高い志」がなければ大きな発見は生まれない。そして「眼高手低」を。即ち、目標は高く持ち、また常にその目標を意識し、しかも着実にできることを一つ一つ積み上げていくことである。


⑧戦後の日本は貧しく、皆「日本の未来は科学技術立国しかない」と思っていた。最近の日本は「金融立国」に目を奪われている。新しい大発見は「科学立国」を目指すという高い志の中からしか生まれない。


⑨「目に見えること」を無批判的に信じてはいけない。現象を漠然と見ているだけではダメで、細かく観察し、しっかりと判断し、結論を下さねばならない。


⑩壮大で奥深い自然に対してしっかりと目を開き、耳を傾け、自然から教えてもらうという謙虚な気持ちを持つことが大切である。

                       (以上)



矢嶋信幸氏(東海大学海洋学部卒)が提起した『天災を乗り切る《揚げ船》のしくみ~津波避難船計画~』に注目を!

 ―2011・3・11東日本大震災の11周年記念にあたって―

 

             2022年3月号


 東日本大震災11周年記念にあたり、矢嶋氏より上記論文が当「砂地盤液化判定システム研究会」に送られてきました。実に創意に富んだ避難船計画です。氏のこのような《揚げ船》の仕組みは、日本の各地に残っている「上げ舟」の歴史に学んで構想されたものであり、そこに素晴らしい創意、発想があります。

 折しも、今年2月16日、NHKは、夕方のニュースで、東京都葛飾区東新小岩7丁目住民の「災害時避難ボート訓練」を大きく取り上げ、報道しています。この訓練は2010年より始まり、今も3か月に1度行われているとのことで、災害時の船・ボートの利用の重要性が訴えられていました。

 矢嶋氏提案の基本的な内容は以下のようなものです(更に詳しく知りたい方は当研究会にお問い合わせください)。


 『2011年3月11日発生の東日本大震災の被害の多くは、 海岸線沿いに、約1千年に一度と言われる津波によりもたらされたものであり、生命、財産、公共施設、 産業、家屋、景観等全てを破壊し、その被害は未曾有のものとなっている。 

 多くの津波記録の報告によれば、津波が、低地、 海岸、河川を通して内陸部深く迄で入り人命を奪っており、その痛ましさは何時までも残され、人々へ記憶として続いている。 

 これらの例では、発生した津波の波高が 10 数メートル以上にも達して、既存の防波堤も長年にわたって整備されたのにもかかわらずそれをも超え破壊し全てを飲み込んでいる。震災により約21,000名余りが亡くなり、津波により逃げ遅れた方々も多く、津波の襲来時間も平野部では到達 時間が短くなっている。』

 『現在の国、県、各市町村での対応には防災計画から施工まで行き着くまで膨大な費用と論証時間が必要とされ、地域住民との調整も難航している。このようななかで、歴史的に何度となく災害に遭遇した地域 の「上げ舟」、現在の海水浴場のライフセイバー等のその救難や救助方法を地域の活動をもとに、津波避難船と河川浸水地域計画とを検討することを提案するものである。』

 『大雨のたびに水害にたびたび悩まされた地域がその際の移動手段や生活用具として軒下などに小舟が備え付けられていた。木製の板舟でこれらを軒下に下げ「上げ舟」と呼ばれ、自らが生き延びる手段としていた歴史的記録がある.。

 河川の水害とは逆の流れの津波は、陸地に向かって一定方向が深海から発生して来るもので、そこで多くの人が近くに一時的に徒歩で避難し、津波から生命の安全を確保できる場を検討する必要があると思われる。』

<氏は、歴史的実例として、群馬県板倉町、岐阜県海津町・輪之内町、荒川下流川島町関東等関東各地・信濃川流域の「水塚」(みつか:敷地内に土盛りし、土蔵を建て、災害時に備える)と「上げ舟」の利用、大阪市摂津の「井路舟」等を紹介している>

 『我が国は造船立国としての歴史は長く、その技術力や安全性の研究は進んでいるが、津波では早期に船で沖へ逃げ、避難するとなっている。しかし、船舶としての航行のための機能が求められるものではなく、「波きりと浮力構造」により安全が確保されるものとで考えられる。 漁労や物を大量に運ぶものでもなく、安全避難場所(一旦の居住)としての「上げ舟」の大型化を目指し、「揚げ船」とするものである。日本の造船やタンク等の製作技術は世界的にも秀でて、 造船技術には鉄鋼、木造、 FRP、プラスチック等の組み合わせによって様々な船型式が造船でき、一時的に地域の避難者の生命が救済できる場となるものと考える。

 共通構造、設備により安価な製作を求め、各自治体市町村の簡易監理によりマニュアル化により導入が容易となる同一サイズの避難対策船を製作し必要な場所に設置することが望まれる。』


 『避難対策船は、海浜、河川河口、軟弱低地等の公園用地 や海水浴場、防砂林等への設置検討が求められ、津波によ る流動を防ぐために、船体を鎖・ワイャー・鋼管等により地中アンカー基礎の上に、想定津波波高に安全性を加味して固定設置する(参照Figs.1 and 2)。』

       

 『一般的船舶は、沿岸の強風や潮汐・津波に弱いとされて、事故が発生する前に水深の深い沖に避難しているが、沿岸では 強風や波浪の流れよってその事故が多発し、その多くはアンカーの「走錨」(そうびょう:船舶が投錨停泊中に風・潮流・ 高波等により錨効かなくなり、船舶が流される)で船を流している。

(揚げ船の)船体は、浮力と波切り構造タンク構造(ハッチ浸水 ない)、ウインチ・クレーン、窓は耐波性等が装備されているため安全性が確保されている。

 船内部は、昼夜を通じての避難生活が可能で発電やバッ テリー・非常用備蓄品・飲料水・トイレ・空調・通信設備 (放送無線電話) 汽笛・案内板等があり非常用に対応できる。』 


『「揚げ船」についての研究は様々な角度から、安全、経済性、持続性等データーの検討が必要である。まだ国内では行われてはいないが、独立行政法人の研究所、海洋関係大学、沿岸地方自 治体等の様々な検討データーの活用と津波との対応性を研究していくことが必要と思われる…

 海岸線は、国としての利用目的により維持管理されているものの、防波堤設置には漁業・景観・放置船・環境の変化等、様々な問題を地域では抱えており、その管理の一手段につながるものと考える。

・陸地海岸の公園部分等に海岸方面を向けて船体を設置 

・観光案内所,海岸海水浴場施設として多目的利用

 ・防災無線ステーション等として活用 ・管理については消防関係  

 非常時の体制に組み入れられること

等が望まれる。』


 以上が矢嶋氏の提案の基本的内容です。津波・洪水被害が予想される地域の皆さんが、この提案を参考にし、ぜひ試験的・実験的利用を推し進め、命を守る運動として大いに発展させて欲しいと願っています。



調布市住宅街の陥没事故と液状化

 2022年2月号

 東京都調布市の閑静な住宅街の路面が陥没したのは2020年10月18日のことでした。路肩に長さ約5メートル×幅約3メートル×深さ約5メートルの大きな穴があき、周辺住民を怖がらせました。陥没原因は地下約47mで掘り進めていた東京外かく環状道路(東京外環)のトンネル工事であり、事業者の東日本高速道路(NEXCO東日本)がボーリング調査などをしたところ、周辺で地中空洞が相次いで見つかりました。 しかし、11月6、7日の住民説明会で、会社は、掘削機(シールドマシン)が石などの砂礫層にぶつかり、振動や騒音への苦情が増えたことを正式に認めましたが、工事と陥没・空洞との関係は不明としました。これに対し、東京外環道計画の見直しを求めている住民団体「野川べりの会」メンバーで元高校教諭(自然地理学)の早川芳夫さんは「今回見つかった空洞が以前からあったとは考えにくい。陥没・空洞の原因は、シールドマシンが過剰に土砂を取り込んで地中にすき間が生じたか、マシンの振動で水を多く含んだ沖積層などが揺さぶられ、液状化を起こした可能性が考えられる」と、重要な指摘をしました。

 地元住民によると、現場近くを流れる入間川の周辺は1960年代に宅地造成が始まる前、「沼のようにぬかるんだ田んぼ」が広がっていたと言います。入間川周辺の住宅街は地盤が軟弱とみられ、工事の振動が原因と思われる亀裂や傾きなど、液状化をうかがわせる被害の訴えが多数出ていました。数年前にも地盤沈下によりアパートが傾いた例があったと言います。

 横山芳春博士(理学)も『ハザードマップだけでは把握しづらい陥没・空洞化は地震の後に起きやすい』と題して、次のように述べています(さくら事務所の2021年12月13日付HP)。

 『最近、調布市や吉祥寺、北海道三笠市で道路の陥没が相次ぎました。調布市や吉祥寺の例は大深度地下工事や隣地工事の影響がある可能性も考えられます。あまり知られていませんが、大きな地震の後には陥没が多く起こる事が報告されています。また、地震の際には液状化現象によって陥没が起こることがあります。液状化は「人が死なない災害」と言われますが、戸建て住宅のみならず、マンションでも大きな被害を受けることがありますが、ハザードマップの整備が進んでいない、リスク把握が難しいという実態があります。…

 道路の陥没の件数は、国交省の資料によると、令和元年度で約9,000件発生しているとされております。この数は、1日の平均に換算すると、約25件/日にもおよぶ数となり、1時間に1件以上は全国のどこかで陥没が発生していると言うことができます。…

 緩い砂の層からなる地盤で、地下水が浅い(地表近くまである)場所では、大きな地震があった際に「液状化現象」が起こる可能性があります。水分がたくさん含まれているゆるい砂の地盤では、普段は砂粒同士が支えあい、その間を水が満たしている状態で安定しています。このような緩い砂の層は、埋立地や低地の旧河道、氾濫平野、砂丘の間にある低地などの地形で良く見られますので、地形区分からある程度の液状化リスクを推定することや、地盤調査を行って液状化判定を行うこともできます』と。

 ここで考慮すべきは、「地震」を「何らかの作業・工事によって引き起こされる地盤振動」とすれば、当然、大深度地下工事が発生させる「地盤振動」やその「騒音」の影響を無視することはできない、ということです。

 2022年1月17日、陥没事故の被害者らでつくる住民団体が開催した「外環問題を考えるシンポジウム」に出席した谷本親伯大阪大学名誉教授(トンネル工学)、浅岡顕名古屋大学名誉教授(地盤工学)らの専門家は、ネクスコ東日本の調査報告は「信ぴょう性が薄い」と真っ向から批判し、「陥没事故の主因は掘削時の気泡材が地盤を緩めたため」と主張しました。そして、専門家の総括意見として、調布の陥没現場付近の2基を除くシールドマシンを再稼働させる際には、「気泡剤の使用をやめてベントナイトを使用せよ」と提言し、気泡剤使用の影響があるのではないか、と指摘しています。

 工事の工法と空洞化・液状化との関連は、今後更に探求されていくでしょう。ただ、ここで大切なことは、「空洞化を発見する」こともさることながら、「空洞化の原因」「空洞化と液状化の関連」等を明らかにすることであり、横山博士の提言通り、あらかじめ「地盤調査を行って液状化判定をきちんと行う」ことであり、地中内の状況を正確に掴むことです。

 科学的な調査抜きに正しい対策は打ち出せません。きちんとした地質地盤調査・液状化判定が何よりも求められます。


謹賀新年

地質の調査・研究の重大性の再認識を強く訴える!

~2022年の年頭にあたって~


       2022年1月号

 

 新しい年2022年を迎え、皆様に新年の挨拶を送ります。本年も、昨年同様、よろしくお願い致します。

 さて、2021年は、大きな地震こそ起こらず、液状化事故等も起こりませんでしたが、震度4,5の地震が頻発し、地震災害・液状化事故への備えと地質調査・研究の重要性を改めて再認識させらたことです。ただ、今年は地震以外にも、豪雨と熱海の盛り土崩落事故、調布市の東京外郭環状道路掘削による地盤空洞化と陥没事故、神奈川県緑区の擁壁崩落の可能性に関する調査要請など、多くの方面から、地質調査・研究の必要性、重要性が指摘され、その重大性を再認識させられました。

 私達砂地盤液化判定システム研究会は、昨年10月、地盤工学会のシンポジュームで「ジオ式サウンディング」による地盤調査システムに関する新たな液状化調査方法を発表し、関係各方面から注視されましたが、現在、このシステムの更なる改善・改良を達成すべく、多くの地点での試掘実証実験データを集め、このシステムが日本の多くの地質研究者の調査・研究活動に役立てられるよう、追及中です。

 現在、世界では地球温暖化と豪雨・大火・沈下の災害、日本では南海トラフを因とする大地震発生の可能性等が大きな問題として取りざたされ、対策の必要が叫ばれていますが、遅々として進んでいないのが現状です。そうした中で、先に記したように、今日本の各地で、豪雨による堤防の決壊・崩落の水害、盛り土崩落事故、擁壁崩落事故、地盤空洞化と陥没事故等の問題が浮上しています。そして、これらの事故原因追求において、地質調査上、まだまだ未解決問題が多く残されており、地質学者による地質調査・研究の重要性がますます増していっています。そうした、地質学者の皆さんの実地実証実験を支援すべく、私達は、軽便で扱いやすく、費用も低廉、しかも正確なサンプル収集ができるシステム・器具を作り上げるために、全力を注ぐ決意を新たにしているところです。

 関係者の皆さんの率直な意見、要望をお聞きし、衆知を集め、より良いものを作り上げていく所存です。どうかご協力のほど、よろしくお願い致します。


地球温暖化と地震と地盤液状化・

擁壁崩落事故について

                       ~2021年をふりかえって~


                                                         2021年12月号

 

 この1年をふりかえってみた時、日本でも世界でも大きな問題としてクローズアップされたのは地球温暖化問題でした。真鍋淑郎さんがこの分野の功績でノーベル物理学賞を受賞し、今年9月には国連機関によって「地球温暖化は人間が生み出したもの」と正式に結論づけられ、「温暖化危機は人災である」ことがいよいよ鮮明になりました。特に、今年の夏はアメリカ・カナダ・ギリシャ等々の国で大きな山火事が多発し、ドイツはじめヨーロッパの国々では豪雨・大洪水が起こり、大変な被害が発生しました。日本でも、5月に豪雨下の熱海で盛り土崩落事故が発生し、多くの命が奪われるという悲劇的事故が起こりました。更にまた、今年も日本各地で震度3,4クラスの地震が多発し、大地震の発生も懸念されており、その対策を含めた対応が求められています。

 こうした中で、最近、日本国内で大きな問題となっているのが「擁壁崩落の危険」という問題です。元々私たちの会社は地震によって引き起こされる砂地盤液状化の調査・対策の業務を主とする企業として発足しました。そして、今年の10月には当社も参加している地盤液状判定システム研究会のメンバー(村山弘樹・石野拓宏)が、地盤工学会主催のシンポジュームにおいて、「ジオ式地盤サウンディング」という戸建て住宅地盤の液状化判定の新システムを発表し、関係者の注目を集めるに至りました。ところが、研究会構成企業が今年実際に受注した仕事は、神奈川県の相模原市や横浜市緑区等々における「擁壁崩落可能性調査」でした。私たちが液状化調査用に開発した「ジオ式地盤サウンディング」機は軽便で、一人操作が可能であり、比較的容易に斜面地盤調査ができます。また、このシステムの一部となっている「地下レーダー探査機」を使えば、地盤内部のインフラの現況や空洞化状況が把握でき、こうした多角的な調査をもとにした「総合的地盤判定」によって、かなり正確な「擁壁崩落可能性」の判定・判断を下すことが出来るのです。また今後当然求められる擁壁崩落防止の有効な対策として、「柱状ドレーン」(地中の水を抜く管)を使った、新たな工法の開発を進め、準備しているところです。

 斜面と坂道と崖が多いことで有名な神奈川県では、2020年2月に、逗子市のマンション敷地内の斜面が崩れ、県立高校の女子生徒が土砂に埋もれて死亡するという痛ましい事故が発生しており、斜面・擁壁の崩落問題対策が緊喫の課題となっています。また、関東全域において、盛土した造成地も決して少なくなく、熱海のような崩落事故の危険が各地にあります。そして、こうした崩落事故の背景には、温暖化の産物としての豪雨多雨による擁壁内部或いは盛り土内部の水圧の危険増大があります。その危険回避のためには、何としても、早期調査・早期発見・早期対策がぜひとも必要なのです。

 勿論、こうした地球温暖化や地震被害は、日本だけでなく、人類にとっての大問題であり、全人類が共同・協力しない限りその被害を完全にくい止めることはできません。私達は、「全地球的規模の共同・協力」を声高く訴えつつも、「科学的で、安全で、早く、安くできる液状化事故・崩落事故の調査・対策システム」の開発に力を入れ、これを更に発展・普及させ、引き続き社会的貢献を果たしていく決意です。

擁壁崩落問題とその対策について

               ~柱状ドレーン工法の活用を~


 2021年11月号 代表 福永慈二


 デジタル版『日経クロステック』に、『危険な擁壁の注意点は?』(2017.02.28)と題して、高市清治氏が擁壁問題について、次のような問題提起を行っています。


『熊本大地震では、建築基準法や宅地造成等規制法に適合していない擁壁の崩落問題がクローズアップされた。しかし、擁壁が問題になるのは地震の被災地ばかりではない。

 例えば、1960年代には高級感がもてはやされた大谷石の擁壁だが、現在は耐力がないものとして扱われる。大谷石の擁壁は全国各地に現存している。風化が激しい大谷石の老朽化が進み、土圧に耐えられずに崩落する事例も散見される。

 特に危険なのが、既存の擁壁の上に増設した「増し積み擁壁」だ。既存擁壁の築造時には想定していなかった土圧がかかり、既存擁壁にクラックが入っている状態のものも見られる。大地震が発生した時はもちろん、降雨量の増大で水圧がかかるとさらに崩壊の危険性が高まる。

 擁壁には土の荷重(土圧)と、地中にたまった雨水などの水圧がかかる。さらに建物の荷重が加わるので、十分な強度がなければ、最悪の場合は倒壊や不同沈下につながる』と。


 この擁壁問題は、神奈川県逗子市で2020年2月に、マンション敷地内の斜面が崩れ、県立高校の女子生徒-当時18歳-が土砂に埋もれて死亡するというした痛ましい事故が発生し、これを機に大きくクローズアップされてきました。今、この事故の「責任の所在」を巡って裁判が行われていますが、重要なことは、このような「擁壁崩落事故」を如何に防ぐかです。高市氏も擁壁崩落のその危険性を指摘し、注意を喚起していますが、その対策については言及していません。

 擁壁崩落対策としては、「柱状ドレーン」による水抜き工法があり、これをもっと積極的に取り上げ、実際の対策に活用していくことが必要であり、緊喫の課題となっており、この工法にもっともっと目を向けるべき、と思うものです。

 そもそも擁壁は土壌の横圧を受け止めるためのもので、横圧は、擁壁の上部でもっとも小さく、下部に行くにつれて大きくなります。土圧は、もし擁壁が適切に施工されていなければ、擁壁を前へ滑動あるいは転倒させるように力が働ことになります。その場合、高市氏も指摘しているように、水圧が大きな危険を増大させます。擁壁の内側の地下水が排水機構によってうまく処理されていなければ、その水圧が擁壁に働くことになり、崩落の原因となるからです。擁壁背後の排水を適切に処理することは、擁壁の性能に影響するために、とても重要です。土壌から排水することで水圧が減少し、或いゼロとなり、擁壁内部の安定性を大きく向上させることができ、擁壁が水の力を支える必要がなくなるからです。更に、われわれの調査によると、擁壁内部の土壌の液状化が、崩落のもう一つの要因となっており、この方面の対策としても、「柱状ドレーン」による水抜き工法が重要な意味を持って来ます。


 いつの場合も、何らかの事故が起こって初めて注目が集まり、議論がなされるのですが、重要なことは、そうした事故を再び起こさないようにするために、何をなすべきか、ということです。私たちは、各地の行政の担当者と力を合わせ、事故の絶滅を目指し、液状化の調査と対策、ドレーン工法の普及に力を入れていきたいと決意を新たにしています。柱状ドレーン工法に限らず、それが普及すれば、資材の大量生産が可能になり、工事費用は著しく安くなります。普及は大きな大きなテーマであり、課題です。ご協力、よろしくお願い致します。




公益法人:地盤工学会 主催

「地盤材料のボーリング・サンプリングと採

料の質評価法に関するシンポジウム」

において発表された

『ジオ式地盤サウンディング』(村山弘樹・石野拓宏)は、戸建て住宅地盤の液状化判定のために新しく開発された液状化可能性調査システム!


 2021年10月号 代表 福永慈二


 2021年10月8日、公益法人:地盤工学会主催の「地盤材料のボーリング・サンプリングと採取試料の質評価法に関するシンポジウム」において、わが「砂地盤液化判定システム研究会」のメンバーである村山弘樹さん・石野拓宏さんの論文『ジオ式地盤サウンディング』が正式発表され、各方面の大きな関心を呼んでいます。以下がその全文です(執筆者の発表許可を得ています)。


 <PDFのダウンロードはこちらです>


 質問のある方は下記へメールを。

   geo-s4@geo-stage-four.tokyo  


新しく開発した戸建て住宅のための「液状化可能性調査システム」に関する実証的論文発表の準備進む!   ~9・1防災記念日にあたって~


            2021年9月号 代表 福永慈二


 9月1日は、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなんで、防災記念日とされています。この関東大震災では、190万人が被災、10万5,000人あまりが死亡あるいは行方不明になったと推定されています(犠牲者のほとんどは東京と神奈川が占めている)。建物被害は全壊が約10万9,000棟、全焼が約21万2,000棟。東京下町の火災被害が広く知られていますが、被害の中心は震源断層のあった神奈川県内で、振動による建物の倒壊のほか、液状化による地盤沈下、崖崩れ、津波による被害が至る所で発生しています。9・1関東大震災は、2011年3月11日の東日本大震災と共に、日本人にとって、忘れることのできない災害であり、記念の日です。

 こうした記念日にあたり、当社も参加している「砂地盤液状化判定システム研究会」(液化研)のメンバーが、その発表を準備している≪戸建て住宅のための「液状化可能性調査システム」に関する実証的論文≫について、簡単な報告をしておきたいと思います。この論文は、コロナ禍で茨城稲敷実験場の使用が思うに任せない中、大変な苦労を味わいながらのまとめとなりました。それでも、本業を貫徹しながら、コロナ緊急事態宣言解除の間隙をぬって、必要な実験を積み重ね、「苦労と努力を怠らなければ、必ず進歩することができる」との教えの通り、ようやく最終段階にこぎつけました。

 なお、論文全文は来月度、このホーム・ページ上に正式に発表する予定です。


 現在、「砂地盤の液状化判定」のための調査は、ボーリング地質調査に伴う標準貫入試験用サンプラーで所定の深度から砂試料を採取していますが、新しい「ジオ式液状化調査システム」(略称:G式SWS)は、従来、不可能とされたスウェーデン式サウンディング試験機を使用しての規定量の砂試料採取と正確な自然水位の測定の課題を解決しました。この方法は、半自動スウェーデン式サウンディング試験機を使用するため、機械ボーリンに比べ、調査器具が小型かつ軽量、低騒音であり、既存建物がある狭所現場でも調査可能となります。また、比較的簡便かつ安価である等の利点があり、今後、戸建て住宅の液状化調査に活用が期待されるものです。 

 この「G式SWS」開発の出発点は、2011年3月11日に発生した東日本大震災にありました。東日本大地震は、東北太平洋沿岸地域を中心に各地に非常に大きな地震津波災害をもたらしました。 また、この地震による砂地盤の液状化被害は、広く東北~関東の大河川沿いの地域 (新旧河道を含む沖積平野部)や東京湾岸地域など比較的新しい埋め立て地域で集中的に発生し、戸建て住宅と生活インフラに大きな被害を与えたことは、記憶に新しい所です。 

 私たちは、永らく半自動スウェーデン式サウンディング試験機を使用する砂試料採取を研究してきました。とりわけ3.11 地震以後、SWS調査の際に規定量以上の砂試料を採取し、液状化の判定に供するため、何度にもわたって野外実証実験を試みてきました。2012年8月~9月には千葉県浦安市運動公園で行われたSWS機による砂試料採取公開一斉試験に参加し、この方式の有効性を確認し、「G式SWS」としての調査方法を基本的に確立しました。 更に、2020年10月、東京都葛飾区の指名により、「ジオ式液状化調査の実証試験」が同区内で実施され、機械ボーリングによる液状化調査と同等、それ以上の成果を得ることが実証されました。 

 この「ジオ式地盤サウンディングシステム」は、戸建て住宅の液状化の可能性判定を行う上で必要な3つの課題を解決しています。大まかに言えば、第1に、試料採取の専用孔を作成し、「試料採取用サンプ ラー」の打撃貫入によって、所定量の砂試料を採取することに成功し、第2に、試料採取のための自立した試験孔を形成することに成功し、 第3に、簡単な 水位測定装置と水位測定管を組み合わせたジオ式水位測定方法により、正確な自然水位の測定に成功した、ということです。

 しかも、この新しいシステムに拠れば、調査人員・現場技術者1人でも正確な作業が 可能であり、したがって調査費用も比較的低廉な価格で提供することができます。 

 この調査方式は、まだまだ改善すべき点もいくつか考えられますが、今後、多くの実践家の検証と協力を得て、近い将来に想定されている巨大地震の発生に備え、戸建て住宅の簡易な液状化調査方法として、広く活用されることが期待されます。 

 いずれにせよ、こうした「液状化可能性調査システム」に関する実証的論文が、社会的に認められ、広く世に広まれば、液状化に悩む多くの方々の負担を軽減し、地震大国日本に住む国民の安心・安全のために、大きな貢献を果たすことができます。また、そこに、当社、当液化研の果たすべき使命もあると考え、引き続き、新たな液状化対策工法の開発と確立目指して奮闘していく決意です。 どうか、今後ともよろしくお願い申し上げます。



      


 

東京23区の地質構造と液状化について

~産業技術総合研究所の研究チーム発表~

                 

             2021年7月号 代表 福永慈二


 2021年6月25日付朝日新聞「教育―科学」欄に、産業技術総合研究所の研究チームが、東京23区地下の地盤構造を立体的に表した「3次元地質地盤図」を公開した、との記事が掲載されました。

  その記事は、「都心の地下 〝埋没谷〟の見える化」により、「泥が埋めた軟弱地盤 揺れや液状化に注意」が促されるとし、更に「防災意識を高めて欲しい」と呼び掛けています。 

 【3次元地質地盤図は「産業技術総合研究所」のサイトで公

   開されています】

 産総研の研究チームによると、東京23区は、『氷期だった約2万年前、海面は現在より100㍍以上低かったとされる。 現在の葛飾区や江戸川区、江東区といった23区の東側の地域は、川の流れで削られて深い谷ができた。その後、1万年前ごろから地球は温

暖になって海面が上昇、こうした谷に上流から軟らかい泥が流れ込んだ。谷を軟らかい泥が埋めた地層は「埋没谷」と呼ばれ、地震の揺れが大きくなりやすい。 2011年の東日本大震災では、湾岸地域を中心に地盤が液状化し、上下水道や建物が被害を受ける例が相次いだ。・・・また、世田谷区や渋谷区など23区西部でも、地下に埋没谷があることが見えてきた。山の手は地盤が固いとされてきた武蔵野台地が広がるが、1万年前の氷期に削られた埋没谷があり、詳細に可視化された。渋谷区の代々木から港区の高輪にかけて長さ約10㌔、幅3〜4㌔ の埋没谷を確認。世田谷区

の多摩川北岸の地下にも長さ約10㌔、幅1.5~3㌔ の埋没谷が見

えた』とのことです。

 今回のこの「地質地盤図」により、東京23区の地盤の全体像が明らかになり、液状化の危険が至る所に潜んでいることが、あらためて鮮明になりました。勿論、これによって個々の住宅の地盤状況が明確になったわけではありません。しかし、このような研究結果の公開を含め、「液状化ハザードマップ」の発表など、最近になってようやく「液状化問題」が注視され、対策を求める呼びかけが各分野からなされるようになって来ました。こうした動きは、戸建て住宅の液状化地盤判定と柱状ドレーン対策を専門とする私たちにとって、非常に喜ばしく、頼もしい限りです。

 私たちは、戸建て住宅の液状化対策をより広く普及させるべく 「より正確に、より簡易に、より安価に」を目指し、新しい液状化判定システムとドレーン工法の開発・改善を追求し続けています。周知のような長期に亘るコロナ禍により、大変多くの制約を受け、開発事業は必ずしも当初の予定通りに進んでいるわけではありません。がしかし、私達はこのような災厄に決して屈することなく、あくまでも理想を高く掲げ、前へ前へと突き進んでいく覚悟です。



『逗子斜面崩落死亡 損賠訴訟初弁論』(2021年5月22日付東京新聞)の記事に注目しよう!

                  

           2021年6月号 代表 福永慈二


 記事は次のように伝えています。

【 管理会社・住人側 争う姿勢

 神奈川県逗子市で昨年二月、マンション敷地内の斜面が崩れ、県立高校の女子生徒-当時(18)-が土砂に埋もれて死亡した事故で、 遺族がマンション管理会社や住民でつくる管理組合などに損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が二十一日、横浜地裁であった。いずれの被告も請求棄却を求め、争う姿勢を示した。 

 訴状によると、マンション建築前の専門業者による地質調査で斜面は「落石を防ぐ対策を施すことが望ましい」と指摘され、管理会社側は崩落を予見できたのに、適切な安全対策を取らなかったと主張。斜面を所有する住民にも賠償責任があるとしている。

原告の代理人弁護士によると、組合は管理会社に管理業務を委託し、過失はないと主張したという。管理会社は具体的な主張は次回以降に行うとした。 

「崩落は人災」 女子生徒の訴え

「娘は死なずに済んだ。崩落は人災。なぜ起きたのかを徹底的に追及したい」。亡くなった女子生徒 の父親(55)は二十一日、裁判後に横浜市内で記者会見を開いて訴えた。 

 生徒は大学進学が決まり、夢だった教師への道を歩み始めたところだった。事故当日は友人と出掛けるため家を出て、歩いていた時に七十トン近い土砂に巻き込まれた。 

 事故前日には管理会社がマンションの斜面で亀裂を発見しながら、県に伝えていなかった。「崩落を予見できる機会がありながら、 誰一人危険を察知できなかったことに怒りを感じる」と胸中を明かす。 

 今も事故現場に足を運べない。 本当はそっとしておいてほしい。それでも、裁判に踏み切った理由について「法律が娘の無念を晴らしてほしい。娘は二度と帰ってこない。 だから、真実がほしい」と説明した。 (米田怜央) 】


 今回のような悲劇的事件は防ぐことはできなかったのでしょうか。防ぐことはできました。今回の場合は、特に「事故前日には斜面の亀裂は発見されていた」のであり、きちんと対策・対処をしておれば、事故は防ぐことができたはずです。緊急対策・対処を怠った県と市・管理会社・管理組合の責任は免れ得ません。ただ、言うまでもないことですが、この問題の真実は「裁判や法律」にあるのではありません。如何にしてこうした崩落事故を防ぐのか、如何に安心・安全な住環境を作り上げるのか、にこそ真実があります。

 この事故をきっかけに、神奈川県の各地で斜面点検が行われ、その結果多くの地域で斜面崩落の危険が指摘されました。今後も同じような事故の起こる可能性があることが判明しており、その対策が強く求められています。

 かつて私たちは相模原のある地域の戸建て住宅の住民の要請で、ジオ・フロント式サウンディング地盤調査と地下レーダー調査を組み合わせたコラボ調査による擁壁斜面調査を行ったことがあります。その結果、かなり正確に擁壁斜面内部の地盤状況を把握することができ、その結果を踏まえた対策方法を明確にすることができ、擁壁斜面下に住んでおられる住民から「これで安心して住める」との高評価を頂いたことがあります。こうした擁壁斜面調査は、正確に、安全に、短期間に、比較的安い費用で行うことができます。

 ここでも、すべての自然災害について言われるように、「備えあれば憂いなし」なのです。今はどこでも「予算不足」が云々されています。しかし、だからといって何も手を打たないことが許されるわけではありません。様々な工夫と協力とコラボ調査をもって、正確な地盤調査を実施し、斜面崩落対策を推し進めることがぜひとも必要です。



『東日本大震災における「津波」以外の最大被害は「地盤崩落」であった』(2021年4月11日付産経新聞)という報道に注目しよう!

                  

            2021年5月号  代表 福永慈二


 2021年4月11日付産経新聞の『東日本大震災・10年』の欄に次のような記事が掲載されています。

『東日本大震災で津波以外に最も大きな被害を受けたのが、傾斜地に造成された宅地「大規模盛土造成地」だった。 国土交通省は昨年、全てに危険性があるわけではないとしながら、全国に5万1306カ所あると公表。激甚化する災害で地盤災害は頻発しており、専門家は地盤を知ることの重要性を指摘する。… 同地区(仙台市青葉地区)は昭和48年、東北自動車道仙台宮城インターチェンジの西隣にある蕃山(356m) の北側斜面に造成された。住宅は傾斜地 の「擁壁」に囲まれた土台の上に段々に建てられ…ていた。震災の激しく長い揺れによって、造成前の地盤「地山」と、その上の「盛土」の境界面で、水が媒介した 「滑動崩落」という地滑りが発生。宅地約2・5㌶が 深さ約8mの盛土ごと最大約2・5m滑り落ちた。造成地内の水抜きが不十分だったのが原因とみられ、土台を失った住宅は1 階部分が壊れ、大きく傾いた』 と。

こうした造成地の崩落、擁壁崩れ、山斜面崩落は、東日本大震災以後の熊本地震、神奈川県内の擁壁事故、北海道胆振地震において、至る所で起きています。こうした崩落について、産経の記事は「滑動崩落」という地滑りが原因としていますが、そうした「滑動崩落」「地滑り」の根本原因として作用しているものこそ地盤液状化に他なりません。

『北海道WEBニュース特集』(2020年9月3日)は、北海道大学の山田孝教授の調査活動と北海道厚真町の大規模の山崩れの根本原因について、次のように報じています。

『緩い斜面でも土砂崩れ頻発 土砂災害で36人が犠牲になった厚真町では、砂防工学が専門で北海道大学広域複合災害研究センター長を務める山田孝教授が災害現場の調査を続けてきました。今回の土砂災害の特徴について、山田教授は本来、被害が起きないような緩い斜面でも土砂災害が発生した点だと話します。

「ここは傾斜が13度という非常に緩い斜面なのに崩れた場所だ。従来の危険区域の設定基準から見ると、普通は崩れないと判断します」 

想定外の土砂災害はなぜ起きたか  緩い斜面が崩れた理由は何なのか?これまでは地震の前の大雨で地盤が緩んでいたことが原因ではないかとの見方もありました。しかし、山田さんたちは地面の下にある「土」が鍵を握っていたと見ています。

「こういう細かい土(火山灰)は保水性が高い。振動を与えられると急激にその強度が弱くなって動きやすくなる、滑りやすくなるというのが今回の土砂災害のポイントだと思う」

山田教授のグループでは火山の噴火で積もったこの土が揺れで液体状になったため、思わぬ場所で災害が発生したと考えています』と。

 山田孝教授の指摘通り、厚真の大規模な山斜面の崩落は「火山の噴火で積もったこの土が揺れて液体状になったため」と考えるのが正しいのです(揺れには第1波の揺れと第2波の揺れの2種類がある)。

 産経新聞と北海道WEBニュースは地盤崩落の危険が日本の至る所に存在していることを報じています。正確で、簡易で、安価な液状化の調査方法の確立と調査の実施が強く求められる所以がここにあります。

 ところで、4月25日付朝日新聞は、『熊本 新耐震でも倒壊の家』との見出しで、次のように伝えています。

『日本建築学会の調査では、益城町で倒壊・崩壊した木造住宅は計297棟。1981年に新耐震基準が導入されてから、2000 年に接合部の真や壁の配置などが厳格化された現行基準になるまでに建てられた76棟すべてで接合部の不備が確認されたという。工務店やリフォーム会社などでつくる「日本木造住宅耐震補強事業者協同組合」(木耐協、東京)は、「地震対策は家の耐震性を調べることから始まる」とし、専門家による「耐震診断」の必要性を強調する』と。

 ここで皆さんにぜひ再考熟考していただきたいのは、果たして家の倒壊防止は上物の「耐震強化」だけで万全なのか、ということです。先に述べたように、地盤の液状化もまた家屋倒壊の大きな要因となっているにもかかわらず、この方面に対する注目・注視はまだまだ弱く、これについては繰り返し警鐘乱打する必要がある、というのが実情です。

 しかしながら、最近の行政の動きや新聞報道を見る限り、こうした方面に対する関心が徐々に高まりつつあるのも事実です。今も、日本のどこかで、毎日のように小さな地震が起こっており、そうした大自然が発する警告に耳を傾け、必要な対策を準備していくことが、いよいよ大事になって来ています。まさに「備えあれば憂いなし」です。当社の「ジオ・フロント式サウンディング液状化調査」と「柱状ドレーン式液状化対策」について、ぜひご検討下さるよう、お願いします。


「備えあれば憂いなし」―これこそが地震対策の要!

              

            2021年4月号 代表・福永慈二

 政府の地震調査委員会は、2021年3月26日、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに襲われる確率を示した地図を公表しました。

 それは地震の専門家が集まる政府の地震調査委員会が公表した『地震動予測地図』で、「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる確率」を色別に示したものです。

(地図は、防災科学技術研究所ホームページ「地震ハザードステーショ 

 ン」で見られます)

 最も高い確率を示すのは太平洋岸地域では今後30年以内に26パーセント以上、100年に1回程度以上の頻度で震度6弱以上の揺れに見舞われることを示しています。南海トラフ巨大地震や千島海溝沿いの巨大地震の発生が懸念されている東海~四国と北海道南東部、また房総沖の巨大地震、首都直下地震の発生が懸念されている首都圏などで、特に確率が高い地域が多くなっています。特に、茨城県の水戸市役所周辺では81パーセント、北海道の根室市根室振興局周辺では80パーセント、高知県の高知市役所辺と徳島県の徳島市役所周辺では75パーセントと非常に高い確率になっています。

 地震調査委員会委員長・東京大学の平田直名誉教授は、「多くの都市部は揺れが強くなりやすい平野部にあり、家具の固定をするなど改めて備えを確認してほしい」と呼びかけています。

 ところで、地震対策の要は、国も自治体も個人も「備えあれば憂いなし」ということに尽きます。勿論備えていても、完全にリスク回避が可能ということではありませんが、多くの場合、事前の準備が被害を最小限に食い止めています。なし得る最大の「準備への努力」が求められます。

 私たちは今、当社も参加している『砂地盤液化判定システム研究会』(液化研)として、稲敷市結佐の実験場で「ジオ・フロント式サウンディング」による試料採取システムの改善・改良を目指し、鋭意実験を繰り返しています。貫入試験機と判定システムの改良改善、比抵抗測定と水位観測の方法に関する実験、地下レーダーによる実証実験、柱状ドレーン工法の実証実験など、一歩一歩着実に前進させています。

 それにしても、こうした実験は「失敗」の連続であり、簡単に成果が得られることはありません。忍耐の連続であり、息の長い戦いになります。しかし、そうした中で時として得られる望外の「成果」はまさに光明に満ちた希望そのものであり、私たちを大いに励ましてくれます。   

 2021年3月14日付『東京新聞』に次のような記事が載っています。

 『地域の再エネ発電所が軌道に乗るまでには幾多の壁があった。 会津電力のある会津地方は、二㍍以上の雪が積もる豪雪地帯。当初は「冬の間は発電できなくなる」との固定観念から銀行やパネル製造会社が協力を渋った。居酒屋経営をやめて同社に参画した折笠哲也さん (現常務) は実証設備を手作りし、ひと冬の間、観察を続けた。その結果、太陽光パネルの設置角度を三○度にすれば、発電を妨げる雪が滑り落ちることを突き止めた。「豪雪地帯でもパネルの角度次第で発電できることを証明したことで銀行などが協力してくれるよ うになった」と振り返る』と。

 最良の設置角度を発見するために、実証設備を手作りし、一冬の間ずっと休みなく観察し続け、ついに「30度」という最適の角度を発見しています。こうした地道な実証実験の積み重ねによって問題が解決され、新たな開発、発見が実現する、ということです。

 私達もまた、より良い・より安い・より簡単な工法で、戸建て住宅の液状化被害が防止できるようにとの目的を忘れることなく、皆さんの安心・安全を守るべく、引き続き実証実験を推し進めていく決意です。                      

最近実現された「東京都葛飾区によるジオ・フロント式液状化調査の実証実験試掘・検査の実施」「国交省による戸建て住宅の液状化危険度マップ作成呼びかけ」を突破口に、「事前対策」としての液状化調査・対策を着実に前進、発展させましょう。

~3・11東日本大震災10年目を迎えて~

     2021年4月号 代表・福永慈二


 3月11日は、各地に悲惨且つ残酷な爪痕をのこした震度7・東日本大震災から10年目にあたります。警察庁の2020年12月10日のまとめでは、死者1万5899人、行方不明者2527人、避難者約4万2千人(全国47都道府県938市区町村に散在)となっています。改めて3・11震災被害に遭われ、大切な命を奪われた皆様に心からなる哀悼のことばをおくります。

 3・11大震災ではまた、東北、関東、東京近郊の各地で激しい液状化が発生し、多くの家屋が倒壊したり、傾いたりという被害が生まれました。しかし、この10年、液状化対策、特に戸建て住宅の液状化対策は、そのための技術開発、実証実験等が不十分ということもあり、ほとんど進んでいないのが現状です。

 そうした中で、昨年12月末から今年の1月はじめにかけて、都内葛飾区立清和小学校敷地内で、葛飾区の立ち合いのもと「ジオ・フロント式液状化調査の実証試験」が行われ、更にジオ・フロント社から提出された報告書精査がなされ、その結果、2月1日に正式に検査完了・合格が確認されました。

 また、2021年2月8日には、国交省が戸建て住宅に特化した液状化危険度(5段階区分)マップの作成手法の素案を初めてまとめ、全国の自治体に作成を呼びかけました。

 この二つの出来事は、わが国における戸建て住宅液状化対策の格段の進歩を示すものとして、注目され、高く評価されるものです。

 私たち(当社および当社の参加する砂地盤液状化判定システム研究会)は、この間、ずっと、葛飾区によって実証試験に供された「ジオ・フロント式液状化調査方法」の改良、推奨、普及に力を入れて来ました。それ故、今度の検査合格については非常にうれしく思っているところです。そこで、今回の実証試験が持つ意味について説明しておきましょう。

 現在の戸建て住宅液状化調査方法には、二つのやり方があります。

 一つは、現在一般的に採用されている、ボーリング用機械を用いた調査方法です。この機械はかなりの大きさ・重さで、運搬には少なくとも小型トラックが必要で、機械の操作も2人がかりとなります。当然狭いところに入ることはできず、あまり使い勝手がよくありません。このボーリング用機械で穴を掘り、標準貫入試験サンプラーで砂試料を採取し、その砂の粒度分析、N値、水位などを総合的に判断し、液状化レベルの判定を行うものです。この調査方法の大きな問題点は、機械の使い勝手が悪いことです。

 もう一つは、私たちが推奨する、半自動スウエーデン式サウンディング機を用いた方法(ジオ・フロント式液状化調査方法)です。

 この機械は非常に小型で、小型自動車(ライトバン)による運搬が可能で、狭いところでも搬入ができ、一人でも十分操作が可能です。それ故、住宅用サラ地でも既存の戸建て住宅回りでも使用・調査が可能であり、まさに戸建て住宅に最適の調査方法なのです。

 具体的には、1本目試掘で砂地盤層の位置・水位を正確に把握し、直ぐ傍での2本目試掘(スウエーデン式サウンディング)で砂地盤層にジオ・フロント式二重管式サンプラー(特許)を挿入、砂試料を採取し、これを粒度分析にかけ、N値、水位などと合わせ、総合的に判断を下すものです。この調査方法の優れた点は、機材が軽便であり、操作は1人で十分可能なことです。

 ジオ・フロント式液状化調査方法の方は、検証結果が少ないということで、なかなか普及するに至っていませんでした。それが今回の葛飾区の実証試験、試掘検査によって、その簡易さ・正確さが証明され、それにより、今後この方式による戸建て住宅液状化調査が広く一般化していくものと期待されます。

 葛飾区がこうした実証試験を実施した背景には、葛飾区は3・11以後、熱心に液状化問題に取り組み、液状化調査に35万・対策工事に90万の援助制度を作っており、この分野では最先端を走っている公的機関だということがあります。それだけに、こうした実証試験の価値、意義、その重要性を良く理解されておられるのです。

 今回の葛飾区の認証により、ジオ・フロント式液状化調査方法の優れた点が確認され、戸建て住宅の液状化調査は、今後、安価にして正確な調査が行われることになっていくはずです。戸建て住宅をお持ちの皆さん、これから安心して住める戸建て住宅の建築を計画しておられる皆さんにとって、非常に心強い依り所になるものと確信します。

 勿論、私たちは現状に満足することなく、この方式の一層の改善・改良を目指し、茨城県稲敷市結佐・六角地域に実験場を確保し、様々な実験を行い、今も最善を尽くしています。

 それだけでなく、更に、結佐・六角の住民の皆さんのご協力のもと、戸建て住宅の液状化対策として最も優れていると思われる「柱状ドレーン工法」(コミヤ工事)による液状化対策の実証試験を行っています。この「柱状ドレーン工法」は、今後正式に公的・社会的認証を受けることができれば、わが国おける戸建て住宅の液状化対策の決定打となり、戸建て住宅の液状化対策は飛躍的に進展するはずです。

 その日が一日も早く訪れるよう、一所懸命努力しているところですが、とりあえず、まずは、多くの公的機関、会社、個人の皆さんが、「ジオ・フロント式液状化調査」を積極的お試しくださるよう、心からお願いする次第です。

ノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典、大村智、本庶佑、山中伸弥氏ら日本人科学者4氏が発した新型コロナウイルスの感染拡大に関する声明(1月8日)につい

              

           2021年2月号 代表・福永慈二


新型コロナウイルスの攻撃から身を守るべく、「手洗い・うがい・マ 

 スク着用・3密警戒」を厳守し、健康の維持に努めましょう。


 本庶佑京大特別教授ら日本人のノーベル医学生理学賞受賞者4氏が、1月8日、新型コロナ感染拡大で緊急事態宣言が再発令された状況を憂慮し、政府に対し「科学者の勧告の政策への反映」などを求める声明を発しました。その声明での要望事項の5項目とは― 


①医療機関と医療従事者への⽀援の拡充

②PCR検査能⼒の⼤幅な拡充と無症候感染者の隔離強化

③ワクチンや治療薬の迅速な審査・承認

④ワクチンや治療薬の開発原理を⽣み出す⽣命科学、その社会実装に  

 不可⽋な産学連携の⽀援強化

⑤科学者の勧告を政策に反映できる⻑期的展望に⽴った制度の確⽴


 という5項目です。特に③④については、テレビ取材に際し、「国際的な科学者、関連機関の共同・協力が不可欠である」ことを繰り返し、強調していました。 

 まことに要を得た、誰もが納得できる内容ばかりであり、ここに日本国民の良識の典型、総意があると言えるのではないでしょうか。

 現代日本の最高の知性が発したこの声明の重みには計り知れないものがあります。国民自身のコロナ対策(マスク・うがい・手洗い・3密回避など)は当然の事としても、日本政府がこの提言を無視し、軽視し、必要な手を打たなければ、新型コロナウイルス感染症拡大の阻止、その災害被害の早期克服・解決は到底のぞめないでしょう。


私たちの社としてのモットーは、

(1)常に社会的使命感に徹して仕事をする。 

(2)常に科学的態度に徹して仕事をする。

(3)常に協力・共同の精神をもって仕事をする。  

というものですが、4氏の声明はこの私たちのモットーとも完全に合致しており、改めて私たちも自らに確信をもつことができました。

 私たちは『コラム―科学者の言葉』でも、一貫して日本のノーベル賞受賞者の言葉を取り上げ、振り返り、そこから多くの教訓を学んで来ました。ノーベル賞受賞の科学者たちは皆、科学者として立派であるだけでなく、謙虚であり、人間性も豊かで気品があり、利己心が無く、公的精神に富み、国際的教養人としても実に優秀な方々ばかりであり、私たちの誇りであります。あらためて、こうした日本を代表する科学者の発した声明から多くのことを学び、己と事業の成長と発展の糧としていくことを固く誓うものです。

 皆さん、新型コロナウイルス禍の災害に屈することなく、ノーベル賞受賞者4氏の呼びかけに呼応し、その精神を自らのものとし、自分の置かれた場で、自らがなし得る最大の努力と行動を繰り広げていきましょう。



2021年度も社会的使命・科学的態度・協力

協同の精神を高く掲げて前進します

~新しい年を迎えて~

                                                                                  

            2021年1月号  代表 福永慈二 

 

 2020年はコロナに開けコロナに暮れ、日本のみならず全世界が未曾有の不安と危機に襲われ、それは今なお収束の見通しがたっていません。いずれ安心して使えるワクチン・治療薬が生まれ、人類はこの危機を乗り越え、新たな文明的社会を創造すべく、さらに前進していくことでしょう。

 当社もコロナ禍に苦しめられましたが、昨年末には、他社との共同協力により、葛飾区における「ジオ・フロント式液状化調査」の実証的試掘に着手することができ、稲敷市結佐における「新方式による液状化調査」の開発及び「柱状式ドレーン工法による液状化対策」の自然実験にも着手することができました。これらは困難な中での大きな前進であり、引き続きその成功・完成のために全力を尽くしていきたいと決意を新たにしているところです。

 さて、こうした状況を踏まえ、昨年度を振り返り、今年度を展望するとき、私たちは私たちの「ジオ・ステージ・フォーのモットー」について、その重要性にあらためて思いを致さざるを得ません。それは次の「三つのモットー」です。


(1)常に社会的使命感に徹して仕事をする。

   日本と世界の至る所で地震・豪雨等による大災害が発生し、多く   

   の命が奪われている。わが企業は、地質事業を通じて、こうした

   自然災害と闘い、人々を不安と恐怖から解放することを社会的使

   命とする。

【いま世界は「地震・豪雨等による大災害」だけでなく、「新型コロナという大災害」にも見舞われています。こうした事態に直面した今こそ、政治・経済・文化あらゆる分野の人々、特にその分野の専門家が自らの社会的使命に思いを致し、成しうる最大の力を発揮し、それぞれの分野で根本的解決を目指して奮闘することが求められています。】

(2)常に科学的態度に徹して仕事をする。

   大自然は厳しく徹底的に真実・真理を検証する。故に、大自然を

   相手にするわれわれの仕事は、科学的態度に貫かれたものでなく

   てはならず、絶対に正確・安全・迅速に貫かれたものでなけれ

   ならない。

【新型コロナ対処において、政治・経済・文化のあらゆる分野で、今特に求められているのは、一にも二にも「科学的態度に徹せよ」ということではないでしょうか。政治・企業活動の分野においても、その他の分野においても、「科学的態度」が厳しく求められており、その軽視に対しては容赦ない批判が浴びせられています。大事なことはまず「科学的正確さ」を厳守し、それによって「人々の安全」を守り、その上で「迅速」を追求することでしょう。間違っても「迅速」を優先的に追い求め、「科学的正確さ」「人々の安全」を後回しにしてはなりません。現実を見れば明らかな通り、そんなことをすれば絶対に失敗します。】

(3)常に協力・共同の精神をもって仕事をする。  

   人間は一人では何もできない。わが企業は、あらゆる地質関連業

   者・研究者と協力・共同し、その英知を結合・結集し、巨大なエ

   ネルギーにまとめ上げ、より大きく広く社会的貢献を果たすこ

   を目指す。 

【新型コロナという大災害に直面した今、改めて「協力・共同の精神」が見直されています。個々バラバラに私的利益のみを最優先している限り、問題は何一つ解決されず、事態は悪化の一途をたどるばかりです。人々の生活も生命の安全も、もし全社会・全世界が一致「協力・共同」するならば、間違いなく安全に守り抜かれるでしょう。ワクチンも治療薬も、もし全世界の医療機関が一致結束して協力・共同するなら、もっと速やかに発明され完成されることでしょう。しかして、今やいつまでもそうした「もし」という言葉を安易に使い続けることが許されなくなっているのではないでしょうか。そう思わざるを得ません。】


 新しい2021年を迎えるにあたり、私たちは「三つのモットー」を改めて再確認し、これを高く掲げ、忠実に守りぬいていく決意です。本年もどうぞよろしくお願い致します。



稲敷市東部の結佐・六角地域における「柱状ドレーン自然実証実験」について

              2020年12月号  代表 福永慈二

               

 この11月、コロナ禍で延び延びになっていた「砂地盤液化判定システム研究会」(当社も参画)を中心とする、茨城県稲敷市の六角・結佐地域における液状化調査・対策工法に関する実証実験が、いよいよ著につきました。今月号では、特に、コミヤ工事会社が中心となって行う「柱状ドレーンによる液状化対策工法」に関する実証実験について、その大要を報告致します。

 まず最初に、あらためて、柱状ドレーン工法とはどのようなものかを説明しておきます。「柱状ドレーン」とは液体・水分排出用の管のことであり、液状化対策に使用される柱状ドレーンは、径10㎝程の網目構造の管であり、芯部は水が通るように中空になっています。管の周囲はフィルターによって覆われていて、地中の水がフィルターと網目構造部を通して管中に染み込み、管芯部の中空部を通って地表に噴出するようになっています。この柱状ドレーンを戸建ての新築家屋、或いは既存家屋の周囲に打ち込んで置くことにより、大地震時に地盤が液状化を起こした場合、水抜きが行われ、たとえ地盤沈下が起こっても「均等沈下」となり、家が傾くことが防止されます。

 今回のこの実証実験の特徴は次の点にあります。


(1)自然実証実験であること。

 柱状ドレーン工法が理論的・実験的には有効であることが分かっているにもかかわらず、実際に戸建て住宅の地震対策工法として採用が進まない理由はただ一つ、本格的な実証実験が行われていないことです。この本格的な実証実験の方法としては、次の二つの方法があります。

 一つは大規模な実験装置を使って、人工的に地震を起こし、柱状ドレーン材打設の効果を確認する方法です。この方法には、3.11東日本大震災発生の翌年、2012年3月、国土交通省国土技術政策総合研究所がつくば市にある建設基礎・地盤実験棟で実施した「柱状ドレーンによる液状化対策効果の実物振動台実験」があります。実験方法は、大型せん断土槽振動台(長さ10m、深さ5m、幅3.6m)の槽内に土を入れ、一定の厚さの粘性土層(非液状化層)と種々の密度に調整された砂質土層(液状化層)を計画的に敷き詰めた人工地盤を作成し、各種の計測センサーを埋設し、振動台を加振させ、発生する液状化状況を計測・観察するというものです。この実験では、振動台上に設置された柱状ドレーンパイプからの噴砂と噴水(排水)が確認され、また、振動台表面に置かれた柱状ドレーンを打設した模型家屋の傾斜倒壊はなく、その水抜き効果が実証され、一定の基礎的成果が得られました。しかし、現段階では、このような基礎的実験を行うだけでも大規模な実験装置が必要であり、莫大な費用がかかってしまいます。

 当研究会は、将来的には新しい液状化理論に基づいてもっと簡易な方法でこの実証実験が行えるよう準備を進めていますが、いずれにせよ、現段階では先に紹介したような人工実験を簡単に採用することはできません。

 もう一つは、今回私たちが採用する自然実証実験です。これは自然に起こる地震を利用した実験です。この場合、地震がいつ起こるかは予測出来きませんから、実験期間は確定できず、息の長い実験が必要になります。しかし、それほど大きくはない地震が頻繁に発生する茨城県などの地域であれば、柱状ドレーンの水抜きがどのように行われるか、多くのデーターが得られるはずです。そして、不幸にも大きな地震が発生した時、あらかじめ柱状ドレーンを打設した家屋があれば、決定的な実証結果が得られます。そういう意味で、稲敷の六角・結佐地域は、自然実証実験を行う地としては最適の地です。もし、この実証実験が成功すれば、この地域の方々も安心して生活することが出来るようになるわけで、そういう意味でこれは価値ある実験になる、と私たちは考えています。


(2)戸建て住宅対象の実験であること。

 残念ながら、新築・既存戸建て住宅の液状化対策としての柱状ドレーンを使った本格的計画的な実証実験は皆無と言ってよいのが現状です。特に既存戸建て住宅の場合、狭所では、柱状ドレーンを打ち込むことが難しい場合が多いのです。今回の実験では、杭の施工業者であるコミヤ工事会社が特別仕様のコミヤ式打ち込み機(特許取得)を使って、既存住宅の周囲に一定の間隔・一定の深度で柱状ドレーンを打ち込みますから、非常に貴重なデーターが得られるはずです。


(3)「沖積液状化危険地盤上の実験」「一定の荷重(家一軒分に相当する平方メートル当たりの荷重)を有する物件の実験」「独立した戸建て住宅の実験」の3様態について実験が行われること。

 液状化地盤調査を詳しく行った上で、平地及び荷重物件では、幾つかの間隔・深度で柱状ドレーンを縦に打ち込む、或いは斜め、横に打ち込む等、様々な角度からの実験を行います。また、既存家屋については9年前の3.11で実際に液状化によって傾斜させられた2軒の住居(ジャッキアップによる傾斜是正済み)を実証実験の対象としています。


 以上が、今回の「柱状ドレーン工法」に関する実証実験の大まかな内容です。これによってかなり詳しい、広範にわたる実験結果が得られるものと確信します。


 現在、国内で、戸建て住宅に関する液状化対策で最も進んだ対策をとっているのは東京都葛飾区で、地盤調査費用として35万円、液状化対策工事費用として90万円(工事費の2分の1程度)の助成制度が確立されています。だが、残念ながら、この素晴らしい助成制度もそれほど活用されていないのが実情です。と言うのも、地盤調査・液状化対策工事助成の対象が「新築・建て替え住宅」に限られているのです。既存戸建て住宅では、液状化の可能性があっても実際上、液状化対策工事の施工が困難というのが現状です。地盤改良ができる敷地面積が確保できても、施工機械が大きく搬入困難であったり、地盤改良工法の内の柱状改良杭の場合、液状化層の深度によって費用が決まり、液状化層が深い場合は工事費用がかなり高くなり、費用対効果を考慮した場合、どうしても躊躇が生まれてしまうのです。元々、この問題は「制度上」の問題ではなく、「工法上」の問題なのです。

 今回の実験―「砂地盤液化判定システム研究会」が取り組んでいる稲敷の六角・結佐液状化地域における地盤の液状化に関する研究と実験、柱状ドレーン工法に関する基礎的実証実験が成功すれば、戸建て住宅の地盤調査・液状化対策は飛躍的に進み、大きな安心を生み出すことができるはずです。ぜひご注目、ご期待下さい。

 


茨城県稲敷市東部の結佐・六角地域における液状化調査・柱状ドレーン工法に関する実証実験の開始にあたって          

              2020年11月号  代表 福永慈二


 この10月より、いよいよ、砂地盤液状化判定システム研究会を中心とする、茨城県稲敷市東部の結佐・六角地域における液状化調査・対策工法に関する実証実験がスタートしました。 

 新型コロナの影響で多少の遅れがありましたが、ご理解ある現地の皆さんのご協力により、準備は完全に整い、10月26日には水準点の決定、実験場(300坪)の正確な構図作りが行われ、柱状ドレーン工法実証実験に関する下調べも実施されました。

 この実証実験の内容の詳細な報告は次回12月号において行うこととし、今月号では稲敷市及び六角・結佐地域について説明・紹介したいと思います。【地図参照】

 霞ヶ浦の南岸に接する稲敷市は、2005年(平成17年)3月22日、江戸崎町・新利根町・東町・桜川村が合併して市になっています。関東平野の真ん中に位置し、面積は205.8平方キロ、人口は42810(平成27年現在)で、主要産業は農業。市長は筧信太郎氏(かけひしんたろう・52歳・日大生産工学部卒・2018年11月就任・1期目)で、その政治信条は「未来のために今できることを、誠実に、着実に実行する」というものです。

 私たちの実験場のある稲敷市の東部・南部は利根川沿いにあり、昔から大洪水に何度も見舞われ、大きな被害を出して来ました。が、現在は堤防改修工事により洪水被害はほとんど無くなっています。  

 しかし、この地域、特に稲敷の東部・南部は昔から何度も地震被害にも見舞われてきました。以下はこの地域の近年の主だった地震発生・被害の記録です。


昭和62.12.17(1987) 千葉県東方沖 6.7 4 負傷者24、家屋の一部破損 

          1,252

平成12.07.21(2000) 茨城県沖 6.4 5弱  屋根瓦の落下2

平成14.02.12(2002) 茨城県沖 5.7 5弱  負傷1、建物被害12

平成14.06.14(2002) 茨城県南部 4.9 4  負傷1、建物被害8、塀倒壊5

平成15.11.15(2003) 茨城県沖 5.8 4  負傷1

平成16.10.06(2004) 茨城県南部 5.7 5弱  被害なし

平成17.02.16(2005) 茨城県南部 5.4 5弱  負傷7

平成17.04.11(2005) 千葉県北東部 6.1 5強  被害なし

平成17.08.16(2005) 宮城県沖 7.2 5弱  被害なし

平成17.10.19(2005) 茨城県沖 6.3 5弱  負傷1

平成23.03.11(2011)宮城県東方沖 9.0 6強 死者・行方不明25、負傷

          712、全壊家屋2,630、半壊家屋24,368、一部破損

          187,212

     (出典:「災害の記録」「消防防災年報」 茨城県消防防災課、「茨城の気

     象百年」 水戸地方気象台)


 この記録の中で、昭和62.12.17(1987年) の千葉県東方沖地震と、平成23.03.11(2011年)の宮城県東方沖で発生した東日本大震災とは、特に六角・結佐など東部地域に大きな被害を与えています。千葉県東方沖・宮城県東方沖一帯は地震の巣であり、現在も、小さな地震が頻繁に発生しています。

 ところで、この地域は、地質的にも、地震被害が生まれやすい構造となっていることがよく知られています。

 霞ヶ浦周辺の地質形成の歴史を振り返って見てみましょう。

 霞ヶ浦周辺は、8万年前以前に続いていた間氷期(温暖気候期)には海面が上昇し、現在の霞ヶ浦・利根川・鹿島灘・銚子沖は一続きの海でした。当時、稲敷西部の高台は陸でしたが、霞ヶ浦に接している北部、利根川沿いの東部・南部は完全に海の底でした。その後、約8万年前頃から2万年前頃までは氷期(寒冷気候期)となり、今度は海面低下が起こり、その間多少の上下変動を経て、1万年前頃には現在のような地勢になりました(氷期の最盛期であった2万年前頃には海水面は現在のそれより100メートルも低く、その後上昇し、現在の海面に落ち着いたようです)。

 また、約8万年前頃~1万年前頃にかけて、富士・箱根・赤城・榛名・浅間の噴火活動が活発となり、関東一円に大量の火山灰を降らせ、関東ローム層と呼ばれる赤土となり、それが侵食されて残った地帯が現在の高台となりました。(稲敷市立歴史民俗資料館発行『古代の稲敷』参照)

 こうした歴史を見れば明らかな通り、霞ヶ浦の南側沿岸部に接する稲敷北部、そして利根川沿いの稲敷東部・南部は元々低地で、湿地や沼地が多く、地盤的には柔らかい特性をもっています。それ故、当然のこととして利根川の蛇行は激しく、今でこそ緩やかなカーブを描いて流れている利根川も至る所で曲がり曲がりくねっていました。利根川沿いには「逆川」とかいて「グル川」(曲がり川の意)と呼ぶ地域があちこちにありますが、それほど蛇行場所が各所にあったということを物語っています。当然至る所で堤防決壊、大洪水が発生し、大きな被害が地域を襲いました。それが地元の住民を如何に苦しめ、悩ませて来たか。至るところに祀られている「水神社」の存在がその証となっています。

 しかしながら、この地域一帯の農民衆は不屈であり、江戸時代から明治、大正、昭和にかけて、洪水被害と闘い、決してあきらめることなく、こうした沼地・湿地・川沿い地を干拓し、田畑に変え、土地改良を積極的に行い、素晴らしい農地を作り上げて来ました。本当に頭が下がります。

 それにしても、地震発生源である千葉県東方沖・宮城県東方沖に近く、かつては沼地・湿地・砂地が多かった稲敷東部・南部は、どうしても地震被害を受け易いということになっています。今は普通の田んぼ・住居になっている地域も、昔の蛇行していた利根川の河原地や沼地・湿地を埋め立てたところが多く、六角・結佐はまさにそのような地域で、大きな地震が起こると液状化が発生し、家屋の不均等沈下が引き起こされ、家屋を傾斜・倒壊させられ、道路・水道などのインフラがずたずたに破壊されてきました。

 ある意味、これは避けられない「宿命」です。しかし、稲敷市とこの地域の方々は、そんな「宿命」にただ手を拱いているのではなく、常に様々な対策を研究し、追求して来ています。「備えあれば憂い無し」と。しかし、なかなか決定打となる対策法が見つからないというのが現状です。

 わが社も参加している砂地盤液状化判定システム研究会は、液状化調査・対策工法に関する実証実験場として、ここが最適地と判断し、決定しました。本地域の多くの方々は、今回の私たちの実証実験について、本当によく理解して下さり、積極的に協力して下さっています。私たちはこの実証実験を絶対に成功させ、最良の液状化調査法、および確固たる柱状ドレーン工法を完成させ、この地域の皆さん、そして全国の液状化に悩んでおられるすべての皆さんのお役に立てるよう、引き続き頑張っていく決意です。




「日本地図の父母」―伊能忠敬と高橋至時の偉大な生涯から学ぶ!

             2020年10月号  代表 福永慈二


先日、用事があり千葉県佐原(現香取市)を訪れた際、以前から一度見てみたいと思っていた「伊能忠敬記念館」を見学して来ました。素晴らしい展示で、多くのことを学ぶことができました。

 ご存じの通り、伊能忠敬(1745年2月生~ 1818年5月没)は、江戸時代の商人・天文学者・測量家であり、寛政12年(1800年)から文化13年(1816年)まで、17年をかけて日本全国を測量して『大日本沿海輿地全図』を完成させ、国土の正確な姿を明らかにしました。晩年になって大事業を成し遂げた彼の生涯から私が学んだこと、それは次の通りです。


第1.忠敬は50歳になって家督を息子に譲り、江戸に出て天文学・歴法を学び、全国を測量して歩き、『大日本沿海輿地全図』を完成させました。隠居・退職後に新たな挑戦を始める「一身にして二生を得る」という生き方は、高齢化時代の今こそ、学ぶべき点が多いかと思います。

 忠敬は、上総国山辺郡小関村(現千葉県九十九里町)の名主・小関家で生まれました。父親は小堤村(現横芝光町)の酒造家の次男で、小関家には婿入りしています。忠敬は6歳で母を失い、祖父母に育てられ、10歳の時に実家に戻った父親に引き取られますが、その後も親戚を転々としたようで、その間に様々な知識を身に着けたようです。彼の少年時代は決して恵まれたものではありませんでした。そして、17歳の時、忠敬は伊能家に入婿します。当時の佐原村は、利根川を利用した舟運の中継地として栄え、江戸との交流も盛んで、物のほか人や情報も多く行き交じり、このような佐原の土壌はのちの忠敬の活躍にも影響を与えたと考えられています。

 伊能家は酒、醤油の醸造、貸金業を営んでいたほか、利根水運などにも関わっていましたが、当主不在の時代が長く続いたために事業規模はそれほど大きくはありませんでした。有能であった忠敬は、家業を発展させ、大いに地域貢献も果たし、天明3年(1783年)には名字帯刀を許されるようになり、さらに天明4年(1784年)には村方後見の役を命じられ、伊能家は大いに繁栄していきました。50歳を迎えた時には、伊能家は巨額の財を成しており、忠敬は満を持して隠居し、江戸に上り、第2の人生、天文学・暦法の学習と全国を回っての日本地図造りの歩みを始めたのです。

 こうした忠敬の生き方について、井上ひさしはその小説『四千万歩の男』の中で、第2の人生を有意義に送った「一身にして二生を得る」という彼の生き方を、高く評価しています。

 私たちの会社ジオ・ステージ・フォーも、高齢退職者の優れた経験・技術・知識を生かし、若い後継者を育てるという目的をもって設立され、実際に今も高齢者の手によって運営されています。忠敬の「一身にして二生を得る」という生き方は、平均寿命が延びた現代において、退職後の人生を送り方として、参考にすべき手本になると思います。

 ドイツ出身のアメリカの詩人―サミュエル・ウルマン(1840年~1924年)は『青春の詩』の中で、次のように歌っています。

『青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。

 優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、

 安易を振り捨てる冒険心、こう言う様相を青春と言うのだ。

 年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。』

 まさに、これこそ50歳になって第2の人生に踏み出し、若者のように情熱と理想をもって全国各地を歩き周り、日本地図を作り上げた忠敬の姿そのものではありませんか。高齢者にも青春があるのです。理想をもって生きる限り、いかに年をとっても〝青春時代〟を生き、楽しむことができるのです。


第2.忠敬の作った地図は非常に正確でした。それは忠敬が高橋至時に暦学・天文学を学び、俯瞰的・鳥瞰的視点をもっていたからでした。それ故に、忠敬と至時の二人は「日本地図の父母」と呼ばれていますが、それはまったく正当な評価である、ということです。

 大阪生まれの至時(よしとき、1764年12月生~ 1804年2月没)は、江戸時代後期の天文学者で、天文学を学ぶべく江戸に下り、天文方に任命され、寛政暦への改暦作業において、間重富(はざましげとみ)とともに中心的な役割を果たしました。当時の日本の暦は宝暦暦を用いていましたが、この暦は精度が悪く、宝暦13年(1763年)に起きた日食の予報を外してしまいました。そこで、至時は前野良沢や司馬江漢らと交流し、西洋の天文書の入手を心がけ、西洋の進んだ天文学・歴法の知識を手に入れ、当時の日本人にとっては革新的かつ難解でもあった、ヨハネス・ケプラーの唱えた楕円軌道理論などの知識を身に着けていきました。享和3年(1803年)に、西洋から伝わった天文書『ラランデ暦書』を手に入れた至時は、この書を「実に大奇書にして精詳なること他に比すべきなし」と評し、それを読み解き、5惑星の運動などについても理解するに至りました。こうして至時の天文学の知識は当時の日本では他を抜きんでたものになり、その評判は広く知られるようになっていきました。

 佐原に居た時から天文学に関心を抱いていた忠敬は、江戸に出ると、この19歳も若い至時を訪れ、至時を師と仰ぎ、尊敬と敬意を捧げ、彼から暦学・天文学を学び、測量技術などをを身に着け、有能な測量家に成長していきました。

 そもそも忠敬が地図作りを始めたのも、至時の指示があったからでした。当時、緯度1度の子午線弧長の長さが問題になっていました。その解決の為には一定の距離を持った2地点間の測量を行う必要がありました。至時は「正確な値を出すためには、江戸から蝦夷地ぐらいまでの距離を測ればよいのではないか」と提案し、忠敬に東北・北海道の測量を促し、伊能忠敬はその測量を通じて緯度1度の距離を求め、28.2…里という結果を得ました。至時は、その値が西洋の天文学書『ラランデ暦書』の値とほぼ一致することを確かめ、忠敬の技能を高く評価しました。

 当社も「科学的であれ!正確であれ!」をモットーとして掲げています。地質調査・測量は住民の命の安全に関わるものであり、それ故に正確な調査が絶対に必要なのです。至時・忠敬二人の科学的心構え、俯瞰的・鳥瞰的・大局的な視点の持ち方、これらに学ぶべき重要性にはまことに大なるものがあります。


第3.忠敬の地図作りの事業は、最初から幕府に認められて始められた訳ではありませんでした。最初は私費を使って始められ、やがてその地図作成の正確さが認められ、幕府のバックアップのもとに全国地図が完成させられたのです。何事も最初から順調に進められるわけではない、ということです。

 忠敬の測量の歩みをたどってみましょう。

 第一次測量〈蝦夷地〉…当時蝦夷地では帝政ロシアの圧力が強まっており、ラクスマンが根室に入港して通商を求め、その後もロシア人による択捉島上陸などの事件が起こり、日本側も最上徳内、近藤重蔵らによって蝦夷地の調査を行ない、蝦夷地の地図を作成していました。

 至時はこうした北方の状況を捉え、蝦夷地の正確な地図を作る計画を立て、幕府に願い出、忠敬を推挙したのです。忠敬は高齢な点が懸念されましたが、測量技術や指導力、財力などの点で、この事業にはふさわしい人材ということになり、幕府も認めることになったのです。ただ、幕府は測量は認めるが、荷物は蝦夷まで船で運ぶと定めました。が、船では子午線の長さを測るための測量ができないため、忠敬と至時は陸路を希望し、地図を作るにあたって船上から測量したのでは距離がうまく測れず、入り江などの地形を正確に描けないなどと訴え、その結果、希望通り陸路を通って行くこととなりました。しかし、測量器具などの荷物の数は減らされ、忠敬は「元百姓・浪人」という身分で、1日当たり銀7匁5分が手当として出されただけでした。当時の幕府は忠敬をあまり信用しておらず、結果も期待していなかったのです。忠敬は内弟子3人・下男2人を連れた旅の費用として自身で60両を用意し、測量器具も自費で購入しています。

 忠敬は出発直前、蝦夷地取締御用掛に申請書を出し、自らの思いを述べています。「御大名様や御旗本様方の御領内や御知行所などの土地に間棹や間縄を入れて距離を測りましたり、大道具を持ち運ぶなどいたしますとき、必ず御役人衆の御咎にもあうことでありましょう」故、「せめては将来の御参考になるような地図でも作りたいと思います」と。こうしてご機嫌伺いをしておかなければうまく仕事が進まなかった、ということなのです。実際測量をする現場では、しばしば現地の役人とトラブルが起こり、その都度至時は幕府・大名に掛け合い、忠敬をしっかり支えました。

 第二次測量〈伊豆・東日本東海岸〉…今回は、手当は前回より少し上がって1日10匁となり、また道中、奉行や勘定奉行から先触れが出るようになり、その結果、現地の村の人々の協力を得ることも可能になりました。しかし、相変わらず忠敬の持ち出し費用は少なくありませんでした。

 第三次測量〈東北日本海沿岸〉…幕府は忠敬の作った地図を見てその正確さに驚き、ようやくその仕事を認めるようになり、測量では人足5人、馬3匹、長持人足4人が与えられ、手当は60両支給され、過去2回よりもはるかに恵まれた待遇で、費用の収支もやっと均衡するようになりました。

 忠敬が正式に幕府に登用されるのは第四次測量が終わった後で、59歳の時でした。そしてこの年、至時は40歳の若さで亡くなっています。

 第十次測量〈江戸府内〉…江戸府内を測るこの測量が最後となりました。忠敬は文政元年(1818年)4月13日、弟子たちに見守られながら73歳で生涯を終え、3年後の文政4年(1821年)に、弟子たちの手によって『大日本沿海輿地全図』と名づけられた地図はようやく完成します。

 地図完成まで、忠敬・至時が歩んだ道は決して平たんなものではありませんでした。しかし、その事業が社会的に価値があり、正確で正しいものであり、実際に役に立つものである限り、必ず最後には世の支持が得られ、正当に評価される、ということです。


 以上が、伊能忠敬・高橋至時二人の「日本地図の父母」から学んだことです。その上で、実に奇妙で、不思議なエピソードを紹介しておたいと思います。

 佐原の「伊能忠敬記念館」の展示を見ていると、忠敬と至時のお墓について、「二人の墓は浅草の源空寺の墓地に並んで建てられている」との記述がありました。「源空寺」―それは私の住居(台東区松が谷)から200メートルくらい離れたところにある、よく知っているお寺でした。

 その日の帰りすがら源空寺に寄ってみました。墓地は表通りから少し奥まったところにあり、普段はそこを通ることはほとんどありません。墓地に入ってみると、確かに「東河 伊能先生之墓」と「東岡 高橋君之墓」が並んで建てられていました。忠敬の墓がここに建てられたのは、彼の「師の隣に墓を建てて欲しい」という遺言によるものです。 

 この偶然に私は大変驚きました。しかし、この偶然は、私がジオ・ステージ・フォーという、忠敬・至時の日本地図作りとも関連のある、地質調査・測量調査の会社を設立したからこそ生まれたのであり、そこにはまぎれもなく必然性があると言うべきでしょう。

 そして更に、当社事務所は江東区の東陽にあり、私は大江戸線の「門前仲町」で降り、バスで会社まで行くのですが、忠敬が江戸に出て来て最初に住んだ「深川黒江町(現門前仲町1丁目)の家」も、忠敬が測量の旅に出る時必ずお参りした「富岡八幡宮」も、共に江東区の「門前仲町」駅から歩いて5,6分の所にあり、よく見聞きしている場所なのです。

 そしてまた、この10月から当社が液状化調査と液状化対策の自然実証実験を行うことになった茨城県稲敷市の東端に位置する「結佐」(けっさ)―この地名も、明治の初めにこの地の開拓に入った佐原の百姓衆が、「佐原との縁を忘れず、佐原との結びつきを必ず強めていこう」との祈りと決意を込めて命名したものと聞いています。

 二人の「日本地図の父母」に、何か、不思議な縁を感じます。この縁を大切にし、引き続き忠敬・至時二人の事蹟を研究し、顕彰していきたいと思います。

 なお、佐原市民の皆さんは「伊能忠敬をNHKの大河ドラマに!」との強い希望をもっており、熱心に運動しているそうです。私たちもぜひそれに協力していきたいと考えます。

 皆さんも、佐原を訪れ、ぜひ「伊能忠敬記念館」を見学してみて下さい。お願いします。



災害に弱い地域であることを直視せず、対策をとらないまま人が住み続け、災害が起きてからあわてて対応する』―それでよいのか!

                2020年9月号 

   2020年8月18日付朝日新聞のコラム欄《経済気象台》に、芥々氏が、『インフラ不在の時代に』と題し、次のような意見を寄せています。(この欄は、第一線で活躍している経済人・学者らが執筆しているものです)

『気候変動による豪雨で、水害は大規模化し、今後多くの地域で起きる可能性が高まっている。「7月豪雨」で河川の氾濫をもたらした熊本・球磨川流域で考えると、被害の原因にはインフラの不在があるだろう。 

 1960年代の大水害をもとに、国は66年、支流である川辺川に洪水対策のダム建設を計画した。しかし地元で推進派と反対派に分かれて協議は難航し、事業費は大きくふくらんだ。2008年に蒲島県知事が反対して、約9割完成していたものの、翌09年に中止された。

 ダムができていたとしても、今回、大きな被害があったことは間違いないだろう。知事はダムによらない治水を追求し続ける考えを示してきたが、想像を超える災害が頻発する時代だ。地域の衰退は人口減少を加速させるが、災害に弱い地域はさらに衰退し、人口減にも拍車をかける。

 災害に弱い地域であることを直視せずに大きな対策をとらないまま、人が住み続けて、災害が起きてからあわてて対応する。事前に住民の命を救うしくみを構築せずに命を助けることができなかった地域へ、国や地方がいわば見舞金的に対応することが繰り返されている。

 ダムなどの大きなインフラ整備は、環境破壊をもたらしうる。しかし、そもそも何を救うための計画なのか、視点を見つめ直すことが急がれる。川底の掘削や堤防のかさ上げなどの代替案が費用の大きさや実現可能性などから採用出来ないならば、地域住民に、移転を促すことを真剣に考えてはどうか。 地方創生やコンパクトシティーといったうたい文句ではなく、現実を動かすしくみづくりを真剣に考えるときだ』と。


 この問題は、水害対策だけでなく、地震対策についても、まったく同じことがいえます。例えば、液状化問題なども、すでに「この辺のこの地域は過去の経験・データからして液状化が避けられない」との結論が出ているのに、全く手が打たれず、実際に地震で液状化が発生して家や道路が傾むき、生活インフラがぐちゃぐちゃに破壊されてから、慌てて多額の費用をかけて復旧に走る、ということが至る所で見られます。費用的に見ても、事前に対策する費用と、事が起こってしまってからの復旧・再建費用とでは、まさに数倍の違い、天地の違いがあるのです。地震対策としては、津波の可能性が大きな地域は別として、液状化対策として移転することはありませんが、事前に正確な調査を行い、適切な箇所に水抜き柱状ドレーンを打ち込みさえしておけば、家が傾き、人が住めないとなくなるというような深刻な事態は避けられます。工事費用もそれ程かかりません。

「転ばぬ先の杖」ということわざを私たちはいま一度思い起こし、真剣に考えてみる必要があるように思います。 

                  

                    (代表 福永慈二)



『ゲリラ豪雨や大地震に備えて「地盤や地形」を確認する方法』について

                           2020年8月号    

 日刊ゲンダイDIGITAL(公開日:2020/06/07)が、上記のタイトルで、実に興味深い記事を紹介しています。この記事は『災害に強い住宅選び 』(日経プレミアシリーズ)の著者・長嶋修氏が書いたものです。氏は、不動産コンサルタント、(株)さくら事務所会長で、国交省・経産省等の委員を歴任し、現在日本ホームインスペクターズ協会の理事長に就いている人物です。


『インターネットには「国土地理院地図」が公開されています。画面左下にはその場所の「標高」が示されています。

 土地の高低差は2つの視点で留意する必要があります。1つは「絶対的な高さ」です。津波や洪水などの際の被災可能性がわかります。もう1つは「相対的な高さ」です。周辺の土地と比べてどうかということです。ゲリラ豪雨など、短時間で集中的に雨が降る場合、排水処理能力が追い付かず、洪水になる可能性があります。例えば、東京都の場合、1時間あたりの排水処理能力は50ミリ程度になっている自治体が多いのですが、ゲリラ豪雨はこの水準を大きく凌駕します。すると地域の相対的に低いところに雨水が集中し、冠水します。

 地盤の性質を知るには、「地図」→「その他」→「ベクトルタイル提供実験」→「地形分類(自然地形)」(または人工地形)を調べると、色分けによってその土地が地震に強いのか否かという特徴がわかります。   

 建物が傾いたり、液状化の被害が心配なら、「わがまちハザードマップ」を使って該当自治体の「液状化マップ」を検索するか、あるいは最初から「台地」など相対的に高いところにあり、浸水や液状化の懸念がなく、地盤の固いところを選ぶべきでしょう。

  もっとも地盤の固いところでも、地面をかさ上げする「盛土」をしていればその限りではありません。その土地が、土を盛って造成することで地盤面を高くしている「盛土」か、元の地盤面を削って、一体的に均質で締まっている地盤の「切土」なのかについては、市区町村役場で確認できます。窓口の名前はさまざまですが、「都市計画課」「建築審査課」などです。…

 地盤が弱くて揺れやすい地形の場合、地盤の固いところに建つ建物よりも揺れやすくなります。必要に応じて建物の耐震性を高めなくてはなりません。また、もし液状化した場合、建物は無事でも、上下水道など地下に敷設されているインフラが毀損する可能性があります。そのことも踏まえ、万が一災害に見舞われた場合、地面の下のインフラのチェックも怠らないようにしてください。

 昔の空中写真や衛星画像を見るなら、同じく「国土地理院地図」が使えます。「地図」→「空中写真・衛星画像」では、戦前からの写真・画像も確認することができます。筆者(長嶋)は子供のころ埼玉県某所に住んでいたのですが、大雨が降るとよく浸水するところでした。そこで1936年の画像を確認したところ、その地帯はかつて河川だったことがわかりました。

 地震や津波に関するさらに詳しい評価は、「地震本部」「地震ハザードステーション」などのホームページで確認できます。

  ≪地震調査研究推進本部 https://www.jishin.go.jp/≫ 

  ≪地震ハザードステーション(防災科学技術研究所)

               http://www.j-shis.bosai.go.jp/≫ 』

  福永注:ネット初心者は「市町村のハザードマップをみる・国土地 

                理院」を検索し、知りたい地域の公開URLをクリック。

 

 以上です。豪雨や地震に弱い地域の調べ、液状化しやすい軟弱地盤・盛り土地帯の調べなど、この機会にぜひ実行してみてください。

 住居はまさに「命の預け場所」であり、最も「安全・安心」が求められるところです。それ故に、住宅を買う時も、居住してからも、地域の居住環境・地盤環境を正確にしっかりと認識し、避難の方法の確認・液状化対策など、事前に打つべき手を打ち、出来る限り不安と心配を除去しておくことが必要です。

 現在は、新型コロナ対策上、自宅にいる時間が多くなっていると思います。こうした状況を利用し、今一度「我が家の置かれている住宅環境・地盤環境」について、綿密に調査してみることをお勧めします。


コロナ禍の陰で頻発する震度4級の地震に警戒を!                                                               2020年7月号 

 ここのところ関東地方は地震が頻発しています。

  2020年06月01日06時02分頃  茨城県北部マグニチュード M5.3震度4 

  2020年06月04日05時31分頃  茨城県沖マグニチュード M4.7震度4 

  2020年06月25日04時40分頃  千葉県沖東マグニチュード M6.1震度5

 こうした現象について、2020年6月26日号『FRIDAY』は次のように報道しています。

【「最近やけに地震が多いなぁ」。外出自粛期間中、自宅でそう感じた人は多いだろう。それは気のせいではない。…今年4月~5月に発生した震度3以上の地震の回数は、昨年と比べると2倍以上なのだ。日本列島各地の地盤で異変が起きていることは間違いない。特に茨城県と千葉県ではM5クラスの中規模の地震が頻発している。 

 地震学者で東京大学名誉教授の笠原順三氏が語る。

「この地震は、東日本大震災の余震活動です。これは太平洋プレートの沈み込みに関係しているものが多く、首都圏での大地震につながる危険性があります。1923年の関東大震災の際は、その1年ほど前に茨城県の龍ヶ崎でM7クラスの地震が起きている。今の状況はそのときの地震活動にやや似ていると思います」

 長野県中部と岐阜県飛騨地方も要注意エリアだ。4月以降、震度1以上の地震がすでに170回以上も観測されている。これについて、東海大学海洋研究所地震予知・火山津波研究部門長の長尾年恭教授が次のように解説する。

「もともと長野と岐阜の県境は地震が起きやすい場所です。太平洋プレートとフィリピン海プレートに日本列島が押されると、このエリアで歪(ひず)みが解放される。ただし今回の群発地震はかなり大きい。身体に感じない地震を含めると4月23日から6月頭までで約1万8000回も起きている。長期化する傾向もあり、震源が浅いために揺れも大きいので、土砂崩れなどに警戒が必要でしょう」

 また…東京湾を震源とした小規模な地震が多発している。5月20日から21日にかけて、M2.6~3.5の地震が計6回も発生した。このエリアでは珍しい現象だ。

「それらは深さ20㎞ほどまでの浅いところで起きています。首都直下地震に関係していると言えるかもしれません。現段階で、政府が想定している震源ではありませんが、首都圏を襲う地震が起こるメカニズムを持っている場所です」(長尾教授)

 その後、東京湾の地震は収まっているが、立命館大学特任教授の高橋学氏(災害史・災害リスクマネジメント)は「それが不気味なんです」と語り、こう続ける。

「それまで地震が起きていなかった場所で集中して発生した後、パタリと静かになる。それから約2ヵ月後に同じ場所でM3程度の地震が来る。その半日~3日後に巨大地震が来るというパターンはいくつも例があります。’95年の阪神・淡路大震災や’04年の新潟県中越地震、’16年の熊本地震、鳥取県中部地震などです。東京湾をはじめ、房総半島沖から相模湾にかけて伸びる相模トラフ沿いの地震に要注意です。千葉県や茨城県南部の地震もこれに関係していると思われます。さらに相模トラフが剥(は)がれて南海トラフに連動することもありえる。私は数年以内に相模トラフと南海トラフで超巨大地震が発生すると考えています」と】

 また、2019年7月12日号『FRIDAY』は、京都大学の鎌田浩教授(東大理学部卒・元通産官僚)の次のような警告を紹介しています。

【「'11年の東日本大霊災以降、日本列島の地下にあるプレートのあちこちに歪みが生じ、その歪みを解消しようと地震が頻発しています。震災以前に比べ、地震は約3倍に増えており、日本は言わば、『大地変動の時代』に入っているのです」 

 では、実際に首都直下地震が起こった場合、首都圏ではどの程度の被害が想定されるのか? 

「冬の夕方6時、震度7の揺れに見舞われる最悪のケースでは、犠牲者2万3000人、 うち火災による犠牲者1万6000人、全壊・焼失建物61万棟、経済被害112兆円と想定されています。震度7では、テレビやピアノが壁に激突して人を傷付ける。'81年の建築基準法改正以前に建てられた木造住宅の多くは約10秒で倒壊します。オリンピックで100万人近い観客が集まっていた場合、被害がさらに増える可能性もあるのです」

 首都機能が崩壊する恐れのある首都直下地震。とくに、地盤が弱く建物が倒壊しやすい東京の下町地域と、火災の被害を受けやすい環状6号線一8号線間の木造住宅密集地域は注意が必要だというが? 

「下町地域の地盤は液状化しやすく、道路が使えなくなる恐れもあります。火災に関しては、木造住宅密集地域に住む人以外も警戒する必要がある。関東大震災では犠牲者10 万人のうち9割が火災により亡くなりました。高層ビルが多い都心部では、ビル風によって電巻状の炎を伴う旋風が次々と発生し、多くの犠牲者を出す危険性があるのです」と】 


 以上のように、コロナ騒動の裏側で、このような深刻な地震頻発現象が起こっていることに注意注目しなければなりません。いつ大きな地震に見舞われても不思議ではないのです。「備えあれば憂いなし」であり、今こそなしうる対策を全力を挙げてなすことです。

 最近、東京都の液状化地帯区域で、わが社のジオ・フロント式液状化調査機を使った戸建て住宅の液状化調査実証実験が始まりました。茨城の稲敷市でも、柱状ドレーンを使った戸建て住宅の液状化対策実証実験の準備が進められています。

 ようやく、私たちの『簡易で、安価で、どこでも利用できる戸建て住宅用液状化調査・液状化対策工法』に光が当たり始めました。私たちは、更に改良を進め、より多くのみなさまが、より安い費用で、私たちの工法を採用し、なしうる準備を行ない、やがて来る地震危機に備えすることができるよう、全力を尽くすつもりです。

                   



2020年6月号(№8)

「5・10地質の日」にあたって


 5月10日は「地質の日」となっています。1876年(明治9年)のこの日、アメリカの地質学者ベンジャミン・スミス・ライマンらが日本初の広域的な地質図「日本蝦夷地質要略之図」(200万分の1)を作成・完成させ、また、1878年(明治11年)のこの日、地質の調査を扱う初めての国内行政組織として内務省地理局地質課が設置されました。

 ライマンは、米国マサチューセッツ州の出身で、ハーバード大学を修了後、ドイツのフライベルク鉱山学校(現在のフライベルク工科大学)で鉱山学を学び、1872年(明治5年)北海道開拓使の招待で来日しました。そして、明治6年2月、北海道開拓の青写真を描いたかのホーレス・ケプロンの推薦で、ライマンは鉱山技師に任命されました。

 彼は、その後3年間に渡って北海道の地質調査を行いましたが、それ以前の日本には地質調査というものはなく、この調査が日本で最初の地質調査でした。調査の目的は、石炭、油田、鉄、金、硫黄など重要鉱産資源の発見で、その成果として「北海道地質総論」「日本蝦夷地質要路之図」がまとめられたのです。

 この時のライマンの調査の中で、日本最大の炭鉱である夕張炭田が発見されました。また、ライマンは石狩川上流から石狩岳東側の峠を越えて音更河上流に達し、これを下って十勝原野に到達、そこで見た光景を『我がチームが通過せる草野は、ほとんどが広々と開けていて、平均少なくも…四万エーカー(約一万六千町歩)なるべし』と記録し、十勝平野が巨大な農地・牧場地となりうることを予言しました。現在の日本最大の食糧基地となっている十勝野を見るとき、ライマンの予言の正確さに驚かされます。

 ライマンは、1876年(明治9年)まで北海道の地質調査に従事し、後に工部省の依頼で1876年から1879年の間、日本各地の石炭・石油・地質調査にあたり、1891年(明治24年)に帰国するまで山内徳三郎をはじめとした自身の日本人助手を教育するなど日本の地質学に大きな貢献を果たしました。帰国後はペンシルベニア州地質調査所次長に就任、1895年に同所を退職し、再訪日することを望んでいましたが、赤痢に苦しみ、訪日できず、1920年に死去しました。まさにライマンは「日本地質学の父」ともいうべき人物です。

 このように、明治時代の地質調査の大きな目的は、「石炭、油田、鉄、金、硫黄など重要鉱産資源の発見」でしたが、現代のそれは「自然災害防止」がその大きな任務となっています。特に、日本は地震・火山の多いところであり、各地で深刻な液状化災害が起こり、更にまた最近はゲリラ豪雨等による地盤崩壊も多く発生し、地質学の果たす役割は極めて大なるものがあります。

 「5・10地質の日」に当たり、あらためて「自然災害防止」に果たす地質研究・調査の役割の大きさを再認識し、社業の大いなる前進・発展を目指したいと思います。

                                        (代表 福永慈二) 

2020年5月号(№7)

戸建て住宅と液状化対策 

 

 2020東京オリンピックは1年延期され、目下はもっぱらコロナ問題が話題の中心となっています。が、このような中、2020年4月20日付『産経新聞』に連載されている、オリンピックに関する特集『灯す』は、その「第3部・試練を越えて」の中で、液状化問題について、重要な問題を取り上げています。その内容は次のようなものです。 

 

『五輪を契機に東京が世界に伝える「防災」。都内の競技施設は25ヶ所のうち半数超が湾岸部に集中しており、その一部は埋め立て地。東日本大震災で液状化現象に見舞われた地域でもある。地表近くの土の間には水が入り込んでいる。液状化は地震の揺れで土のかみ合わせがずれ、地表に水が噴き出してくる現象だ。この現象に直面したからこそ施設の対策に余念はない。

 例えば有明アリーナ(東京都江東区)。建物を支えるくいを地中深くの強固な地盤まで打ち込み、たとえ周囲が液状化しても、倒壊や傾きを免れるように設計されている。

 日本では、ビルやマンションなどを設計する際、液状化対策が義務付けられてきた。事実、東日本大震災でも戸建て住宅を除き、被害はほとんどなかった(ゴチック強調は福永)。そのきっかけとなったのは、前回五輪(注:1964年の東京オリンピック)の開幕4カ月前、昭和39616日に発生した新潟地震だ。……

 アジア初となった東京五輪の成功、そして「東洋の奇跡」とまで称された当時の経済成長。列島全体が熱狂に包まれる一方で、日本人は新潟地震を決して忘れていなかった。

  関東学院大学長で、地盤防災工学の第一人者、規矩大義(きくひろよし・56)は語る。

「県営アパートは当時の最先端の建造物だった。それが災害の前にもろくも崩れ去った。新潟地震後、地盤の液状化は広く認識されるようになり、技術基盤が整備された」

 地震の2年後には「地震保険」が創設された。当時の第2次池田勇人内閣で大蔵大臣を務めた新潟出身の田中角栄が、地震からわずか1カ月後に発案した。……

 前回の東京五輪、また開催直前に起こった新潟地震から半世紀あまり。地震や温暖化、感染症など、自然の脅威は今も日本につきまとう。

 スイスの保険会社大手スイス・リーがまとめた「自然災害リスクの高い都市ランキング」(2013)では世界616都市の中で、東京と横浜が1位となった。大阪・神戸(5)と名古屋(6) もトップ10に入り、日本が災害列島であることは、疑いようがない(ゴチック強調は福永)。

 1年延期が決まった2020年東京五輪。そこには新潟地震の経験が確かに生かされ、世界にも継承されていくことになる』と。

 

 日本の地震対策、特に液状化対策は新潟地震を契機にかなり進み、9年前の東日本大震災を通じてさらに前進しました。この特集で明らかにされているように、日本の地震対策は過去の苦い経験から学び、一歩一歩前進してきたことは事実です。湾岸部に建てられた今回のオリンピック施設についても、十分な液状化対策が施されているようです。

 しかし、ここで、私たちが注目しなければならないことは、公共施設・公共のインフラ・民間の大きな建築物については、「十分な液状化対策」が施されているようですが、戸建て住宅についてはまったくそうなってはいないということです。「東日本大震災でも戸建て住宅を除き、被害はほとんどなかった」と記されているように、「戸建て住宅を除き」であり、戸建て住宅の液状化対策はほとんど顧みられていないのが実情なのです。

 まさに「日本が災害列島であることは、疑いようがない」事実であり、戸建て住宅もまたその災害列島の上に存在しており、その数は膨大です。戸建て住宅の地震対策としては、家屋の耐震強化はある程度進んできましたが、液状化対策・地盤対策はほとんど手付かずのままです。これでよいはずがありません。

 ただし、戸建て住宅の液状化対策・地盤対策は、安価、小工事、それで効果的、であることが求められます。私たちは、創業以来「ジオフロント式サウンディング地盤調査」「コミヤ式柱状ドレーン液状化対策」という工法による戸建て住宅の液状化対策を研究し、実践し、さらに実験による検証を追求してきました。その結果、戸建て住宅の液状化対策を真剣に追求している自治体、戸建て住宅所有者の皆さんから大いに注目されつつあります。私たちはさらに工事経験を積み、この工法を発展させ、単価を下げる工夫を凝らし、皆さんの期待に応えるべく、奮闘努力する覚悟です。どうか、ご協力のほど、よろしくお願い致します。  

 2020東京オリンピックは1年延期され、目下はもっぱらコロナ問題が話題の中心となっています。が、このような中、2020年4月20日付『産経新聞』に連載されている、オリンピックに関する特集『灯す』は、その「第3部・試練を越えて」の中で、液状化問題について、重要な問題を取り上げています。その内容は次のようなものです。

 
『五輪を契機に東京が世界に伝える「防災」。都内の競技施設は25ヶ所のうち半数超が湾岸部に集中しており、その一部は埋め立て地。東日本大震災で液状化現象に見舞われた地域でもある。地表近くの土の間には水が入り込んでいる。液状化は地震の揺れで土のかみ合わせがずれ、地表に水が噴き出してくる現象だ。この現象に直面したからこそ施設の対策に余念はない。
 例えば有明アリーナ(東京都江東区)。建物を支えるくいを地中深くの強固な地盤まで打ち込み、たとえ周囲が液状化しても、倒壊や傾きを免れるように設計されている。
 日本では、ビルやマンションなどを設計する際、液状化対策が義務付けられてきた。事実、東日本大震災でも戸建て住宅を除き、被害はほとんどなかった(ゴチック強調は福永)。 そのきっかけとなったのは、前回五輪(注:1964年の東京オリンピック)の開幕4カ月前、昭和39年6月16日に発生した新潟地震だ。……
 アジア初となった東京五輪の成功、そして「東洋の奇跡」とまで称された当時の経済成長。列島全体が熱狂に包まれる一方で、日本人は新潟地震を決して忘れていなかった。
  関東学院大学長で、地盤防災工学の第一人者、規矩大義(きくひろよし・56歳)は語る。
「県営アパートは当時の最先端の建造物だった。それが災害の前にもろくも崩れ去った。新潟地震後、地盤の液状化は広く認識されるようになり、技術基盤が整備された」
 地震の2年後には「地震保険」が創設された。当時の第2次池田勇人内閣で大蔵大臣を務めた新潟出身の田中角栄が、地震からわずか1カ月後に発案した。……
 前回の東京五輪、また開催直前に起こった新潟地震から半世紀あまり。地震や温暖化、感染症など、自然の脅威は今も日本につきまとう。
 スイスの保険会社大手スイス・リーがまとめた「自然災害リスクの高い都市ランキング」(2013年)では世界616都市の中で、東京と横浜が1位となった。大阪・神戸(5位)と名古屋(6位) もトップ10に入り、日本が災害列島であることは、疑いようがない(ゴチック強調は福永)。
 1年延期が決まった2020年東京五輪。そこには新潟地震の経験が確かに生かされ、世界にも継承されていくことになる』と。
 

 日本の地震対策、特に液状化対策は新潟地震を契機にかなり進み、9年前の東日本大震災を通じてさらに前進しました。この特集で明らかにされているように、日本の地震対策は過去の苦い経験から学び、一歩一歩前進してきたことは事実です。湾岸部に建てられた今回のオリンピック施設についても、十分な液状化対策が施されているようです。
 しかし、ここで、私たちが注目しなければならないことは、公共施設・公共のインフラ・民間の大きな建築物については、「十分な液状化対策」が施されているようですが、戸建て住宅についてはまったくそうなってはいないということです。「東日本大震災でも戸建て住宅を除き、被害はほとんどなかった」と記されているように、「戸建て住宅を除き」であり、戸建て住宅の液状化対策はほとんど顧みられていないのが実情なのです。
 まさに「日本が災害列島であることは、疑いようがない」事実であり、戸建て住宅もまたその災害列島の上に存在しており、その数は膨大です。戸建て住宅の地震対策としては、家屋の耐震強化はある程度進んできましたが、液状化対策・地盤対策はほとんど手付かずのままです。これでよいはずがありません。
 ただし、戸建て住宅の液状化対策・地盤対策は、安価、小工事、それで効果的、であることが求められます。私たちは、創業以来「ジオフロント式サウンディング地盤調査」「コミヤ式柱状ドレーン液状化対策」という工法による戸建て住宅の液状化対策を研究し、実践し、さらに実験による検証を追求してきました。その結果、戸建て住宅の液状化対策を真剣に追求している自治体、戸建て住宅所有者の皆さんから大いに注目されつつあります。私たちはさらに工事経験を積み、この工法を発展させ、単価を下げる工夫を凝らし、皆さんの期待に応えるべく、奮闘努力する覚悟です。どうか、ご協力のほど、よろしくお願い致します。  

 

 

2020年4月号(№6)

戸建て住宅の液状化対策と柱状ドレーン工法について
~3・11東日本大地震から9年目を迎えて~


 
この3月11日には、大きな被害をもたらした東日本大震災の9周年の追悼会が、コロナ禍の下、東北はじめ日本各地でしめやかに催されました。私たちにとって大事なことは、ただ単に追悼式典を盛大にするだけでなく、悲惨な事実をしっかりと見つめ、残された教訓をしっかり学び、今後の対策をしっかりと押し進める、という決意を打ち固めることです。
 統計によると、この9年間に中規模程度の地震―余震―がそれ以前の5倍も発生していると言います。中でも、震度4以上が観測された地震は、2017年が40回、2016年は192回に及んでおり、専門家は今後も10年間は同程度の余震が続くと見ております。さらに地震調査委員会は今後30年以内にM7クラスの大地震が首都を襲う確率は70%としています。一昨年、北海道では震度7の胆振東部地震が発生し、札幌清田区では大規模な液状化崩壊が起こっています
 まさに日本は地震列島であり、大きな地震がいつ発生してもおかしくないのです。だが、それに向けた事前対策、事前準備は遅々として進んでいないのが現状です。特に、戸建て住宅の対策は遅れに遅れています。経済的に見ても、家屋崩壊を引き起こしてからの再建費用は、事前に対策を施しておく費用とは比べものにならない高額です。事前に対策をしておけば(もちろん100%安全というわけではありませんが)、その何分の1かの費用で済みます。最近では、地震対策関係者の多くが、「やられてから高い金をかけるのではなく、やられる前に少ない金で対策を!」と訴えています。
 さて、先に「特に、戸建て住宅の対策は遅れに遅れている」と書きましたが、中でも上物の耐震対策に比べ、特にまた「戸建て住宅の液状化対策」は非常に遅れているのが現状です。
 現在、国内で、戸建て住宅に関する液状化対策で最も進んでいる施策をとっているのは東京都葛飾区であり、既に地盤調査費用として35万円、液状化対策費用として90万円(工事費の2分の1程度)の助成制度を確立しています。だが、この素晴らしい助成制度もそれほど活用されていないのが実情のようです。
 私たちが見るところ次の2点に問題があります。第1に、地盤調査・液状化対策助成の対象が「新築・建て替え住宅」に限られていること。第2に、液状化対策工事は「液状化層の土とセメント系固化材を混ぜた改良体が非液状化層に到達する」というものであること。第1の問題点は、既存・既設の家屋は対象になっていないこと、第2の問題点は、液状化層の深度によって費用が決まり、液状化層が深い場合工事費用がかなり高くなり、費用対効果を考慮した時どうしても躊躇が生まれてしまう、ことです。
 ここで、私たちが強調したいことは、この問題は決して「制度上」の問題ではなく、むしろ「工法上」の問題に他ならない、ということです。
 私たちが提案・推奨している「ジオフロント式サウンディング地盤調査」「コミヤ式柱状ドレーン液状化対策」の工法であれば、狭い場所に存在する既存・既設の戸建て住宅であれ、「地盤調査」も「液状化対策」も実施可能であり、「柱状ドレーンによる液状化対策工法」を採用すれば費用的にもかなり低く抑えられます。
【ドレーンとは液体・水分排出用の管のこと。液状化対策に使用される柱状ドレーンは径10㎝程の網目構造の管であり、芯部は水が通るように中空になっている。管の周囲はフィルターによって覆われていて、地中の水がフィルター・網目構造部より管中に染み込み、管芯部の中空部を通って地表に噴出するようになっている。柱状ドレーンは縦、斜め、横方向に打ち込むことが可能であり、既存家屋にも使える】
 なぜこうした優れた工法が普及しないのか? それは、大手建築建設会社は儲けにならないこうした細かい工事は積極的に実施しようとせず、したがってこの工法の実施例があまりにも少なく、実証性に欠けている、とみられているからです。
 今「砂地盤液化判定システム研究会」(当社も参加)を中心に、液状化地域における地盤調査・ドレーン工法に関する「自然実証実験」が計画され、進行中です(いずれ詳しく報告します)。私たちは、こうした実証実験の成功・結果によって、戸建て住宅の地盤調査・液状化対策が飛躍的に進み、大きな安心を生み出すことができるものと確信しています。
 実証実験に関心をお持ちの方はぜひご連絡ください。いろいろなご意見をお聞きしながら各種実験を行い、地盤に関する悩みを持った方々の要望に応えうる、より確実な工法の確立を目指したいと思ってよいます


2020年3月号 (№5)

「野村流再生工場」でなく「野村流ブリコラージュ」である

   ~岡田美智男(豊橋技術科学大教授)~

『他の球団で戦力外になったベテランを新しい起用法で再起させたり、埋もれていた選手の力を的確な助言で導き出したりする――。野村監督のこうした手腕は「野村再生工場」と言われました。
 ただ「再生」とは、例えば会社員なら、研修や再訓練を誰かに施し、本人の能力を再び引き上げるイメージです。野村流の「弱者の戦法」はそうではなく、今ある能力をそのまま最大限に発揮できる場所、局面で選手を使うという点に特徴があると思います。その結果、組織として強くなるというものです。 
 だから、工場で故障した機械を修理して再出荷するような「再生工場」という比喩は似合いません。野村さんのマネジメントにふさわしいのは「ブリコラージュ」という言葉ではないかと思います。
 もともとはフランスの人類学者レヴィ=ストロースの言葉ですが、今はビジネスの文脈の中で少し意味が広がり、「必要な素材がなくても手近るもので間に合わせる能力」とか、「あり合わせを集めて問題を解決する能力」といった意味で使われることもあります。冷蔵庫にある残りの食材を生かし何かおいしい料理をつくる、そんな例えがわかりやすいでしょうか。
 実は私は、研究室を運営するのに野村流「弱者の戦法」を意識しています。全国の高専などを卒業して集まるうちの大学の学生たちは、いわゆる偏差値秀才ではありません。 ホームランバッターは少ないのですが、みな一芸に秀で得意分野があります。
 ロボット製作にはさまざまな部門で力が必要です。機構設計、電子回路の設定、デザイン、プログラミング、プレゼン能力...。それぞれの得意分野で能力を発揮してもらい、お互いの弱さを補い合って一つのロボットをつくるのです。 誰かの苦手な分野を得意な者が喜々として補おうとする。自分の苦手が人の強さを引き出すとも言えます。それぞれの強みを組み合わせれにあば組織のパフォーマンスは 高くなります。 
 もともと人間の組織とは「あり合わせ」の集合体とも言えます。それぞれ長所短所を持ったデコボコとした人ばかりです。 リーダーはそれをブリコラージュするべきなのに、個人に全部の能力を高めよと押しつけがちです。その結果、無限の豊かな解釈が可能であるべき「能力」を、数多くの評価項目に書き込まれたただの数値に変換し、平均化して比べてしまうのです。
 今の世の中には「生産性が低い」「役に立たない」などの言葉で、人間の能力を簡単に見切ろうとする風潮があるのではないでしょうか。 野村流 「弱者の戦法」には、人間の能力をもっとおおらかに理解するためのヒントが詰まっていると思います。』(聞き手・中島鉄郎) 


2020年2月号 (№4)

チバニアン」と地磁気逆転―松山博士の功績について

    2020年1月17日、「約77万年~約12万年前」の地質年代を「チバニアン」(千葉時代)と名付けることが、国際地質科学連合で決まりました。大変嬉しい限りです。この時代は、地磁気のN極とS極が逆転していて、今とはまったく逆になっていました。千葉県市原市にある地層「千葉セクション」にはその痕跡が良い状態で残っていることから「模式地」(その時代の地層を最も観察しやすい状態で保持している典型的地層)として選ばれたのです。地球史の時代としてそれぞれ「ジュラ紀」「白亜紀」など地名に因んだ名前が付けられるのですが、日本の地名が付くのは初めてのことです。この地質年代「チバニアン」は「人類紀=第四紀」のど真ん中に位置する年代であり、それだけに非常に身近に感じられます。

 しかして、この「地磁気逆転」に関して、私たちが絶対に忘れてはならず、まず想起すべきは、松山基範(まつやまもとのり)博士(1884~1958)の存在と功績です。なぜなら、世界で初めて「地磁気逆転」を発見したのは日本人である松山博士だったからです。産総研の山崎俊嗣氏は、『地質ニュース・615号』(2005年11月)で、松山博士について、次のように記しています。
【地球の長い歴史の間には、地磁気のN極とS極が入れ替わる「地磁気逆転」が繰り返し起きてきた。 地磁気はさまざまな時間スケールの変動をしているが、 地磁気逆転はその中でも最も劇的な現象である。…地磁気逆転現象が京都帝国大学教授であった松山基範博士 により発見されたことを紹介する…。
 地磁気逆転の発見は, 1929年に発表された短い論文(松山論文)に述べられている。そのきっかけとなったのは, 1926年に兵庫県の玄武洞の岩石が逆帯磁していることを見い出したことであり、引き続き、本州、九州、朝鮮、中国東北部の36地点から採取された岩石の磁化方位が測定され、地磁気逆転の結論が導かれた。 現在の地磁気と逆向きに帯磁した岩石が存在すること自体は、松山より前の20世紀初頭にブリュンヌ(注:フランスの地球物理学者)によって報告されていた。 松山の卓見は、年代層序学的な考え方を取り入れた点にある。測定された試料が現在の地磁気に近い方向と逆方向の2つのグループに分けられ、玄武洞に代表される逆方向の磁化を持つ岩石の方が年代が古いと推定されたことから、 前期更新世に地磁気が反転したことを結論した。当時は放射年代測定は望むべくもなく、岩石の年代を推定することは容易ではなかったはずで、このような結論を得るには卓越した洞察力が必要であったと思われる。玄武洞の年代は、現在の知識では約165万年前である。
 地磁気逆転が報告された当時は、地磁気の成因自体が全くの謎であり, 地磁気逆転が多くの科学者の注目を集めることはなかった。松山自身も当時は、潜水艦を用いた日本海溝をはじめとする海洋の重力測定に力を入れていて、岩石磁気の研究はその後はそれほどされなかったようである。…
 1950年代に外部磁場の逆向きに帯磁する自己反転磁化現象が発見されて、…同時代の岩石が汎地球的に同じ方向の磁化を持つことが示されたことにより、1960年前半には地磁気逆転が確立された。その後、地磁気逆転と海洋磁気縞模様とが結びついて海洋底拡大、プレートテクトニクス革命へと進んだことは周知のとおりである。そして、松山の業績を讃えて、アラン・コックス(注:アメリカの地球物理学者、ベツレセン賞を含む数々の賞を受賞し、アメリカ地球物理学連合の会長でもあり、100以上の科学論文の著者であり、プレートテクトニクスに関する本の著者または編集者)らにより、約100~250万年前(年代は当時の知識)の逆磁極を主とする時期が「松山逆磁極期」と命名され、国際的に広く使われることとなった。松山自身はそれを知ることなく1958年に亡くなった】と。
 こうした偉大な先人の研究無くして「チバニアン」は生まれなかったことに思いを致すことが必要と思います。すべては過去があって現在があるのであり、先人への敬意・感謝を絶対に忘れてはなりません。
 なお、山崎俊嗣氏は論文の中で、地磁気逆転が何故起こるか、その完全な解明は未だ成されていない、と述べています。
 さて、私たちの会社名「ジオ・ステージ・フォー」は「人類紀=第四紀」(地質時代の一つで258万8000年前から現在までの期間をさしており、他の地質時代が生物相の大幅な変化、特に大量絶滅を境界として定められたのに対し、第四紀は人類の時代という意味を持つ)に因んだものであり、その意味からも、今回の「チバニアン」命名については特別な関心を持って見守って来ました。私たちも、これを機に、人類紀=第四紀の地質についてより深い知識を身につけ、人類社会を自然災害から守るべく、安全・安心を目指してさらに奮闘努力する所存です。どうかよろしくお願い致します。
               

 

 

2020年1月(NO.3)

「改正公共工事品質確保促進法」(品確法)について

  日本の各地で、相次いで地震・豪雨・洪水等の自然災害が猛威を振っている中、昨年末の通常国会で「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正公共工事品質確保促進法)が成立しました。

 この改正法は「建設業の働き方改革」を促すために、「発注者の責務」として「適正な利潤を確保するための予定価格の適正な設定」「ダンピング受注の防止」「適切な設計変更」「適正な工期設定」「施工時期の平準化」「災害時の緊急対応の推進や円滑な発注体制の構築」等を実施することを定めたものです。
 しかし、この「品確法」は、建設関連事業に携わっている全ての人々にとって、またそれらの人々の手で実施される公共的建設事業によってその生活基盤の安全を守られている全ての国民にとって、非常に重要な意義を持っています。この点について、2019年6月24日付『建通新聞』の「社説」は、次のような注目すべき論調を展開しています。
【ともすれば、建設業の働き方改革に不可欠な「適切な工期」の確保を可能にする“効果”にのみ目が向きがちだ。だが、「建設コンサルタント業」「測量調査設計業」「地質調査業」の公共工事における役割を積極的に肯定し、そのポジションを明確にした『画期的』な改正であるという、法の持つもう一つの側面にも着眼したい。
 これら三つの業は、調査・設計という建設生産工程の最上流部を担いながら「建設関連業」と呼ばれ、公共工事の実際を知らない第三者には、あたかも付随的な存在であるかのような印象を与えてしまいがちだった。そんな三つの「業」にとって、また、この後も続くわが国の公的固定資本形成(社会資本整備)に携わる人々にとって、今回の法改正が「あれ(公共工事品確法の改正)がマイルストーンだった」と言われる日が訪れるであろうことを、疑う余地はない。
 では、この改正法の何が「画期的」なのか。改正法は「公共工事に関する調査等(測量、地質調査その他の調査‐点検及び診断を含む‐)及び設計の品質が公共工事の品質確保を図る上で重要な役割を果たす」との認識に立ち、公共工事に関する調査などについて、広くこの法律の対象として位置付けた。…特筆すべきは、「公共工事の品質は、地盤の状況に関する情報等の工事に必要な情報が適確に把握され、必要な検証を経て共有された上で、より適切な技術又は工夫により、将来にわたり確保されなければならない」ことを基本理念に追加し、「地質リスク」の把握・評価を公共工事に不可欠なものとして明確に位置付けたことだ】と。
 勿論、言うまでもなく、これは公共事業だけでなく、民間の建設事業についても当て嵌まることです。
 様々なインフラ設備・住宅の土台地盤の「地質調査」を業とする私たちの会社にとっても、この改正法の打ち出した理念は、極めて重要な意味を持っています。最近頻繁に、地震・洪水・堤防崩壊・土砂崩れ・山崩れ・液状化問題が発生し、大きな社会的不安を引き起こしています。それ故に、予め、建造物の土台部分に関する「地盤調査」(測量、地質調査・点検・診断等々)を厳密に行うことが重大な意味を持っています。まさに「災害への恐れを持ち、地質リスクを把握し、事前に十分に備えよ!」ということです。
 『建通新聞』の社説は、最後に、発注者自らが『同法の理念の一つである「発注者の責務」をしっかりと果たそう』、そうすることによってこの改正法に『命を吹き込もう』、と呼び掛けています。しかして、この改正法に「命」を吹き込むのは、発注者だけではなく、全ての建設業界人、建設労働者、彼らによって生活と命を守られている全ての国民にほかなりません。
 私たちの会社もまた、皆さんの地盤・地質に関するあらゆる不安や疑問に応え、要望に応えることをその最大の使命として設立された会社です。皆さんの不安・疑問・要望に応えるために、「地盤鑑定書」「井戸掘削提案書」、必要な「対策実施計画書」等々を、できる限りリーズナブルな値段で、誠心誠意お届けする決意です。どんな問題でも、遠慮なくご相談下さい。

 

 2019年10月号(NO.2) 



 2019年9月号(NO.1)

 地震・地盤・井戸のレポート
 1923年(大正12年)9月1日のM7.9関東大地震発生から、今年で96年目を迎えました。忘れてならないことは、この大震災で亡くなった人は10万5千余名。その内約9万が焼死だったことです。その最大の原因は家屋倒壊による火事の発生でした。家屋倒壊を防止することが如何に重要かを教えています。

 ある地震学者の言葉に「正しく恐れ、正しく備えよ!」とあります。そして、「備え」の最たるものとして「耐震化」を挙げています。即ち、家屋の耐震強化と地盤の耐震強化こそが最も重要な「備え」である、と。また、一度地震が起こった後、いち早く要求されるものが早期の「水の確保」であることが分かっており、いざという時の場合の井戸の備えもまた重要な課題とされています。

 わが社は、大地震や集中豪雨の際に「家が倒壊しないか、冠水しないか、液状化しないか、沈下しないか?」等々の不安に応え、また、「いざという時、何処に、何メートル井戸を掘れば飲み水が出るのか、費用はいくらかかるか?」等々の要望に応えることをその最大の使命として設立された会社です。

 皆さんの不安・疑問・要望に応える地盤と井戸の指南書、それが「地盤鑑定書」であり、「井戸提案書」であり、必要な「対策実施計画書」です。私たちは、皆さんのどんな不安・疑問・要望にも、できるだけリーズナブルな費用で、誠心誠意応えていく決意です。どんな問題でも、遠慮なくご相談下さい。             

   2019年(令和元年)9月1日

                     代表  福永 慈二

 

 

 ≪ジオ・ステージ・フォー≫開設にあたって≫
 私たちはこの度、地質調査事業会社である≪ジオ・ステージ・フォー≫を新たに立ち上げました。この企業設立の目的は、自然災害、特に地震よる生活環境破壊から地震‐液状化トラブル対策のプロとして人々の命と暮らしを守ることであり、また、現代の高齢化社会にあって、高齢者の有する豊富な現場経験、様々な熟練技術、高度な専門知識を結集させ、共同・協力して新たな仕事に活かしつつ、それらを次代を担う若人に伝え、地域社会と共生しつつ成長・進化していくこと、であります。
  ≪社名の由来≫ 地球の地質時代、約258万年以降、第四紀(人類紀) に形成された地質を主に調査・研究し、自然災害、特に地震に苦しむ人類社会に広く貢献する会社でありたい、との願いを込めています。
 なお、企業運営にあたっては、次の≪3つのモットー)をしっかりと守り、皆様の要望に誠実に応えていく決意です。

(1)常に社会的使命感に徹して仕事をする。
  日本及び世界の至る所で地震・豪雨等による大災害が発生し、多くの命が
奪われている。わが企業は、地質調査・研究の事業を通じて、こうした自然災害と闘い、人々を不安と恐怖から解放することを社会的使命とする。
   
(2)常に科学的態度に徹して仕事をする。
  大自然は厳しく、徹底的に真実・真理を検証する。故に、大自然を相手にするわれわれの仕事は、科学的態度に貫かれたものでなくてはならず、常に「正確・安全・迅速」を厳守する。
   
(3)常に協力・共同の精神をもって仕事をする。  
  人間は一人では何もできない。わが企業は、あらゆる地質関連の業者・技術者と協力・共同し、その英知を結合・結集し、巨大なエネルギーにまとめ上げ、より大きく広く社会的貢献を果たすことを目指す。  

どうか末永く、宜しくお願い致します。
        
              2019年(令和元年)8月1日
                     代表 福永慈二